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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
195/344

-Episode84-

「うっ、わっと、危な……!」

 怜はギリギリで黒い異形達の手から逃れていく。魔法を使って凍らせたり、水を噴射して加速と減速を繰り返し相手のペースを乱したり、氷の壁を使って黒い異形達を突き飛ばしたり、魔法を使いこなして彼らを翻弄しているようにも見えた。僕はというと、怜の方に黒い異形達が多く集まっているため、走って逃げるだけである程度逃げ切ることができた。だが、まだこの場所からは抜け出せていない。外側からはどんどん黒い異形達がやってきている。このままじゃジリ貧だ。上に逃げようにも、この場所は入口以外が部屋のように壁で囲まれており、破壊しない限り外に逃げることはできない。僕はポケットから魔法瓶を取り出すと、それを追ってくる黒い異形に投げつけた。一瞬だけひるんだ隙に、僕は大きな槍を想像する。人間の何倍、何十倍もの体積がある、とても大きな槍。細かい形なんて明確にイメージしている時間は無い。とにかく先端のとがっている巨大なものを屋根に突き刺すんだ。――そこまで思考が回った所で、割れた瓶の中にあった透明な液体が、形を成し始める。数回瞬きをするうち、それは僕が思い描いたような巨大な円柱に変化していた。氷の円柱は見事に屋根を貫いており、円柱が消えるとそこには人が通れそうなくらい大きな穴が空いていた。

「怜、ここから脱出しよう!」

 僕は怜に呼びかける。

「え、朔君、一発でこんな穴開けたの!?」

 怜が僕の方を見て、寄ってくる奴らを魔法で吹き飛ばしてから僕が開けた穴を見て、そんな驚きを口にした。

「とにかくさっきのボードみたいなので上に上がってから話をしよう! このままじゃ危ないし――」

 僕が途中まで言った辺りで、怜は再びどこかからボードを僕の近くに投げ入れ、そこに向かって、水を噴射させて一気にやってくる。怜がボードの上に乗ったところで、僕も急いで怜に掴まる。水の爆発するような音と共に、僕と怜の乗ったボードは上空に舞い上がる。とりあえずこれで一安心だ。そう思った僕の足元に、何かが引っかかった。

「え?」

 僕の足が、ボードの外に引っ張られる。気が緩んでいたせいか、掴んでいた手も緩み、簡単に怜から離れてしまう。体が傾くのが分かる。走馬灯のように、時間がゆっくりになっていく。慣性が働いているのか、途中まではまだ怜と一緒に上昇していく。その間に怜はこちらを向いて、手を差し出した。僕もそれを掴もうと、手を伸ばす。しかし、その体重移動のせいでボードごと傾いてしまい、僕と怜は二人とも空中に投げ出されてしまった。下から強風が吹いている。この感覚、どこかで感じたような――。

「掴まって!」

 怜は必死に僕に呼びかけていた。数瞬の間ぼうっとしていた僕は、我に返ってあわてて怜の手を掴む。怜はそれを確認すると目を瞑り、僕の体を彼女の方へ引き寄せた。それと同時に、僕は何か下から打ち付けられるような痛みを感じる。それと同時に鼻の中に何かが入り、僕は息を大きく吐き出してしまう。どうやら水の中に入ったようだ。鼻の中にツーンとする痛みが残るが、怜の機転のおかげで僕達は助かったらしい。その後何度か魔法を解除して呼吸をしながら、僕達は建物の上に着地する。

「あ、危なかった……ごめん。でも、今のは……?」

 僕は怜に謝ってから、僕の足に引っかかったものを見る。確かにあの時何かが足に引っかかり、それに引っ張られた感覚があったのだ。しかし、僕の足を見てもそのような痕跡はどこにもない。

「朔君、何かに引っかかったの? ……あの上空で?」

 怜は僕の考えていることの中から彼女が気になったらしいことを質問してきた。彼女の言うとおり、空中で何かに引っかかったとは考えづらい。近くに電線もないようだし、鳥が引っかかったら鳥が逃れようと暴れ、そのことが分かるはずだ。

「ねぇ、私の予想でしかないんだけど――誰かが意図的に朔君の足を引っ張ったとは考えられない? あの場所には縄もあったし、私みたいな魔法だったら、縄の長ささえあればあれだけの高度にも縄を届けることはできるし」

 彼女の予想に、一つだけ思い当たる節があった。杣は一度、影を細長く伸ばして周囲の黒い異形達に突き刺し、僕達を助けたことがある。もしあれがもっと自由に操作でき、またある程度の長さを維持できるとしたら、縄のようにして僕の足に絡ませることも出来るだろう。そう考えれば、あの縄も、杣の呪いによって作られたという可能性が浮上してきた。

「――杣? 呪い?」

 怜がそんなことを聞いてきたとき、僕は自分の失敗を悟った。知られてしまったからには、これ以上隠すことはできない。僕が杣について話そうと口を開くと、

「別にいいよ、話さなくても」

 首筋に何かが当たる感触と共に、背後から声が聞こえてきた。

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