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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
152/344

-Episode41-

 裏通りは道が整備されておらず、至る所に土が露出している。いつも薄暗いせいか土は湿っていて、比較的容易に文字を書くことが出来た。

「ん、なんだァ……?」

 しばらく考え込んでいた刀祢が、僕が書いた文字を見つける。

「『危害を加えるつもりはない。協力してほしい』?」

 すべてカタカナで書いたため、読めないということはないだろうが、彼がその文章を読み上げてくれたことは確認が取れたという意味ではかなりありがたい。

「さっきの口のテープを剥がした奴か? おい、じゃあさっさとこの縄を解きやがれ。なら協力してやるよ」

 彼は随分素直に書いてあることを信じた。ちょっとその点が不審であったが、一刻も早くこの場所から脱出したいという気持ちが勝り、僕は刀祢の縄を解く。まずは手、その後に足の手を解いた。彼は両手足をぶらぶらさせながら呟く。

「――一体どんな手を使ってるか知らないが、大したもんだな。どこか遠くから物を操ることが出来るなんて……」

 別に、僕は刀祢のすぐそばにいるんだけど。とりあえず僕が彼が縄で縛られるまでの経緯を書いて質問しようと思ったとき、不意に彼が上空に飛び上がった。

「カッ! おかげで自由になれたぜ! その点に関してだけはお前に感謝してやるよ……。まぁ、どこにいるかは分からねぇし、お前を殺すのは最後、ってことにしておいてやるよ。まずは赤髪のヤローと黒髪のヤローをぶっ殺してからだからな」

 彼はそのまま、周囲に暴風をばらまいて飛び去ってしまった。その風に吹き飛ばされた僕は、地面の上をごろごろと転がる。背中に硬いものがぶつかる感触があって、僕は小さな呻き声を上げた。金属の何かにぶつかったらしい。

「……ん?」

 僕は後ろを振り返って、当たった何かを見る。金属製のドアだ。今の衝撃のせいか分からないが、ドアが半開きになっている。これは脱出するチャンスに違いないと、僕はすぐにそのドアから外に逃げ出した。

 あの場所から出たのはいいものの、裏通りは迷路のように入り組んでいて、僕は結局裏通りからは脱出できずにいた。このままじゃ杣や舞に見つかってまた元の場所に、しかも今度はたった一人で残されることになる。せめて僕が納得できるような説明があればなぁ。僕をあの場所に監禁する理由なんて、全く想像もつかないけれど。

「あ、猫だ」

 僕は、裏通りにいたたくさんの猫の群れに遭遇する。猫たちは一か所に固まっているという訳ではなく、まるで遊牧民のように裏通りを渡り歩いているようだ。この場所が前に猫と出会った場所でなければだけど。……しかし、猫たちは僕の姿を見ても何の反応も示さない。おかしいな、前に出会ったときはとんでもない量の猫が僕に寄って来たのに。試しに手を近づけてみたり、軽く撫でてみたりもしたが、触られたときに少し反応するくらいで、猫が寄って来たり、逃げたりすることもない。もしかして、刀祢だけでなく猫、もしかしたら怜や迅達にも僕の姿が見えなくなっているのか? だとすれば、僕はどうすればいいのだろう。……ふと、猫たちが一斉に僕の横を通り過ぎて行った。後ろに誰かいるのか? 真っ先に考えられるのは、杣と舞。僕は恐る恐る後ろを振り向く。そこには、猫用らしい餌の袋を持った、舞の姿だった。……僕を見ても何の反応も示さない辺り、彼女にも僕が見えていないのだろうか? じゃあ、この魔法をかけたのは舞ではないのか。残った有力な候補は杣だけだが、なぜ協力関係にあるらしい舞にも僕の姿が見えないような魔法をかけたのだろうか? それとも、そういったコントロールが効かない魔法なのか?

「……よしよし」

 そんなことを考えていると、舞の方から、普段とは考えもつかないほどの優しげな声が聞こえた。どうやら猫に餌をあげているみたいだ。そのとき彼女が見せていた笑顔は、アリウムのような静かな笑顔だった。こんな表情もするんだな、と僕は意外そうに彼女を見つめる。餌をあげ終えても、猫たちは舞のそばからなかなか離れなかった。やはり、この猫たちは人懐っこい。

「それにしても、知らない間に二人とも逃げ出すなんて、杣の言ってた保険って奴はちゃんと機能したのかしら?」

 ふと、舞がいつもの口調で不満を漏らす。どうやら僕と刀祢が既に逃げ出したことは知られてしまったらしい。ただ、僕の姿は見えていないようだが。ふと、刀祢が彼女か杣を殺そうとしていることを思い出す。……ただ、それを伝えるべきかどうかは悩む。もし、僕がそのことを伝えたら、おそらくそのことを知っているのは僕しかいないと判断し、さらにその僕がどこか分からないが近くにいると思い、周囲を炎で焼き尽くされてはたまらない。……彼女が本当にそこまでするかは分からないが、前刀祢を殺そうとしていたし、それぐらいはやりそうな気がする。僕は少しの間舞の様子を見ておくことにした。

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