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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
187/344

-Episode76-

 怜が着地した場所は、商店街の近くだった。

「この近くにあの変なのがいる場所の入り口があったはずだよね……あんまり覚えてないから、よく分かんないんだけど」

 僕の感覚から言って、裏通りはどこからでも入れそうなイメージがある。心配しなくてもいいよと怜に伝えると、怜は納得したかのように何度か頷いて、

「朔君ってドヤ顔するときちょっとだけ変な口角の上がり方するよね」

 全く何の関係もないことを口走った。今から優奈を助けに行こうとしている、慎重にならなければならない場面で、こんなどうでもいいことを言える怜の神経はある意味天才ではあるが……。

「いや、それを言うなら怜だって僕の許可なしに魔法使ってるじゃん」

 怜が関係ないことを言うならと、僕も対抗して比較的無関係かつ慎重な場面を壊すような一言を言ってみた。すると、

「いや、こんな緊急時に、そんな悠長なこと言っていられないよね? それとも朔君は優奈ちゃんのことが大事じゃないのかな?」

 冷ややかな目でそんなことを言われてしまった。いやおかしい。先に関係のない話をしたのは間違いなく怜なのに。それともあの話が真面目な話だったのか? 怜の感覚は今の僕には理解できそうにない。

「なぁ、とりあえず裏通りに行くべきだと思うんだが……」

 僕と怜の会話がエスカレートしていきそうなのを見て、迅が止めに入る。

「あと、優奈ちゃんを助けるためにあの裏通りに行くなら、それなりの人数は必要だと思う。だから朔、お前はこの番号に電話をかけて、優奈ちゃん救出の手伝いを頼んでくれ」

 迅は彼の携帯電話を開いて見せ、十一桁の番号を見せた。誰宛の番号なんだろうか? ただ、僕は今携帯電話を持っていない。そのことを迅に伝えようとすると、

「あ、私最近携帯電話買ったんだよ! ほら!」

 僕の考えていることを読んだのか、怜が僕に携帯電話を見せびらかしてきた。今回はありがたい限りだが、僕がいなくなってから怜は必死で僕を探していたんじゃないのか? 新しい携帯電話を買うぐらいの余裕があったとは……なんだか僕の存在が小さくなっていくような錯覚に陥る。

「あ、違うよ朔君! 私がこれを買ったのは、朔君に連絡を取るためで……結局使えなかったんだけど」

 まぁ、僕の番号を教えていないし、連絡を取るのは無理だよなぁ。怜が僕を探すために携帯電話を買っていたのだと知ると、不思議とさっきまで感じていた錯覚はきれいに消えていた。

「えっと、じゃあ怜、これ使わせてもらってもいい?」

 こう質問した後怜から散々焦らされた後、僕は怜から携帯電話を貸してもらってあらかじめ教えてもらった番号にかけてみる。迅の方はすでに誰かに電話をかけていたみたいで、番号を聞き直すことはできない。間違い電話をかけないように、僕は番号を押し切って、携帯電話を耳に当てた。

「某を呼んだか!? そう、某は――」

 どうやら間違い電話だったようだ。僕は電話を切ると、番号をゆっくりと思い出す。散々焦らされたから、一つや二つ番号が間違っていたかもしれない。番号を確認していると、怜の電話が鳴った。

「先程のであるな! いや、某が名乗る前に電話を切られてしま――」

 どうやら間違い電話の主は随分ご立腹らしい。怜の携帯電話番号に迷惑メールとかが届かないといいけど。そう思っていると、再び電話が鳴る。

「先程の――」

 ほぼ間髪入れずに電話を切る。さっきの人と同じ人だ。また電話がかかってくるのだろうと、僕は溜め息を吐いた。そして予想通り、三度目のコールが鳴る。

「あの、空野、朔、さんでしょうか」

 反射的に電話ボタンを切りそうになったのを、僕は必死でこらえる。弥奈からの電話みたいだ。怜の携帯電話にかけてくるとは、虹魔法でも使ったのだろうか?

「えっと、朔さんは、迅さんと一緒に、優奈さんを、助けに行くん、ですよね」

 途切れ途切れの声で、優奈は僕たちのこれからを説明した。なるほど、迅から話を聞いたのか。迅が通話していた相手は弥奈のことだったのか。――隣にいる迅はまだ電話をかけているみたいだが。

「えっと、迅さんが、言うには、私、舞さん、満先輩に、一緒に、助けてもらいたい、って言ってました」

 なるほど、今迅が電話をしているのは、舞なのか。彼女が協力するとは思えないが……。まぁ駄目でもともとなのだろう。――そして、今、聞いてはならない単語を聞いてしまったような気がするが、

「そうだ! 某も優奈殿を探すことに協力するのだぞ! 某がいれば億万力に違いない! 喜べ!」

 近くにいないにも関わらず、背中を叩かれているような感覚を味わう。その後も一方的に話を進められ、今から商店街に向かうとのことだ。電話が切られた後、僕が携帯電話を怜に返したときに、怜が同情の視線と慰めの言葉と肩に手をかけてくれたことは本当にありがたいと思う。

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