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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
175/344

-Episode64-

「ちょ、ちょっと待って!」

 僕は杣を引き留めようとしたが、彼女は待ってくれなかった。一人裏通りに残され、僕は途方に暮れる。しかし、このままじっとしていても黒い異形に襲われるだけだろう。僕は出口を目指して歩こうとした。辺りは僕のいる位置から約二メートル程離れた位置からまるで闇のように真っ暗に変化していた。

「ん? これ、よく見たら……」

 一度見覚えがあるので、僕はすぐに気付くことが出来た。闇のように見えたものは、黒い異形達だ。弥奈の時のように、この中に入ってこようと張り付いてこそいないが、周囲にざわめくように大量の奴等がいることは容易に想像できた。こいつらって、こんなにたくさんいたのか。

「魔法とか使って……難しそうだなぁ」

この辺りには壁もなく、仮に螺旋階段を魔法瓶で作って上に上れてもそこからどうやって外に出るかというめどが立たない。こんなところで約一週間も放置されてしまえば、どう考えても餓死してしまう。彼女の口調からしてそんなことはなさそうだけど。

「助けを待つ? 杣に頼んでみる? 黒い異形と戦ってみる?」

 僕は思いつく限りの方法を、無理難題も含めて口に出してみる。助けを待つとして、僕は魔法で場所を知らせようとはするだろう。だが、裏通りは非常に入り組んでいて、迷わない方が不思議なくらいの構造をしている。ほぼ不可能に近い方法だな。僕は頭を軽くつついて今の考えを追い出す。次、杣に頼むとして、きっと何の条件もなしに僕を解放してくれるはずはない。その内容によるから、これは保留しておこう。口に出した最後の意見、黒い異形と戦う――戦いながら出口を探す、というのは、怜みたいに無尽蔵に魔法が使えるなら案の一つとして考えられたかもしれない。しかし、僕が持っている魔法瓶は、現在三つ。それに対し無尽蔵にも思えるほどの黒い異形を相手にするのはいくらなんでも無謀すぎるか。

「あーっ、もう! そもそもなんで僕がここに待機してなくちゃいけないんだ!」

 少しだけ苛立ちが募ってきた僕は、不満を吐き出すように叫んだ。

「時が巻き戻るだか何だか知らないけれど、そもそも時が巻き戻るなら、その巻き戻る前の記憶なんて残らないじゃないか! だったら別に巻き戻されようが巻き戻されまいが、別に関係ない――ん?」

 不満を漏らし続けるうち、僕はあることに気付いた。夏休みに入ってから定期的に起こる頭痛。これはもしかして、巻き戻った時の記憶が、何らかの原因で蘇っているということなのかもしれない。まぁ、僕が思い出した記憶なんて、大抵怜との記憶しかないんだけど。時が巻き戻る前も、僕は怜に振り回されていたのか。なんとなく、巻き戻る前の怜は今の怜より大人びているような気もするが――いや、気のせいだろう。普段がどうしようもなく子供っぽいだけで、真面目な時ではちゃんと真面目に物事を見据えて考えるし、そういう時は僕や迅、舞よりも大人びているように思える。

「怜――」

 僕は彼女の名前を呼んで、目を閉じる。怜の姿を少し思い浮かべるだけで、なんだか気恥ずかしくなってしまう。いつからこう考えるようになったのかは、いまいちはっきりしていない。時間の巻き戻りで、何度も一緒に過ごしていた、というのも原因の一つではあるのかもしれない。

「――こんなことばっかり考えてても駄目だな。怜に会うには、なんとかしてここから脱出しなくちゃいけないんだ」

 僕は軽く頬を叩いて、気持ちを整理する。ここを出る方法を考えるんだ。幸い、時間は大分ある。休憩を挟めば、色々と冷静に物事を考えられるはずだ。

 そう期待して既に三日、僕は裏通りの中に寝そべっていた。百通りぐらい方法を試してみたが、どれもうまくいかない。魔法瓶はもったいないので使っていないから、それを使えばまだ他の方法もとれるが、残り三つのこれを下手に使用したくはない。

「せめて相談相手がいれば……」

 一人で考えられることには限界がある。僕はそれを今回の件でよく思い知った。だからこそ誰か相談相手が欲しい。杣は割と僕の所に来てどこかで買ってきたらしい弁当を持って来たり、暇を持て余している僕に外の状況を伝えたりしてくれたりするが、脱出に関しては全くの非協力的だ。説得しようとしても結論は毎回ここに待機してもらうということに収束していく。

「――離せよ! 離せって!」

 そう、話して欲しいのだ。――ん?

「誰かいる?」

 僕は聞き耳を立てて、先ほどの声が聞こえてきた方向へ近寄る。

「今離したら間違いなく逃げるでしょ。楓がいない分、あんたの行動力が高くて面倒なのよ。だからこうしておくしかないの」

 今の声は、舞のものだ。楓という知らない人物の名前が出てきたが、もう一人の知り合いだろうか? よく思い出してみれば、さっきの声は迅のものであった気がする。この二人がどうしてここに? 僕はより注意深く二人の会話に耳をそばだてた。

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