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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
137/344

-Episode26-

「へぇ……こんなところがあったんだ……」

 僕たちは舞に連れられて、彼女の言う裏通りという所に連れて行ってもらった。

「随分薄暗いんだな。まだ昼だぞ?」

 迅は上を見上げ、ぼそっと呟く。確かに、ここは周囲の建物のせいで日光が遮られ、薄暗い。

「で、ここでさっきの黒いのを見たぬふぅ!?」

 僕が舞に尋ねようとしたとき、急に襟首を誰かから引っ張られる。こんな風に強引に引っ張る人なんて一人くらいしか知らないけど。

「朔君見て! 今猫ちゃんいた! ほらこっち見て……あ、逃げた! 朔君追いかけるよ!」

 怜に無理やり引っ張られ、僕は質問の機会を失ったまま、猫を追跡することになった。

「猫ちゃーん! 怖くないよー。怖くないからおいでー」

 裏通りを妙に高めの声で歩き回る怜と、その後ろで何もせずに付いていく僕。もう少し刀祢を覆ったについていろいろと知りたいんだけど……。怜がマイペース過ぎるのと、その怜が毎度僕を連れ回すせいで、進展がほとんどない。ちなみに猫は僕たちの近くにはいるものの、一定の距離を保ったまま逃げ続けている。

「うーん……寄ってこないなぁ。ここはこう、餌を使って呼んでみよう」

 まぁ、野良猫なら食べ物で釣ることならできそうだが……食べ物なんて持ってきてたっけ? そんなことを思っていると、怜が僕の服を引っ張って、自身の前に突きだした。

「さあ、行け! 朔君!」

 ――餌って僕ですか。確かに猫は雑食だけど、僕を餌にするのはどうなんだ? そんな疑問を抱きながら、ゆっくりと前に歩き始める。きっと僕が近づいたら逃げるのだろうな、とか思いながら歩くが、猫は離れることはなかった。むしろ、僕の方に寄ってきている。人慣れしてるのか? 僕は猫の前にしゃがんで、耳の後ろを撫でてみる。色々と調べたいことはあるし、こんなことをしている余裕もあるか分からないが、猫の愛くるしい姿を見ていると、ついつい猫を可愛がりたくなる。僕は猫の首、背中、しっぽを撫でる。背中を撫でている間にあくびをした猫がこれまた可愛い。ふと、幻覚なのか、僕の隣にもう一匹猫がいることに気付く。いや、幻覚ではないみたいだ。気が付けば、裏通りの様々な隙間から、猫がたくさん出て来ている。数十秒の内に、僕は猫に取り囲まれてしまった。

「え、あの……」

 あまりにも多すぎる猫の数に、僕はついたじろいでしまった。数匹は僕にすりよって来たり、僕の背中に乗ろうとしたり、下手すると猫が落ちて怪我をしてしまいそうなので、動くことも出来ない。猫にもみくちゃにされるなんて経験、一生に一度あるかないかの経験じゃないか? ふとそんなことを思っていると、薄暗い裏通りがさらに暗くなる。上を見ると、怜が僕の方に向かってダイブしていた。

「えぇぇぇぇええぇ!?」

 僕は驚きのあまり声を上げることしか出来なかった。猫は僕が叫び声を上げた瞬間にとんでもないスピードで散開し、あっという間に僕の周囲からいなくなる。つまり、この場に残されたのは僕だけで……。

「ぐふぅっ!」

 僕は怜の下敷きになる。柔らかい部分が当たったとか、そういう思考が出来ないほどに、背中と足腰に激痛が走った。そりゃあ大体四十キロの物体が僕めがけて落ちてきたのだから、痛いに決まってる。しかも、自慢じゃないが僕の体はそんなに丈夫じゃない。

「にゃふっ! 猫! 猫でもふも……あれ? 朔君? なんで私の下にいるの?」

 ちょっと壊れかけてた怜に苦笑いしながら、僕はとりあえずどいてほしいという合図を送る。

「うーん……やっぱり空中ダイビングはだめかぁ。猫ちゃんは朔君に夢中になってたから、大丈夫だと思ったんだけどなぁ」

 怜はちょっと残念そうに言い、僕の上からどいた。

「今の……僕が下にいなかったらかなり危なかったと思うよ?」

 僕は痛みが麻痺している足をゆっくりと延ばして地面に座り、言う。地面はコンクリートで出来ていて、ちょっとの高さからでも大の字で落ちたらかなり大怪我をすると思う。

「大丈夫、本当に危なかったら水でクッションを作るから」

 怜は当たり前のように言った。まぁ、そうか。だったら僕をクッションにしないで普通に水をクッションにしてくれればよかったのに。

「むー! 朔君、水で濡れてたら猫ちゃんをもふもふ出来ないでしょ!」

 なぜか怜に怒られてしまった。考えていることが顔に出やすいとはいえ、ここまで僕の思考を読めるものなのか。

「そりゃあ、私は朔君の彼女だからね!」

 さらっと彼女宣言をする怜。というか考えが読めるなら、僕がしゃべらなくても会話が成立するじゃないか。傍からみるとその光景はちょっと異様だ。

「大丈夫、私も朔君の声が聴きたいからずっとこんなことを続けたりはしないよ」

 怜はにんまりと笑って、また猫を追い始めた。僕と怜のちょっと異様な会話は、一旦ここで中断、ということになった。

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