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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
177/344

-Episode66-

「ほ、本当にここにいるのか……?」

 見つかった、とは言っても舞につままれただけの僕は、とりあえずいるという意思表示をするために、迅の肩を軽く叩いてみた。それと同時に僕が魔法で作っていた魔法のオブジェクトは消滅する。

「う、うぉ!? なんだか妙な感覚だな……」

 確かに見えないものから触れられるというのは、妙な感覚なのかもしれない。

「まぁ、ここにいるこれが本当に空野朔かどうかは分からないけど」

 舞は僕の腕を掴みながら、自分の言葉に訂正を加えた。加える必要なんてなかったのに。

「そうね……このままだと相互の連絡が難しいし、何か方法があればいいんだけれど。携帯電話は使える? 使えるなら迅の肩を二回、使えないなら一回叩いてほしいんだけど」

「何で俺!?」

 舞の提案に迅が少し抗議をしていたが、僕自身女性に触れることには抵抗があったので、舞の提案に従って迅の肩を二回叩くことにする。そういえば、僕の、いや元杣の携帯電話はどこにいったんだろう? 知らない間に僕の元からなくなっているせいで、時刻の確認さえできなかった。

「二回……携帯電話は使えるみたいだぞ」

 迅がそう言うと、舞はズボンのポケットから携帯電話を取り出した。僕以外の人物は皆持っているんじゃないかって思うほど携帯電話の所持率が高い。

「今から三秒後にこれを手放すから、ちゃんとキャッチしなさいよ。三、二、一」

 急にそんなことを言われたうえ、いきなりカウントダウンを始められたので、僕は驚きつつ携帯電話をキャッチする。コバルトブルーとネイビーブルーが綺麗に入り混じった、美しいデザインの携帯電話だ。

「――消えた?」

 ふと、迅がそんなことを口にした。……なるほど、人の場合は見えなくはならないようだが、こういう小物とかなら触れると僕と同じように存在を認知できなくなるようだ。ただ、僕の時のように完全に認識の外に行くわけではないらしいが。

「ふーん。なんとなく予想はしてたけど、少し面倒ね。とりあえずそこから迅の携帯電話にメールでも送って連絡を取ればいいと思うわ」

 なるほど、メールでの連絡ならなんとかなるかもしれない、ということか。少し手間がかかるが、何の連絡手段がないよりはいい。

「え……? 俺、アドレス知らないけど……?」

 迅がそんなことを言っていた。まさか、まだ登録されていないのか? 僕は舞の携帯電話を開いて確認しようとして、キーロックがかかっていることに気付く。

「あぁ、そういえばキーロックの番号を言うのを忘れていたわね。キーロックの番号は、八月十六日よ。別に捻りもないから、そのまま入力してくれていいわ。ついでに、あたしの方には連絡先が登録されてるから、それを使って送れば問題はないでしょ」

 舞の言った通り、キーロックの番号も、迅の連絡先も、しっかり舞の携帯電話にあった。それだけでなく、杣、ゴル先輩、弥奈の連絡先がある。他にも連絡先はあるみたいだが、おそらく舞の友達が何かだろう。とりあえず僕は簡潔な文章で作ったメールを、迅に送ってみる。――電波の方はギリギリで届いているから、大丈夫だとは思うが……。

「――メール、送ったのか?」

 数分経っても、迅にメールは届かなかった。僕の方では既にメールは送信済みになっているので、どこかで問題が生じているのだろう。僕は迅の手持ちぶさたな左手に、舞の携帯電話を握らせる。

「ん? 手に何かが……あれ、これって」

 迅は舞の携帯電話を彼女に差し出した。彼女はそれを受け取ると、画面を確認する。

「――何の入力もされた形跡がないわね」

 彼女の言葉に、僕は耳を疑った。確かに僕はメールを送信した筈なのに。

「何の操作もしないで返したということか? そんなことするかな?」

 迅の疑問に、舞も大方同意していた。

「そうね。おそらくこの見えなくさせている何かの影響だと思うわ。外部との連絡を遮断させようとする何か――随分厄介なものを隠し持ってたのね、杣は」

 ふと、舞が杣の名前を口にした。まぁ彼女と杣は途中まで協力関係にあったみたいだし、それなりの情報共有はあったのか。ただ、互いに何か隠し事をしてはいるみたいだが。

「まぁ、今そこに朔がいるっぽいんだろ? ならさっさと朔をそこから連れ出そうぜ」

 迅は僕が見えていない状況に疲れてきたのか、微妙にだるそうな声を上げてそんなことを言った。僕としても早くここから出たい。

「それはやめたほうがいいわ。だって――」

 舞がそこまで言いかけた時、一瞬だけ風が僕の近くで吹いたような気がした。

「――ほら。来た」

 舞は小さな溜息を吐いて言う。何が来たのかと周囲を見渡してみると、近くに黒髪のツインテール少女が立っていた。

「そ、杣?」

 迅は少し驚いたような表情をして、杣の名前を呼ぶ。彼女は、少しだけ残念そうな表情を浮かべて、近くの壁に寄り掛かった。

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