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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
186/344

-Episode75-

「朔君、今までどこにいたの!? いくら探しても見つからないから、すっごく心配したんだから……!」

 怜は涙目になりながら、僕の手を握る。その手から彼女の心配度合がひしひしと伝わってきて、彼女に申し訳ない感じを覚える。

「ごめん、僕は――その、いろいろあって」

 杣のことについて言うのははばかれるため、曖昧に誤魔化して答える。

「――何か隠してるの?」

 僕は怜の言葉で、彼女の表情を読む特技を思い出した。時間的なブランクがあるのか誰のことについて隠しているのかは分かっていなかったみたいだが、これからは気を付けないと。

「むー。何で教えてくれないの? 私と朔君の仲じゃないの?」

 怜は不機嫌そうに顔を膨らませて言う。僕が笑顔とかあえて彼女の攻撃を受けたりして怜の不機嫌に対応していると、

「怜さん、ここがどこだか分かるかな?」

 迅が僕たちの応酬の一段落を見計らってから言った。

「ここ? 住宅地だよ。すぐ近くに朔君の家があるけど……」

 怜は当たり前のことを言った。僕の家のすぐ近くだったのか。どうして僕の家が近いのに僕には覚えがないのだろう。僕の記憶力のなさにがっくりしていると、

「あぁ、直線距離で三キロぐらいあるかな」

 怜が追加情報を教えてくれた。三キロ……いや、離れすぎな気がする。少なくともすぐ近くと表現していい距離ではないだろう。

「さ、三キロ……そうだな、そこそこ遠いな。この辺りは俺の家のある地域でもなさそうだし……杣、どうする? ……杣?」

 迅が杣に相談を持ちかけようとするが、彼女は忽然と姿を消していた。

「杣? ここには朔君と迅しかいなかったけど?」

 怜が首を傾げて言った。彼女は影に入ってどこかへ行ってしまったのだろうか。

――ん? 僕と迅しか?

「優奈は?」

 僕はそう言いながら、辺りを見渡す。杣の姿が見当たらないのは確かだが、それに加えて優奈の姿も見当たらない。……まさか。

「杣が優奈を連れ去ったのか……? どうしてだ?」

 迅が口に手を当てながら考え込むように話す。その言葉を聞いた怜が、

「え!? 杣が優奈ちゃんを連れ去ったの!? 大変! 早く優奈ちゃんを助けないと!」

 怜が驚いた後に、どこからか取り出したのかボードのようなものを地面に置く。そこから魔法を使って水を噴射させ、彼女は宙に浮いた。

「朔君、掴まって!」

 怜は僕に向かって手を伸ばし、僕もそれを掴む。途端に発車しそうになり、迅を置いてきぼりにしそうになったので、あわてて僕は迅の手も掴んだ。

「う、うおっ!?」

 迅は急に引っ張られたせいかそんな声を上げて怜の乗っていボードに引っ張られていく。ちなみに僕は、それ以上の叫び声を上げて引っ張られている。自分で聞いていても聞くに堪えない。

「朔君、もう少し真面目な雰囲気を醸し出せないかなぁ」

 怜も少し呆れ気味に話しかけていた。そんなことを言いつつも、怜は上空から下の方を注意深く見ているようだ。確かに上からなら優奈を見つけやすいし、今怜の乗っているボードなら移動も楽そうだ。

「お、おい朔! 腕が震えてるぞ! 大丈夫か!?」

 僕が手を離したら迅も落ちてしまうからか、必死になって迅は僕のことを心配していた。怜は僕と迅の重さに耐えているにもかかわらず、僕だけが限界を迎えようとしていた。

「あ、ごめん朔君、忘れてた」

 ふと、怜が何かを思い出し、僕の手を一瞬離した。まさかここから地面にたたき落とされるのかと思ったが、そうではなく、怜はボードの幅を氷で広くして、僕達を受け止めた。

「創造する魔法しか使っていないから、こんなこともできるんだよ」

 怜は自慢げにそう語った。こういう使い方ができるのは、怜の持つ水魔法などの汎用性があるものに限るが……確かにこれは便利だ。しかし氷の上は滑るので、僕は改めて怜の手を握って落ちないようにする。本当は風の強さもあるためもう少し掴むところを増やしてほしいところだが……。そんなことを思っていると、僕と迅の目の前に氷の取っ手のようなものが出てきた。

「こうやって風を感じるのが楽しいのに……」

 怜は少し残念そうに呟いた。確かに彼女は何も持たずに感覚だけでこのボードを操作している。ただ、そういう芸当ができるからこそ風を感じることを楽しめるのであり、僕のような魔法すら満足に使えない人にとっては、命綱なしのこんな空中飛行なんて、恐怖以外の何物でもない。

「それにしても、杣も優奈ちゃんも見つからないなぁ。朔君の時みたい」

 優奈を心配するような表情で、怜は言った。僕の時、つまり僕が裏通りにいたときのことだろうか。

「数日前なら、僕達は裏通りにいたんだけど」

 僕の言葉に、怜はちょっとだけ表情を曇らせて、言った。

「あの場所か……私、あの場所好きじゃないんだけど……優奈ちゃんを助けるためなら、行かないとね」

 怜はそう言うと、比較的ゆっくりとボードの高度を落としていった。

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