表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
150/344

-Episode39-

「もう嫌……」

 僕はげんなりしながら山を登っていた。お腹も何回か鳴ったが、昼食は僕以外の全員、特にゴル先輩が平らげてしまった。

「だ、大丈夫か?」

 迅が何度も心配そうに声を掛けてくる。迅だけでなく優奈と弥奈も心配してくれる。だが心配されてしまうとなんとなく弱音を見せづらく、つい大丈夫だよと答えてしまう。

「あ、あの、これ……」

 弥奈はそっと彼女のポケットから小さいアメを取り出した。……だが、僕はそれを受け取らない。というより、受け取れないのだ。怜が何か言いたそうな表情でこちらを見ているから。多分ここで僕が受け取ろうとすれば、何か文句を言ってくるに違いない。そのせいで雰囲気が悪くなるのは嫌だ。怜がここまで僕への罰に執着している理由は分からないが、今の状態の怜はなるべく刺激しない方がいい気がする。僕は色々と理由をこじつけて弥奈からのアメを断った。非常に弥奈に申し訳ないのだが、彼女は少し落ち込みながらもそのアメを迅に渡していた。しかし、まだ頂上には着かないのか。そろそろ着いてもおかしくないと思うんだけど……。そう思ったとき、肩を誰かに叩かれる。僕は後ろを振り向いて、誰が叩いたのか確認する。しかし、後ろには誰もいなかった。そりゃあ僕が最後尾なのだから当たり前なのだけど……じゃあ誰が叩いたんだ?

「ねぇ弥奈さん、さっき僕の後ろに誰かいた?」

 僕は弥奈に話しかけてみる。さっきのアメの件もあるのでちょっと話しかけづらかったが、一番近くにいたのが弥奈だし、弥奈は虹魔法使いだから人の気配を探る魔法とかも使えるかもしれない。そう思って話しかけた。が、返事がない。もしかして怒っているのだろうか?

「あ、あの、さっきはごめん。今度お詫びに何かするよ。だから、僕の質問に答えてくれないかな?」

 僕の謝罪も、見事に無視されてしまった。――というより、聞こえていないように見える。僕は違和感を感じ、迅に話しかけようとしたとき、後ろから口を誰かに抑えられる。

「むぐぅ!?」

 僕は急に起きた出来事に慌てる。当てられた手は意外と小さい。僕がそれを外そうとすると、その前にその手が僕の口から離れた。

「ごめんね、手荒な真似をして」

 聞こえてきた声は、杣のものだった。

「杣、どうしてここに……ってあれ?」

 僕が杣に声をかけようとしたとき、周囲の景色が一変しているのが見えた。ここは確か、裏通りだったか……。

「な、何が起こったの?」

 僕はとりあえず今の状況を把握しようとする。

「私の魔法、分かる? 影の魔法なんだけど」

 そう言えば、ファミレスで使っていたような気がする。つまり、今回はその魔法で山の中からこの裏通りまで連れてこられたという訳か。……何のために?

「あら、いつの間に連れてきてたの?」

 そんなことを考えていると、裏通りの反対側から、別の声が聞こえてきた。……今の声は、舞?

「舞さんに、杣さん……二人とも、どうして?」

 僕は頭の中が混乱しないように、早めに疑問を口に出した。

「別にあんたに知ってもらう必要はないんだけど」

 舞はどこか冷めたような雰囲気を纏って言う。なんだか嫌な予感がするので、なるべくここから逃げ出したいのだが、舞と杣で両側の道が塞がれているため、それは困難そうだ。

「ごめんね……大丈夫、すぐ終わるから」

 杣も事情を話せないらしい。その顔には後悔や罪悪感、責任感など、複雑な感情が入り混じっていた。

「すぐ終わるって、何が終わるの?」

 どことなく不穏な言葉に、僕は顔をしかめて言う。

「知ってもらう必要はない、って言ったじゃない。それに、知らない方があんたにとっていい場合だってあるのよ」

 舞はそう言いながら、何かを取り出す。……縄?

「ちょ、ちょっと待ってよ、それで何をする気なの!?」

 すぐに頭に連想されるのは、拘束。彼女たちの急な変化に、僕はどうしたらいいか分からず戸惑う。

「別にあんたがおとなしくするって言うならそれでもいいんだけど。多分話を聞いたらおとなしくしているような人じゃないでしょあんたは」

 舞がそう言うと同時に、僕の周囲に炎の輪が現れる。なるほど、身動きをとらせないためか。杣は特に何かをしようとはしてこない。ただ複雑な表情のまま、こちらを見ているだけである。そんなことより、僕はこのまま拘束されて訳の分からないまま何かが終わるのは嫌だ。僕は登山服の内側、着なれたズボンのポケットに手を忍ばせ、魔法瓶を取り出す。

「状況を教えてくれるまで、捕まるわけにはいかないよ!」

 僕は魔法瓶を地面に叩き付ける。イメージするのは、大量の水。火を消して、彼女の魔法を無効化する。そうイメージした瞬間、中に入っていた少量の透明な液体が、巨大な水の塊に変化し、彼女の炎を消す。よし、これで逃げ――。

「本当に杣の言った通りになるなんて、ね」

 舞のその言葉と同時に、後頭部に衝撃を受ける。僕は頭がぐらつくのを覚え、そのまま気を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ