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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
151/344

-Episode40-

 頭の中にちらつくノイズのような感覚に、僕は不快感を示して目を覚ます。予測は出来ていたが手足は縛られており、身動きが出来ない。ポケットの中に入っていた魔法瓶は全て盗られており、この状況から脱出しようにも何もできない。僕は訳が分からないままこんな状況に陥ってしまったせいか、途方に暮れて上空を見上げる。既に夜になっているのか、星ひとつない真っ暗な空が写っていた。ふと、僕の後ろから呻き声が聞こえる。振り向くと、そこには何度か見たことのある少年が両手両足と口を縛られていた。

「んーっ! んーっ!」

 刀祢は、呻きながらその場でじたばたしていた。彼なら風の魔法でなんとか脱出できそうなものだが、どうやら今の彼にはそれができないらしい。

「あ、あの……」

 僕は彼に這って近づき、声をかける。もし性格が悪い方の刀祢だったらかなり危険な気もするが、魔法を使っていない、むしろ使えない状況でありそうな彼なら、命に関わるような怪我は負わないだろう。

「んーっ!? ん、んっん!」

 刀祢は僕に気付いていないのか、呻き声を続ける。……よく見れば、彼の周囲に風が渦巻いて様々なものを切り裂いているのがわかる。もしかして、彼って今凶暴な人格の方の刀祢なのではないか? 僕が少し震えながらその場でじっとしていると、彼の風の刃が僕の腕を縛っていた縄を切り裂いた。少し皮膚も切ってしまい、鋭い痛みが走るが、それよりも両手が自由になったことが大きい。僕は手の痛みを必死で我慢しながら止血し、ゆっくりと刀祢に近寄る。彼の様子からすると、風の魔法は本人に影響を及ぼすことができなさそうだ。つまり彼の近くにいれば、必然的に危険は少なくなるということではないだろうか。僕は彼に近づいたのち、彼の口を覆っているガムテープをゆっくりと剥がした。

「んんっ! んばぁっ!? な、な、なんだ!?」

 刀祢は驚いて周囲をきょろきょろと見回す。

「だ、大丈夫?」

 僕は恐る恐る刀祢に安否を聞いてみる。下手すれば僕が襲われかねないという状況に震えながら返答を待っていると、

「……チィ、誰だか知らんが、苛立つ奴だな。口を解くくらいなら手足を解けばいいものを」

刀祢はぶつくさと文句を言い始めた。それにしても、誰だかしらん、だなんて、彼は僕のことを覚えていないのだろうか?

「おい、そこにいるんだろ? いるなら返事くらいしろ。そんでこの縄を解きやがれ。じゃないとお前を切り刻むぞ」

 彼は明後日の方向を見て、そんなことを言う。なんだかおかしくなって、

「あの、こっちですけど」

 と声を掛けた。しかし、返事はない。もしかして意図的に無視してる?

「……あくまで無視か。ハッ、ならいいぜ。宣言通り、お前を切り刻んでやる」

 いや、無視してるのはそっちだから。と思った次の瞬間、彼が今彼の向いている方向のドラム缶が、見えない何かに切り裂かれた。刀祢のものであることは間違いないが、どうして彼はそんな誰もいないところを狙ったのだろう?

「ん? 誰もいない……どういうことだ?」

 彼は本当に不思議そうに、そんなことを言った。誰も、いない? 僕がここにいるというのに、彼はなぜこの場に誰がいないと言ったのだろうか? そのとき、僕の頭の中に一つの仮説が生まれる。僕は刀祢の肩を叩いた。

「そこかっ!」

 彼はすぐに振り返った。目の前には、僕がいる。鼻がくっつきそうなくらい近くにいるのだから、普通は何らかの反応を示してもいいはずだが。

「……なんだァ? ステルス? いや、気配も感じないし……一体誰なんだ」

 彼は目の前に僕がいるにも関わらず、そんなことを言った。今ので確信した。どうやら僕は刀祢には見えていない、聞こえていないらしい。ということは、僕は誰かに魔法をかけられたということになる。しかし、僕を認知させなくする魔法なんてあるのだろうか? 今まで見てきた魔法の中で、そこまで具体性のある魔法はない気がする。魔法というのはそれぞれが別々の性能を持ってはいるが、どれも抽象的なもので、それで何ができるか、という具体的な魔法なんてなかったはずだ。

「どうしようかなぁ……」

 僕は解放された両手で足の縄をほどきながら、刀祢と連絡を取る手段を考えることにした。今現在、連絡を取れそうな人物は彼しかいない。杣と舞はきっと協力しないだろうし、他のみんなは僕がここにいることを知らない可能性が高い。ただ、彼と話も出来ないとなると、僕はどうしたらいいか分からなくなる。頭を抱えて俯くと、僕がいつも着ている白地に黒いストライプが数本入ったTシャツが目に入った。……筆談なら、どうだろうか? きっと魔法の影響は現れないはずだ。僕は周囲から適当に木の棒を探すと、刀祢に最も近い土の場所に文字を書いた。

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