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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
196/344

-Episode85-

「朔君!」

 怜は僕の後ろに誰かがいるのに気付くとすぐに、そこへ氷塊を打ち出した。僕の肩の下を通ったそれは、僕を通り過ぎた辺りで何かに弾かれ砕け散る。

「危ないね。私じゃなくて朔君に当たるかもしれないのに」

 僕の背後で、小柄なツインテールの少女――杣が、普段より少し低めの声でそんなことを言っていた。よく見ると、僕の首筋に当たっているのは彼女の影から伸びているものだ。刃物のような形状のこの影は、僕に身動きを取らせないためのものなのだろうか? いや、それなら僕を影で縛ればいいだけの話だ。これには何か別の意図があるに違いない。

「私は絶対に朔君には当てないもん! ……それより、杣はなんでこんなことをするの?」

 怜は杣を睨みつけて言う。ゆっくりと首を動かして杣の方を見ると、杣はまるで仮面をかぶっているかのように、表情らしい表情を全く見せていなかった。

「なんで、か。怜になら心当たりがあるんじゃないかな?」

 ほとんど口を動かさずに、杣は淡々と述べる。感情を押し殺しているかのような声だ。

「心当たり……?」

 怜には思い当たる節がないみたいだ。僕も怜と杣の間にどんな関係があるのかよく分からない。彼女たちの接点はあまりなかった気がするのだが――。僕も杣に誘拐されたこと以外は特にこんな状況に陥るような理由が考えられない。やはりあの誘拐の件に関係があるのだろうか。

「とにかく、朔君を離してよ! 今の話からすると、朔君は関係ないじゃない! 朔君を人質にとるのはおかしいよ!」

 怜は僕を解放するよう強く望んでいるようだ。しかし杣は一向に僕を解放する様子はない。

「まぁ、私もあんまりこういう手段を取りたくはないし、初めの内はまだ他の方法もあるんじゃないかって思ってたんだけどね……」

 杣は少しだけ憂いを見せた表情で言う。下手に動くと首を叩き斬られかねない状況なので、僕は口さえ動かせずに、事の成り行きを見守るしかなかった。

「これ以上時間を取られるわけにもいかないし、急いでことを済ませるよ」

 杣はそう言うと、僕の首筋に当てていた影を、そのまま怜の方へ飛ばした。

「なっ……!」

 僕は驚きで声を上げる。怜は咄嗟に氷の壁を作ってそれを防御するが、影がそれに突き刺さった瞬間、その壁はバラバラになって崩れ落ちた。

「な、何、今の……?」

 怜は目の前で起こった出来事が信じられないらしい。そうしている間にも、杣は彼女の影を細い針状に変形させて、怜に飛ばしていく。

「そ、杣さん! どうして怜を攻撃するようなことをしてるんですか!」

 僕は杣に怜への攻撃を止めて欲しいとお願いする。しかし彼女は僕の方へ少し悲しげな表情を見せた後、それ以降僕の言葉を聞こうとはしなかった。とりあえず攻撃だけは止めさせようと、杣の前に立ちふさがるも、杣はそんな僕を避けて影を飛ばしていく。怜は水を噴射させながら杣の影を高速で避け続けているらしい。

「そ、そうだ、杣さん、優奈はどこに?」

 必死で攻撃をやめさせるための話を思考し、優奈のことについて聞いてみることにした。すると杣は一瞬だけ動きを止め、

「――解放したよ」

 とだけ呟いて、再び怜への攻撃を再開した。解放した、って、まさかこの裏通りに?

「ちょ、ちょっと待ってよ杣さん! 優奈を解放したって、まさか、この裏通りの中に一人?」

 途端に優奈の安全が損なわれ、動揺する僕。

「――いえ、裏通りの外で解放したから、彼女が朔君を追ってきたりしない限りは危険じゃないと思うけど――」

 僕の動揺を心配したのか、杣は攻撃を止めて優奈について話そうとする。その隙を狙ったのか、怜が僕の方へ飛んできて、僕を抱えてそのまま水を噴射させて上に飛び上がる。

「おぉっと、と、とと……」

 危うく舌を噛みそうになったので、慌てて口を閉じる。怜は牽制目的か小さな氷のつぶてを杣に大量に落としていく。杣はそれを影で払い落としているが、怜が落としたつぶての量は非常に多く、少しばかり手間がかかっているようだ。

「とりあえず最初に優奈ちゃんの元に行こう!」

 怜は僕を抱えたままそんなことを言う。……が、その直後、怜の動きが止まる。彼女の両足は影に縛られていた。

「まずい、これじゃ――」

 彼女が言い切る前に、僕と怜は下に叩き付けられそうになる。途中で投げ出された僕は、空中で杣の操る影に助けられ、ゆっくりと建物の上に着地する。しかし、怜は――。

「怜!」

 僕は怜の方に駆け寄る。彼女は水で勢いを殺し、落下の衝撃を和らげたようだ。

「もう……いい加減に……!」

 怜は感情が昂ったのか、周囲の建物の表面を凍らせ、そこから氷柱を杣に向かって飛ばしてきた。彼女はどうやら、僕が杣の前に出ていることに気付いていないらしい。このままだと、この氷柱は僕に刺さる。

「あ……駄目っ!」

 怜が僕のことに気付いたときには、氷柱は僕の目の前まで来ていた。僕は咄嗟に目を瞑る。丁度その時、周囲に稲妻が走った。

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