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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
162/344

-Episode51-

 八月七日、メールに指定された時刻の二日前に、僕は商店街のゲームセンターを訪れる。現在時刻は午前十時すぎ。携帯電話があるとすぐに時間が確認できるからすごく助かる。

「朔君、ゲームでもしにきたの?」

 僕が外出しようとした時、それを見つけて付いてきた怜が、ゲーセンの中を見ながら言う。せっかくだから、怜にも届いたメールについて話してみようか。

「――ふぅん。変な人もいるんだね。私としては、こんな風に朔君の画像を加工していたずらに使うのは許せないんだけど」

 怜は冷めた目でメールに添付された画像を見ていた。怜は携帯電話をパタンと閉じた後、それを僕に返す。

「で、その携帯電話、絶対朔君のじゃないよね? 他人の携帯電話に届いたメールを朔君は勝手に見たの?」

 いつの間にかにやりとこちらを見ていた怜が、そんなことを言った。痛いところをつかれ、僕は怜から顔をそむける。もう少し考えてから怜に説明すればよかったかもしれない。

「も、もうしないよ。それに今回は僕がこのメールを見たおかげで、誤解を与えずに済んだじゃないか」

 僕は自分の行動を正当化してみようとするが、怜は話を聞いてさえいなかった。そもそも僕がメールを勝手に見たことさえあまり気にしていなさそうだ。

「ねぇ朔君、メールの送信主が指定した時刻は明後日なんでしょ? どうして朔君は今日ここに来たの?」

 怜が素朴な疑問を投げかけてきた。僕は怜がまた僕のメールを勝手に見たことについて言及してこないことにほっとしながら、僕の意図を伝える。

「今日は下見をしに来たんだ。あんなメールを送るくらいだから、まともな人間ではなさそうだからね。もしかしたら揉め事が起こるかもしれないし」

 僕はそう言いながら、ゲームセンターの中に入る。想像はしていたが、かなり大きな音量が、ゲーセンのあちこちから流れてくる。人はまばらではあるものの、この音量のせいで随分繁盛しているような錯覚を覚えてしまう。

「うわぁ……! すっごいいろんなゲームが置いてあるね! ほら、このゲームとか面白そう!」

 怜が指差したのは、三種類のボタンを使うリズムゲームのようだ。僕はそんな怜の提案を、笑顔で迎える。

「絶対にやらないよ」

 一度だけこのゲーセンに行ったことがあるが、どのゲームもなんだかよく分からない動きをする人ばかりで、正直どのゲームも僕みたいな人間が手を出せるものではない。いわゆる廃人向けのものしかないので、僕たちがやったところで面白く遊べるものなどあるわけがないのだ。

「えー! じゃああれしようよ! エアホッケー!」

 怜は僕の腕を引っ張ってエアホッケーの台に向かう。すると、そこには既に先客がいた。

「がっはっは! 喰らえ! 某の魔球!」

 聞き覚えのある叫び声が、僕の背筋を震え上がらせる。ゴル先輩が、誰かとエアホッケーをしていた。彼の打ったパックは、パックが割れてしまうのではないかと思うくらいの轟音を立ててステージ上を駆け抜ける。よく見ると、ゴル先輩の持っているマレットは、鋼鉄のようなもので出来ていることが分かった。まさかこんなゲームにまで廃人、というか超人向けになっているなんて。

「どう頑張ったって打てないからやめてくれー!」

 ふと、ゴル先輩の相手をしている人の方からも、聞き覚えのある声が聞こえてきた。見ると、迅がゴル先輩のとんでもないパックの動きに翻弄されていた。パックが割れないか心配だったが、おそらくパックもかなりの強度があるのだろう。そこまでいくと使用者の体に当たった時の心配がかなり大きくなる。エアホッケーだからそんなことは滅多に起こらないと――。

「あ、危ない!」

 僕がそっと立ち去ろうとした瞬間、迅の叫び声がゲーセン内に響き渡る。その直後に、僕の背後で轟音が鳴り響く。そのときに感じた何かが空を切る感覚。

「い、今……」

 僕は全身を硬直させながら、後ろを振り返る。すると、僕がさっきまで立っていた場所のすぐ後ろにある柱に、鋼鉄製のパックがめり込んでいた。ほんの数秒でもあそこから動くのが遅れていたら、僕はどうなっていたのだろう。

「うむぅ、大丈夫かそこの……む!? なんだ、朔ではないか! 登山以来の再開だな! 某も会えて嬉しいぞ!」

 ゴル先輩は僕の姿を認めると同時に僕に駆け寄り、背中をばしばしと叩く。もうやだこの人。今は全く別のことが気になりすぎて何の反応も返せないのだけれど。

「わ、悪い朔……大丈夫か?」

 迅が本当に申し訳なさそうな表情で近づいてくる。そういえば、彼らとも一緒に登山に言ったはずなのに、僕の誘拐について何も知らないのはどうしてだろう?

「そうだ! 朔よ、今日は舞も一緒に来ているのだぞ! せっかくだからみんなでエアホッケーをしようではないか!」

 ゴル先輩がそんな提案をしてきたが、僕は舞も一緒に来ているという言葉に、ゴル先輩を見つけた時よりも背筋が冷たくなるのを感じた。

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