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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
193/344

-Episode82-

「怜……少し飛ばし過ぎ……うぶっ」

 僕はあまりのスピードと高所の影響による気分の悪さから、酔ってしまった。

「朔君? うわ、顔が真っ青」

 怜は僕の方を見て、少しだけ驚いたような顔をした。僕としてはこれだけの状況で平気でいられる怜に驚くのだが……まぁ彼女はよくこれに乗っているのだろう。慣れというのはすごいものだ。

「うーん、じゃあ仕方ないか……この辺で降りるよー」

 怜はそう言うと、裏通りの建物の屋上ではなくその下、つまり黒い異形の待ち受ける空間に降りて行った。

「ちょ、ちょっと怜! やばいって! このままだと――」

 僕がそこまで言いかけた時、ふとボードで起きていた水の噴出が止まる。高さは地上から約ニメートル程上。下には気持ち悪い量の黒い異形がひしめいている。このまま落ちて僕たちは奴等の餌になるのか、なんてことを考えているうちに、周囲が冷気に包まれる。

「はい、これでオッケー!」

 怜は少し自信ありげに言った。僕たちは三十センチ程落下し、凍りついた黒い異形達の上に乗っかった。凍っている奴等は生きてはいるらしく、下の方から呻いているような声と判別するべきか迷う音は聞こえてくる。

「大丈夫なの? 凍らせるって言うのはまぁ、いいと思うけど……これを割って出てきたりしない?」

 僕が不安そうに聞くと、怜は指を振って言う。

「そういうのは、信じることが大事なんだよ! いい? もしかしたらあいつらが氷を割って出てくるかもしれないなんて考えたら――」

 怜がそこまで言ったところで、僕の後ろ数メートルの位置から、氷の割れるような音が聞こえてくる。振り返ると、黒い異形が氷を割って出て来ていた。

「――こうなる」

 怜は失敗を誤魔化すような笑みを浮かべ、次々と氷を割って出てくる黒い異形から逃げるようにボードに乗る。

「ご、ごめん!」

 どうやら僕が聞いてしまったばっかりに、怜は黒い異形達が氷を割って出てくる所までイメージしてしまったらしい。そんなところまでイメージに出てくるとは、魔法というのは色々と厄介なものだなぁ。とりあえず僕は謝ってから再び怜に掴まる。

「今度は酔っても降ろさないからね!」

 怜は少しばかり怒っているのか、多少棘のある口調で文句を言いながら再び上空に上がっていく。僕は目を瞑って下を見ないようにしながら、まだ回復していない吐き気を必死で抑える。

「だ、大丈夫……絶対に戻したりしないから……」

 多分、と続けようとしたが、先程の出来事から想像するに、なるべくネガティブなことは考えない方がいいような気がしてきた。さっきの失敗は魔法への影響のせいだが、同じようなことが他のことにも言えなくはない。

 僕の考えが正しかったのかは分からないが、僕は吐き気を完全に抑えたまま怜のボード操作に耐えきった。さらに今まで感じていた酔いも次第に消えつつある。

「……よし、この辺でいいかな」

 怜は近くに神社の見える位置に停止し、再び高度を落とし始めた。ちらと見えた神社では、祭りの準備をしているような雰囲気が見える。人が一人もいないのは、今が夜だからだろうか? 僕たちが優奈の捜索を始めてからどれくらいの時間が経過したのかは分からないが、空には星々が輝いているのが見える。まだ杣の呪いは僕の方へは使われていないらしい。

「よくよく考えてみると、この町の構造ってミステリーだよね。裏通りなんてよく分からないものがあるし、駅が町のはずれの方にあるし、私がよく行く施設もそれぞれが離れた位置にあるし、山はあるのに海がないし」

 最後のはともかく、確かにそれ以外は奇妙な気がする。この町はどこかおかしいのだろうか? そんなことを考えているうちに、僕達は地面に着地できる位置まで降下していた。この辺りには黒い異形の姿は見えない。周囲が他の場所と比べて明るいからだろうか?

「そこそこ運が良かったね朔君、これならあの変なのに出会わずに優奈ちゃんを探せるよ」

 怜はそう言いながら、周囲の探索に入る。僕は怜と離れすぎない程度に距離を取りながら、優奈を探す。時折声を出して優奈がいたかどうかの確認をしてみるが、結果はどちらも芳しくないようだ。まぁ、そんなに簡単に見つかるはずもないか。僕が誘拐された時も、僕は――ん、もしかすると……。

「怜、怜の魔法で壁とか壊すことは出来る?」

 僕は怜に質問してみる。彼女はちょっと考えるような仕草をした後に、頷いた。それを確認した僕は、周囲の壁を軽く叩いて音を確認してみる。全体的にこの辺りの建物は木造建築らしいが、数か所、明らかに木とは異なる音が聞こえてきた。鉄板を叩いているような音だ。

「怜、ここの壁壊してみてくれない?」

 怜は僕のお願いを少し理解しかねていたようだったが、僕が何度か頼み込むと承諾してくれた。彼女は氷塊を何度か壁にぶつけて破壊していく。金属のように凹んだ壁が壊れた先には、数人の人が縄で縛られていた。

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