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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
181/344

-Episode70-

「なんとなく布みたいな感触だなぁ……」

 僕は結界に触れながら、そんな感想を抱いていた。刃物のように鋭いものでもあれば簡単に裂いてしまえるかのようだ。試しに地面に落ちていた石の中でとりわけ尖っているものを選んで、破ることができるかどうか確かめてみる。結果は、見事に失敗した。やはりこれは魔法に近いものらしく、かなりの強度がある。この辺りで手に入る物では、どう頑張ってもこれを破ることはできなさそうだ。今度は魔法で破ることが出来るかを確かめてみたい。

「迅、迅の魔法でこの結界をなんとか出来ない?」

 僕は携帯電話で結界の写真を撮っている迅に話しかける。

「あぁ、それなら既に試したぞ。この結界、薄い割にとんでもない強度がある。自慢する訳じゃないが、見てくれ」

 迅は携帯電話をしまうと、地面にあるコンクリートのタイルを一枚剥がした。何のためにそんなことをするのだろうと暫く眺めていたら、彼は魔法を纏い、それを上に投げ上げたのだ。そして、そのタイルが迅の目の前まで落下した瞬間、そのタイルが爆散した。僕は慌てて顔を両腕で覆い、飛んできた小さな石飛沫が目に入らないようにする。それが収まってから顔を上げると、目の前には拳を前に突きだした迅がいた。

「――まぁ、こんくらいの威力がある訳なんだが……。これでも杣の結界を壊すことは出来なかった。蹴りも同じ結果だったし、力技じゃどうも抜け出せなさそうだ」

 コンクリートを一撃で粉砕できる迅の魔法でも、結界を突破することはできないようだ。……そうなると、舞はどうやってこの結界から出たのだろう。迅が言っていた弥奈の結界のように、すり抜けられる仕組みがあるのだろうか。

「――どちらにしても、何の手がかりもなしじゃ、この結界を突破するのは難しそうだな。となると、杣の説得……か。うーん、杣は一度決めたことはなかなか曲げないからなぁ」

 迅は溜め息を吐く。僕の魔法瓶で突破できるかどうかを試してみたいが、魔法瓶は魔法の効果が長持ちしない。迅の話を聞く限り、集中さえできれば、魔法はある程度長時間維持することが出来るのだ。しかし、この魔法瓶は何度も使用してみた体感で、長くても五分前後が限界であるような気がする。……ふと、迅が降りようとしているのを見て、僕はあることに気が付く。

「もしかして……降りるの? ここ?」

 僕はついさっき感じた浮遊感を思いだす。まぁ降りるということなら上るときほどの浮遊感はないだろうが、それでも色々と大変な目には遭いそうな気がして、あまり気が進まない。

「あー、まぁ朔の思っていることも分かるが……杣は朔をここから出したくないんだろ? じゃあ俺たちがここから脱出しようとしていることはなるべく知られない方がいいんじゃないか? だから、元の位置に戻って、怪しい素振りを見せないようにしたほうがいいと思うが……」

 迅の言っていることは十分に理解できる。だが、なんとなく杣は僕たちが脱出しようとしていることを見抜いていそうなんだよなぁ……主に僕のせいで。

「な、なるべく酔わないようにお願いします……」

 ただ、知られてないという可能性も否定できないので、万全を期しておきたく、僕は迅の提案に従う。上がるときと同じようにおぶってもらい、僕は口を閉じる。

「よし、じゃ、行くぞ?」

 迅の声と同時に、ブランコの一番高いところから下に降りていくような感覚を味わった。ただ、一つ違うのは、その感覚が長く続くこと、そして落下する速さがどんどん速くなっていくことだ。

「減速するぞ。三、二、一」

 迅がそう言い切ったのち、彼は足を思い切り地面に向けて蹴った。魔法のおかげなのか、衝撃波のようなものが発生し、一気に速度が減少する。ぶわっ、と下から風が吹いたのち、僕と迅は地面に着地した。

「ふぅ。これで着地もばっちり……朔?」

 正直な話、上がるときよりも怖かった。僕は半分放心状態になりながら、迅の背中から降りる。そしてそのままへたりと地面に座り込む。確かに酔うような感覚はあまりなかったが、これじゃ上がるときと変わらないもほぼ同然だ。

「随分面白いことしてるんだね」

 そんな声が聞こえてきたのは、迅が僕のことを心配して僕の方に歩み寄ってきたときだった。

「そ、杣!?」

 最初に声を上げたのは、迅だ。正直僕は声を上げる気力がない。

「その様子だと、多分脱出を試みようとしてるんだろうけど……。私のこれも舞さんからいろいろ学んで、おそらく私が許可しない限り、魔法でも出れないようにはなっていると思うよ」

 杣は僕たちの様子から状況を判断したらしい。ただ、彼女は一つの情報を漏らした。彼女が許可すれば、この結界から出れるのだ。――つまり、問題はどうやって杣に許可させるか、ということか。僕はなるべく杣に表情を読まれないように顔を背けながら、色々と案を練ることにした。

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