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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
176/344

-Episode65-

「だから、もう逃げないって言ってるだろ! ずっとこのままの姿勢を続けさせられたら肩とか背中とかが色々危険なことに……」

 迅の言葉を聞く限り、彼はなかなか無茶な姿勢を強いられているらしい。壁越しなのでどんな姿勢なのかは分からないが、僕は迅に同情する。

「その辺は加減するし、心配しなくてもいいわよ? それに、ここから出てもどうせ外にはあいつらがいるんだし――随分数が増えてるみたいだけど。まぁ、むしろここから逃げ出すなんてことは出来ないわ」

 舞はおそらく迅の言っていることを信頼していないか、迅の言っていることを理解していないかで、彼を離す気配がない。

「だから逃げないって……そもそも、俺たちは朔を探しに来たんだろ? なんでこんなところでこんなことになってるんだよ」

 その言葉に、僕は驚くと同時に、偶然による幸福に感謝した。

「迅! 僕はここだよ!」

 僕はなるべく壁越しでも聞こえるような声で、迅に呼びかけてみる。――が、返事がない。もっと大きな声を出さなければならないのかと、少し喉が枯れるくらいの大声を出してみたが、それでも迅には聞こえていない。――そういえば、杣の呪いは今も健在なのだろうか。辺りが薄暗いせい上に、この辺りは空が見えないので、確認が出来ない。まぁこれだけの大声を出しても気付かれないということは、まだ呪いが生きているということなのだろう。せっかくのチャンスなのに。

「この辺りにいることは間違いないのよ。杣がいつも指定していた場所だから。だた、裏通り自体は私の方が詳しいんだけど、この辺りはなぜか彼女の方が詳しくてね。隠し部屋みたいなところがあるらしいから、彼を探すのは骨が折れると思うけれど」

 どうやら、迅達がここにきたのは偶然でもなく、舞と杣に接点があったからのようだ。まぁそれでもここまで場所を絞れているのは、十分な成果ではあるが。

「壁越しに音を出してみたら聞こえるのかな……?」

 以前僕の書いた文字が刀祢に認識できたように、僕の声でなければ、その音を聞くことは出来るのではないかと思い、僕は壁を叩いてみる。金属でできていて、中が空洞だからなのか、随分大きな音が鳴る。

「ん? 今の音は……」

 ふと、迅がその音に反応した。よし、どうやらこの方法は使えるみたいだ。僕は何度も壁を叩いて、迅と舞を誘導する。一瞬だけ向こうで轟音が聞こえたので、驚いて手を離すと、次の瞬間には壁が溶けていた。……何が起きた。

「ず、随分荒っぽいな……」

 迅も僕と同様に呆然としている様子だった。どうやら舞が魔法で壁をぶち壊したらしい。金属を溶かすほどの高温とは、どれだけの温度なんだろう。

「誰もいないわね……さっきの音が気がかりだけど」

 杣と接点があるなら、この呪いについて知っていてもおかしくはないと思うのだが、舞は杣の呪いという点を考慮していないのか、ここには誰もいないと結論づけてしまった。もしかしたらそうさせるのが呪いなのかもしれないけれど。

「なぁ、本当に誰もいないのか? さっきの音、明らかに不自然だったし」

 迅はここに誰かがいることを疑っているようだ。僕は何か書くものがないか探してみる。この辺りの地面は硬いコンクリートで出来ているので、木の棒なんかじゃ地面に文字を書くことは出来ないだろう。その辺に手頃な大きさの石でも転がっていればいいのだが、生憎そこまで都合のいいことはなかった。

「――気のせいだったか?」

 ついには迅も僕の必死のノックを気のせいと勘違いしかけている。確かに壁を開けてから僕は何の行動も起こしていないから仕方ないかもしれないが。とにかく、早急に行動を起こさないと、彼らがこの場から立ち去ってしまう。僕はポケットから魔法瓶を取り出すと、蓋を開け、水から矢印のようなオブジェクトを作り出してみた。その矢印は僕の方を向いている。……咄嗟のこととはいえ、もう少し考えて魔法を使えばよかったと後悔した。

「ん? 今までこんなものあったか?」

 最初にオブジェクトに気付いたのは、迅だった。

「これは……水魔法、怜の? いえ、彼女のことを考えれば、その辺に姿を現してもおかしくないし……」

 舞もオブジェクトに気付き、彼女の意見を独り言のように述べる。怜の魔法だと勘違いしなかったことに、僕は大きく感謝した。――怜、か。あれから一度も会えていない。早くこんなところから脱出して、怜に会えたらいいのに。

「他に水魔法を使える奴がいたとか?」

 迅は僕が魔法を使ったという事実から遠ざかるようなことを言った。杣の呪いが効果を発しているのか?

「それはないわ。少なくとも、私の記憶では。それに――」

 舞は手を伸ばすと、軽くその手を振り下ろした。その手は僕の肩に届き、彼女の手は僕の肩を掴む形になる。

「ほら、見つけたわよ」

 そんな言葉とともに、僕は舞たちから発見されたのだった。

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