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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
166/344

-Episode55-

「大丈夫だよ、朔君が元気でいてくれるなら、私はどうなってもいい」

 怜はそう言うと、ゲームセンターの外へ駆け出し、舞を追っていった。僕はあわてて怜を引き留めようとし、ゲームセンターの外へ出たが、そのときに、僕は異様な光景を目にする。

「誰も……いない……?」

 僕たちがここに訪れる前までは少なくとも人通りはあったはずの商店街が、まるで人だけ忽然と姿を消してしまったかのように、いなくなっていた。

「おい朔、今の音は……!? な、なんだこれ……!?」

 舞の炎を噴射した音を聞きつけたのか、迅が僕のもとへやってきて、僕と同じように外の状況に驚いていた。

「あ、そうだ、怜!」

 僕は外に向かった怜を探す。とは言っても舞と魔法を撃ち合っているので、すぐに見つけることはできた。怜の水の魔法と、舞の炎の魔法は、互いに打ち消し合っているようで、互角のように見えた。

「僕が怜を止める! 迅は舞さんをなんとかできる!?」

 たとえこの場に人がいないとしても、彼女たちがここから移動しないとは限らない。現に今、舞は空中を飛びながら、怜をどこかへ誘導しようとしていた。僕は迅に舞をなんとかできないかと頼む。

「――分かった、なんとかしてみせる!」

 迅は頷いて、魔法を使い始めた。彼の魔法はどうやら鎧のようなものらしい。橙色の光が彼の両手両足を纏う。僕は迅にハンカチを返してから、怜のもとへ走り出した。

 怜と舞の間には、炎による熱気と、氷による冷気で、暑いのか寒いのか分からないような空気が漂っていた。商店街から出ようとしていた怜を、僕は何とか彼女の腕を掴むことで引き留める。

「ちょ、ちょっと朔君! 駄目だよ!」

 怜は舞を追うことに必死になっているのか、少しの間抵抗し、僕の腕を引き離そうとした。その隙に、舞が怜の方向へ魔法を打ち出す。――それぐらいは、僕だって予測してる。僕はすでに蓋の開いている魔法瓶を前に掲げ、巨大な円盤をイメージする。僕達の目の前に現れた氷の円盤は、炎と相殺して水蒸気と化し、周囲に充満した。怜はこの水蒸気もすぐに水や氷に変化させて攻撃を行っていたようだが、僕はこのままにしておく。

「今のうちに逃げよう!」

 僕は怜を見て言った。怜が僕の表情から考えていることが分かるなら、今僕が一番優先していること――ここで戦闘を起こさないようにすること――を理解してくれるはずだ。

「――で、でも、舞が……」

 怜は舞のことが気がかりらしい。今までの流れを見れば、純粋な戦いでは二人とも互角であると思う。ただ、舞はかなり機転が利き、しかも賢い。さっきも怜をどこかに誘導して、自分が有利になるように仕向けていた。このまま戦闘が続けば、間違いなく彼女が勝っていただろう。もしそうなったとき、怜がどうなるかは、今は考えたくない。

「う、うぅ……分かった」

 僕の考えていることを知ったからか、怜は渋々了解してくれた。了解の取れた僕は、怜の手を引き、先ほど舞がおびき出そうとしていた場所とは反対に逃げた。

「――おかしいな、追ってこない」

 商店街を抜け、すでに水蒸気の霧など全くない状態になったのに、舞は僕たちを追ってこなかった。迅がなんとかしてくれているのだろうか。ならば今の内に安全な場所に逃げなくてはならない。しかし、どこが安全な場所なのだろうか? どこに行っても彼女は僕たちを追い続けるような気がする。

「とりあえず、朔君の家に戻ってもいいかな?」

 怜はそんな提案をしてきた。正直、僕が何も言わなくても会話が成立できてしまうのは少し恐ろしくもありがたかった。話が進むのが早い。僕は割と無駄に長考してしまうきらいがあるので、次の言葉を発するまでに少しだけ時間がかかるのだ。とりあえず、僕は怜の提案通り、僕の家に戻ることにした。

「ただいまー」

 条件反射的に、僕は家に帰ったときの挨拶をする。携帯電話で時刻を確認してみると、午後一時を過ぎていた。何か昼食でも食べておきたい。そう思いながら靴を脱いでいると、優奈がおかえりと言ってこないことに気付く。

「優奈も出かけてるのかな……?」

 僕は靴を脱ぎ終え、リビングに向かう。

「お……お兄……ちゃん」

 優奈の苦しそうな声が聞こえてきたのは、それからすぐだった。

「優奈!?」

 僕は声の聞こえた方、キッチンへ走る。一瞬だけ黒い影のようなものが見えた。あれは一体なんだ? いや、それよりも優奈の安否だ。

「優奈!」

 キッチンに駆け込んで、優奈の名前を呼ぶ。……そこには、作りかけの料理だけが残されていた。明らかについさっきまで人――優奈がいた形跡がある。誰かに連れ去られた? しかし、キッチンの方にドアはない。一体誰が彼女を連れ去ったのだろうか? 遅れてリビングに入ってきた怜も、キッチンの様子を見て、奇妙に思ったようだ。僕は怜にさっき聞こえた優奈の声について話すことにした。

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