表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
138/344

-Episode27-

 その後いくら追いかけても逃げ続ける猫と、魔法で閉じ込めてまで猫を触ろうとする怜の追いかけっこは、実に三時間近く続いた。途中から僕のことも気にかけないくらい猫を追い始めていたので、僕は怜から少し離れた所に座る。するとそこに猫が次々と寄ってくるのだ。怜も追いかけないでこんな風にじっとしていたらいいのに。そんなことを思いながら、僕は怜を暫く眺めていた。

「ぜぇ……ぜぇ……」

 ついに諦めたのか、怜が肩で息をしながら僕のところに歩いてくる。ずいぶんと疲弊しているなぁ。そんな怜に怯えたのか、猫たちは次々と僕のところから去って行った。

「大丈夫?」

 僕は僕の隣に腰を下ろした怜に言う。深呼吸をして呼吸を整えてはいるみたいだが、なんだかちょっとつらそうだ。そりゃ三時間も走り続けていればそんな風になるとは思うけど。

「ぜぇ……朔君……ありがと……」

 いつもの怜らしくなく、素直にお礼を言った。余裕がないのだろう。そんな怜を見ていると、なんだか心配になってきた。

「本当に? 何か飲み物とかいる?」

 僕が立ち上がると、怜は首を振ってそれを否定した。彼女が両手を前に出す。するとそこから、水が湧き出てきた。そういえば怜は水の魔法が使えるから、半永久的に水を飲むことが出来るのか。

「んぐっ……ふぅ。少し落ち着いたよ」

 まだ疲れは見えているが、普通に話すことぐらいはできるようになったようだ。

「それにしてもいいな、朔君は猫に好かれて」

 怜は少し不満顔で言った。あれはどちらかと言えば僕が好かれていた、というよりは猫を散々追い回していた怜が嫌われていたのだと思うけれど。

「怜って、猫が好きなの?」

 さすがに僕に猫が怜を嫌っているなどと言うことはできずに、ちょっとだけ話題を逸らして話してみる。

「大好き! もうね、柔らかくて、ふさふさしてて、泣き声も可愛くて、仕草も可愛くて、あと、耳がピーンってなってるのとか、ふにゃってなってるのとかも可愛いの! もう猫大好き! 愛してる! 朔君の次に!」

 後半の理由が可愛いのみということや、僕が何故か一番にランクインしていることはともかく、怜の猫好きな一面が見て取れた。

 しばらく僕は怜の体力が回復するまで待って、裏通りを出ることにする。――のだが。

「迷った……」

 怜が猫を追い回すのをただ追いかけていただけの僕は、帰りまでの道筋をすっかり覚えていなかったのだ。無論猫しか見えていなかった怜も帰り道など分かるはずもない。

「どうしよう朔君、そろそろ日が暮れちゃうよ」

 少し不安な表情を見せる怜。確かに薄暗くて分かりづらいが、日が西に傾いているのが分かる。

「大丈夫、日が暮れるまでには帰れるはずだよ……多分」

 こういうとき、迅や舞みたいに携帯電話でもあればいいのになぁ。と勝手なことを考えてみる。まぁ帰る道も分からないので帰れるはずもなく、辺りはすっかり暗くなってしまった。裏通りに吹く風が、なんだか不気味さを増している。

「夏なのに、なんだか寒気がするんだけど……」

 霊的なものは信じていないが、それでもこういう場所は怖い。暗闇という概念がどうも恐怖心を揺さぶるのだ。

「朔君、もしかして霊感とかあるの?」

 怜はそういったことに耐性があるのか、あまり恐怖を感じている様子がない。ただやはりどこか不安を感じてはいるようで、いつものようにはしゃぐ様子は見られなかった。

「無いけど……なんだろう、得体のしれないものが怖い、に近い感覚」

 僕はそんなことを述べてみる。あまり言葉にはしたくないのだが。こういう漠然としたものって、言葉にするとより恐怖感が増すから――。

「ッ!!」

 ふと、僕は前方に一瞬だけ見えたものに戦慄する。人? のようなもの。しかし黒い。まるで刀祢を覆っていた渦のようにどす黒い。

「ど、どうしたの朔君?」

 怜が不安を何割か増幅させて僕に聞く。僕は口を開こうとするが、しかし、次の瞬間それは出来なくなる。目の前に、黒い何かが立っていたからだ。

「――な、なにあれ!?」

 怜は目の前にいる黒い人型のものに向かって叫んだ。黒いものは少しずつ、しかし確実に僕たちに近づいてくる。

「そうだ、魔法を使って……!」

 僕は、怜にもらった魔法瓶を取り出す。あの時命を救われてから、常にポケットに四個、しまっておくことにしているのだ。

「朔君、それを使うのは朔君が一人のときでいいよ! ここは私がする!」

 そう言って、怜が氷の壁を作り出す。これであの黒いのはこちらに来れないだろう。そう思った矢先だった。

「さ、朔君危ない!」

 怜が叫んだ。僕は咄嗟に周囲を見渡す。すると背後に、さっきのとは別の黒い何かが――。僕がそれに触れられそうになった瞬間、氷の塊が黒い塊を吹き飛ばした。

「た、助かったよ、怜」

 僕は怜にお礼を言う。よく見ると、黒い何かがどんどん集まってきているのが分かる。

「なんとか……しないと……」

 僕は親指を加えて、そんなことを呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ