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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
183/344

-Episode72-

「何のため、って……そうだな、確か……」

 迅は僕達がここに訪れることになった理由について考える。今の僕なら即答できる質問だったが、どうしてか僕も今までその理由を忘れてしまっていた。

「――ん? 何のためだったっけ……? どうしてだ、思い出せない?」

 迅は右手で頭を押さえ、困惑した様子で呟く。答えられない迅に代わって、僕が答えることにした。

「優奈、舞、そして杣を、探すためだったんだよ。なのに、舞も優奈もいつの間にか何事もなかったかのように元に戻っている。優奈のことに関しては僕の勘違いという可能性もない訳じゃないんだけど……」

 それに、杣に攫われた後から今に至るまで、僕は優奈を探していたことをすっかり忘れていた。思い出した今だからこそ言えるが、あんなに優奈のことを心配していたのに、ここまで綺麗に忘れられるものなのか?

「言われてみれば、確かにそうだった気がする……でも、なんだか本当にそうだったっていう確証みたいなのが持てない……そうだ、これ、朔の時と同じだ」

 迅は何か思いついたようで、顔を上げて僕の方を見た。

「舞から朔の話を聞いたとき、今みたいなまるで見つからない探し物を探しているような感覚になったんだ。そして、朔は杣の呪いで存在を認知できなくされたんだろ? これは俺の予測なんだが、優奈や舞もすでに呪いを受けていたとは考えられないか? 朔の話だとその呪いは任意で効果の有無を切り替えられるみたいだし」

 迅の話を聞いて、僕はなるほどと相槌をうつ。舞が呪いをかけられたタイミングは分からないが、彼女は杣と行動を共にしていたのだから、いつでもかけられる状況ではあっただろう。そして優奈は、僕があの声を聴いたときにかけられたに違いない。もし迅の話が正しいなら、だが。

「もしかして、杣は僕をここに呼び寄せるために優奈を……?」

 とりあえず迅の仮定が正しいという前提で話を続けていくことにする。

「状況だけ見れば、そう考えられるよな……」

 迅は難しい顔をしながら答える。

「あ、ごめん」

 僕は今の質問が迅にとってひどい質問であったことに気付き、謝る。あの話の流れでは、まるで杣が悪人であるかのような話だった。迅にとって彼女を悪人呼ばわりされているのは、きっといいものではないに違いない。

「いや……いいよ」

 迅は愛想笑いを浮かべ、言う。謝った所で生じてしまった気まずい空気が治ることはなく、僕は周囲をうろつきながら時間をつぶす。時間がこの空気を解決してくれるとは限らないけれど。……そういえば、昨日の夜から杣がここにやってきていないな。忙しいのだろうか? おかげで今日の朝食を食べていない。少し空腹を感じながら、僕は結界に触れてみたり、魔法瓶をポケットから取り出しては元に戻したり、地面に落ちている石を一か所に集めたりしていた。

 日が暮れ、空腹感も大きくなってきた頃、迅が僕に話しかけてきた。

「杣、来ないな……もしかして、杣の目的が達成されかけているのか?」

 今までずっと気まずい雰囲気だったので、彼はその雰囲気を破ろうとしてくれたのかもしれない。僕はそんな迅に感謝しつつ、応答する。

「そうかもしれない。おかげで少し空腹が続いてるけどね。ここはあんまり暑くないから、脱水症状も起こらないし、結界の中にトイレもあったから、意外と住みやすいところだよね」

 そんなことを言うと、迅が少しだけ驚いた様子で僕を見た。

「トイレ……あったのか?」

 意外な着眼点に、僕も驚いた顔になってしまう。

「え、知らなかったの?」

 場所自体はあまり分かりやすくないが、一日程この場所を散策していれば、ちゃんとこの場所が分かるくらいの位置にはあったはずなんだけど……。

「あーいや……ははは」

 迅は僕から視線を逸らし、高めの笑い声を出す。

「それより朔、俺は……ん? 雨か?」

 迅が何かを言おうとしたところで、空からぽつりとしずくが落ちてきた。その量はどんどん数を増し、本格的に雨が降り始めた。

「ぬ、濡れないようにしないと……」

 日光は遮られるのに、雨粒はほとんど遮らない建物の構造のせいで、僕達は雨宿りする場所に困りつつその場所を探した。……最終的にその雨宿りの場所がトイレになったのは、さっきの会話が原因なのか。

「それにしても、随分ひどい雨になったな。雷も鳴り響いてるし」

 遠くでなる雷鳴を聞きながら、迅は言う。

「そうだね。随分たくさん雷が鳴っているみたいだけど……」

 頻繁に鳴り響く雷に少し違和感を感じながらも、僕は外で光る稲光を眺める。あれ? 稲光って、こんなに明るく光るものだっけ?

「いや、待って! こんなに明るく光るときって、すごく近くに雷が――」

 その声と同時に、爆音に近い雷の音が聞こえてくる。それと同時に起きた振動のせいで、僕はドアからトイレの外に投げ出される。

「――お兄ちゃん?」

 その声に顔を上げると、優奈が僕の顔を覗き込んでいた。

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