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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
144/344

-Episode33-

 僕は何が起こるか分からなかったので、とりあえず急所だけは守ろうと両腕で頭と心臓部を守る。軽く怒ったくらいで氷塊を飛ばしてくるような人だ。本気で怒ったら何をしてくるのかよく分からない。そのまま暫く固まっていると、怜が何もしてこないことに気付く。僕がゆっくりと両腕の隙間を開き、怜の方を見ると、彼女は顔を真っ赤にさせながら、涙目で僕の方を見ていた。

「ご、ごめん」

 咄嗟に謝罪の言葉が口から出てくる。その瞬間、怜は僕の横を駆け抜けて、外へと飛び出して行った。一瞬だけ驚いて固まってしまったが、罪悪感と責任感がすぐに僕を突き動かし、怜を追わせた。

 いくら体力がないとは言っても、僕は平均的な女子に持久力ぐらいは勝てる自信がある。――持久力だけは。

「ぜ、ぜぇ、ぜぇ……」

 僕は息切れしながら、怜を追い続ける。どうしてか彼女の方が足が速い。しかしそこは威厳とかプライドとかが僕を燃え上がらせて、なんとか彼女が疲れて休憩するまでは、彼女を見失わずに追跡することが出来た。

「れ、怜、ま、待って……」

 僕は呼吸を整えながら、必死で怜に待ってくれるように頼み込む。

「そ、その、ごめ、ぼ、悪、ぜぇ、ぜぇ……」

 息切れしすぎたせいで、僕はまともな言葉さえ話せていない。

「ううん、私の方こそ、ごめん。ちょっと取り乱しちゃって……」

 怜は俯きながら謝る。僕より息切れが少ないのは気のせいだろうか。

「ふぅ……本当にごめん、悪気はなかったんだけど」

 僕は一度深呼吸をして、まともに話ができるようになってから本題に入る。少し弁護に回りかけて、僕は首を振る。

「いや、そういうことじゃないんだ。僕が悪いことはなんとなく分かる、だから、その……責任を取らないと、って思って」

 自分でも何を言ってるか分からなくなってきたが、とりあえず素直な気持ちを怜に伝えることにした。

「え……えっと、それは、その」

 ふと、また怜が慌てだす。何か変なことを言ってしまっただろうか?

「本当?」

 怜が顔を上げて僕の方を見る。頬が赤く染まっていて、その顔に僕は不覚にもドキリとしてしまった。

「本当って……本当だよ」

 オウム返しのように返事をする僕。なんだか奇妙な感覚が体を襲う。体がふわふわしていくような、よく分からない感覚、この感覚は、一体――。

「おいおい、随分と熱くなってんじゃねぇか」

 聞き覚えのある声が、僕の背後から聞こえる。振り向くと、そこには風を纏った若草色の少年。刀祢が、僕たちの方をにやにやしながら見ていた。今の口調からすると、今彼はおそらく……。

「うわっ!」

 予想通り、彼は風の弾を僕たちに飛ばしてきた。怜はある程度の距離を取っていたため、魔法でそれを相殺する。しかしそれに構うことなく、彼は風の弾を打ち出していく。……狙いは僕か。

「おっとっと……」

 風の弾は渦からある程度の軌道は予測できる。もちろん、かわし切れずにかするが、完全に被弾することはまずない。……ただ、これだけで彼の攻撃が終わるはずはないだろう。僕は怜の近くに寄って、彼の弾丸を相殺してもらうことにする。

「……カッ!」

 彼は強く叫んだ。次の瞬間、彼の目の前に巨大な竜巻が現れる。そしてそれは勢いよくこちらに近づいているのだ。

「怜、あれはなんとかできる?」

 僕は怜に聞いてみる。

「……ちょっと難しいかも。あそこまで強い風だと水じゃコントロールしづらいかな。だから――」

 そう言った直後、怜は大きな氷の壁を目の前に出現させた。

「カッ! それで逃げるつもりか!?」

 刀祢は愉快そうに笑い、そのままこちらに飛んでくる。竜巻は巨大な壁に阻まれて一度停止したが、少しずつ壁を抉ってこちらに来ているようだ。

「後ろォ!」

 刀祢は僕たちの後ろに回り込んで、僕たちに攻撃を仕掛ける。その前に、僕はポケットから取り出していた魔法瓶の栓を抜いた。

「ッ!?」

 刀祢は突然突き出された槍に一瞬身をすくませ、その身をねじるように槍を回避した。

「……駄目か」

 僕はちょっとだけ溜め息を漏らす。先端の尖っていない槍が、二本程彼に向かって伸びている。

「てめぇ……!」

 彼は怒りの矛先を僕に向ける。そりゃそうか。僕は身構えて、次の攻撃に対処できるよう、ポケットの中に手を忍ばせた。そのとき、彼の口元が歪に歪んでいることに気付く。次の瞬間、僕の腹に違和感を感じた。直後、腹に猛烈な痛みが生じ始める。そこを見ると、風の小さな竜巻が、僕の横腹を少しだけ抉っていた。骨まで届いてはいなかったが、肉を少し抉られたようで、僕は苦悶の声を上げる。

「う……ぐぅ……」

 顔を歪め、その場にしゃがみこむ僕。まずい、このままだと僕は動けずに彼の風の弾丸の集中砲火に遭ってしまう。……そう思ったとき、僕は周囲の空気が凍りつくのを感じた。

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