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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
180/344

-Episode69-

「よっ、と」

 迅の掛け声と共に、彼は建物の上まで跳躍し、着地した。魔法のおかげというのもあるのかもしれないが、ここまでのことが出来るのは、迅の体力があるからこそなのだろう。なぜなら、

「う、うぅぷ……」

 迅におんぶさせられるような形で上まで登ってきた僕は、吐き気を催していたからだ。最初は腕を引っ張ってもらおうと思ったが、それだと脱臼するから危ないと迅に注意され、最終的に迅の背中に乗っかる形で一緒に上まで登ることになったのだが、正直、飛び上がった時の衝撃が半端じゃなかった。上なんか向いていたら首が折れていたかもしれない。その衝撃は一瞬で済んだからいいものの、着地ちょっと前辺りの奇妙な浮遊感が僕を駄目にした。エレベーターで時々感じるあの浮遊感より何倍も気持ちが悪くて、長い間浮遊感を感じた。

「な、なんか悪い……」

 迅が申し訳なさそうに僕の背中をさする。僕としては迅に感謝しておかなければならないのだろうが、気分が落ち着くまでそれは不可能に近い。

「下からあいつらが追ってきたりは……してないみたいだな。この建物に寄りついてはいるが、上まで這い上がってくるようなことはなさそうだ」

 迅は僕の背中をさすりながら状況を確認してくれた。とりあえずあの黒い異形達の追跡がないと分かったのはありがたい。もし追ってくるようなら、僕はこの不快な気分を押し殺してでも、早くここから脱出しなければならないからだ。

「うぅ……とりあえず、杣が戻ってくる前に、どこか目立つような建物に移動しておきたいね」

 なるべくお腹に力を入れないようにしながら、迅に相談を持ちかける。この状態じゃ集中なんて出来ないから、魔法瓶を使うことは難しい。

「うーん……ん、なんだ、これ?」

 迅は僕の背中から手を離し、周囲を探索するように歩く。すると、建物の端の方で彼は立ち止まり、空間を撫でるように手を動かした。

「そこに何かあるの?」

 何も無いように見えるが、杣の呪いの効果を僕が一番体験しているせいか、迅の行動にあまり疑念を抱かなくなっている。

「なんか、膜みたいなものが……薄いんだが、破れない。弥奈の結界も似たようなものなんだが、あれは通り抜けることが出来たんだ。だが、これは通り抜けることも出来ない。これは杣の結界なのか?」

 迅は彼が結界と称したものに触れながら彼の考察を述べる。なるほど、この内側にはあの黒い異形が入って来れない、ということだろうか。

「なのかな? でも杣の魔法って影……いや、あれは魔法じゃないのか」

 僕は自分の意見を言いかけ、杣の魔法が魔法じゃないと怜に言われたことを思い出して言い留まる。その言葉に反応したのか、

「杣の魔法が魔法じゃない? それってどういうことなんだ?」

 迅が結界の調査を止めて話しかけてきた。僕は怜から聞いた話をほぼそのまま迅に伝える。

「ふむ……まぁ、杣はあんまり自分の魔法のことを魔法って呼ばなかったし、あながち間違いではないかもしれないが。ただ、もし魔法じゃないなら、あれは何なんだろうな?」

 迅も大体僕と同じようなことを考えたようだ。

「よく分からないけど……杣が僕にそれを掛けた時には、呪いって言ってたよ」

 事実は伝えておこうと、僕は迅に色々と情報を提供する。僕に掛けられた呪いについても話してみると、迅は深く考え込んだ後、その口を開いた。

「うーん……その話を聞く限り、杣の使っているものは確かに魔法とは言い難いものがあるな。三日も長持ちする魔法なんて、弥奈の虹魔法以外聞いたことがない」

 どうやら、迅は別の点で杣の魔法を魔法ではないと断定したようだ。魔法にあまり詳しくない僕が事情を聞くと、どうやら魔法と言うのは維持しようと意識し続けないと消滅してしまうらしい。寝るときなどは完全にその意識が途絶えるし、他の行動をしている最中もそのことに集中を向けなければならないため、かなり脳が疲労するそうだ。三日も集中して魔法を維持できるのは、余程の精神を持った人間、もしくは常時魔法を使用し続け、それが日常になっている人間くらいだそうだ。後者においてはあまり大それた魔法は維持できるものではなく、今回の杣のような他人に影響を与えるような魔法はまず長期間の維持はできないらしい。

「呪い、かぁ……僕としては藁人形とかのイメージがあるけど」

 吐き気が収まってきた僕は、杣の魔法、いや呪いについて一緒に考えることにした。

「ただ杣がそう言っているだけで、本当の呪いって訳じゃなさそうだけどな。ただ魔法と違うって区別する点で、呪いと呼ぶべきだと思うぞ」

 迅はそう言いながら、再び結界の調査を始めていた。……僕も結界を調べてみようか。魔法で破ることができるか、破った際の影響はあるのかなど、色々調べないと脱出するのは危険な気がする。僕は迅と同じように結界に触れてみた。

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