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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
132/344

-Episode21-

「チッ! もう来やがったのか……!」

 少年は悔しそうに舌打ちをする。どうやったのかは分からないが、舞のおかげで僕たちは助かったみたいだ。

「ありがとう、舞さん……!」

 僕は舞にお礼を言いながら立ち上がる。

「お礼は今はいいわ。まずは目の前の奴を何とかしましょう」

 舞はそう言って、飛んできたらしい風の塊を、彼女に当たる直前で燃やして回避する。

「同じ手段が何度も通じる訳ねぇだろうが!」

 少年がそういう頃には、彼はすでに僕たちの視界から姿を消していた。風を使って移動したのだろうか?

「カッ、隙だらけだな!」

 その声が、背後から聞こえてくる。どうやら背後から僕たちを襲うらしい。死角からの攻撃に、僕はおろか怜も反応できていなかった。

「――そう? むしろあんたの方が隙だらけに見えるけど」

 が、舞は別だったらしい。その言葉の後、熱風が僕たちの間を駆け抜ける。

「相性、ってもんがあるわよね、魔法には」

 そんなことを舞は呟く。

「炎の魔法を使えば、簡単に風の流れなんて変えられるし、あんたが操れる風、いわゆる空気を燃やして炎にすることで自分が操れるようにすることも出来る。つまる所、あんたの魔法はあたしの魔法と相性が悪いのよ」

 それだけじゃないような気もすると僕は思うが、確かに相性はあると思う。

「――カッ、相性だ? そんなもん、俺が分からないとでも思ってんのか?」

 ふと、少年が不敵な笑みをこぼした。ぞくりと、背筋に悪寒が走る。

「お前に俺の魔法が通じないことは、ある程度分かってるんだよ……あとは、分かるよな?」

 彼がそう言い終わる直前、僕は彼の周囲に風の渦がいくつも浮いていることに気付いた。

「お前が駄目なら、他の二人――ってな!」

 少年はそう言って、風の渦を放つような動作をする。僕は咄嗟に両腕でそれを防ごうとする。――何も起きない。

「なんでかしらね。あんたの行動パターンが、手に取るように分かるわ。あんたみたいな下らない人間のやろうとすることって、大抵固定されているからかしら?」

 少年の周りに、火の玉がいくつも浮いている。それはさっきまで風の渦として存在していたものだ。

「なっ――!」

 少年がそんな声を上げ、更に何かをしようとしたとき、舞が呟く。

「――燃えろ」

 その声と同時に、火の玉が少年に襲いかかる。彼は風の壁を作ったみたいだが、むしろ逆効果に見える。風により勢いを増した火は、少年を覆い始める。

「うグッ! ぐあア!」

 少年は断末魔にも似た悲鳴を上げていた。

「あ、あの、舞さん、何もそこまでしなくても……」

 彼の様子に僕は多少の罪悪感を覚え、舞に止めるように尋ねる。

「――どうして?」

 返答は、僕が思っていたものとは全く違っていた。

「あんた、随分偽善的なのね。でもこいつはあんたを殺そうとした奴でしょ? もしそこでこいつを開放したら、あんたが殺されるかもしれないわよ?」

 舞はそんなことを言う。確かにそれはそうかもしれない。が、相手が僕を殺そうとしていようが、彼を殺すのはいけないだろう。――ふと、彼の体に大量の水がかけられる。これは僕じゃない、とすると――。

「朔君、これでいいんだよね?」

 怜が確認のためか僕にそう聞いてきた。僕は少年に駆け寄り、安否を確かめる。かなり重度の火傷を負っていて、瀕死に近いが、呼吸はしていた。

「ゥ……ァ……」

 微かに何かを言っているように思えたが、良く聞こえない。これだけ疲弊していると魔法も使えないのか、彼が風の魔法で僕たちを襲うこともなかった。

「とりあえず、病院に運ばないと」

 僕は電話を取りに一階に降りようとする。それを引き留めたのは、舞だった。僕は少しだけ敵意を乗せて彼女を睨む。

「少し落ち着きなさい。この状況、救急隊員や警察が見たらあたしたちが加害者だと思われるわよ」

 そう言われて、僕は初めて部屋の状況を目の当たりにした。所々に焦げ目がついていて、さらに僕が割ったと思われる瓶もある。

「ぐ……」

 おおよそ彼女のせいではあるが、確かに一理ある。

「確かに私は彼を殺すことに抵抗はなかったけど、すぐに殺す気なんてなかったわよ。色々と聞かなくちゃいけないこともあるし」

 彼女はあまり反省している様子はないが、彼を殺す意思がないことを主張する。半信半疑だが、少年が生きていることから、嘘だと断定はできない。

「朔君、とりあえずこれからどうする?」

 怜がそんな質問をする。彼をこのままにはしておけないし、かといって公的機関に連れて行けば他の人に加害者だと疑われる、か……。

「僕の家で預かっておくわけにもいかないしなぁ……」

 僕がそんなことを呟いたときだった。

「それだ!」

 怜がまるで妙案を聞いたかのように叫ぶ。

「え? いやそれは無理……」

 僕がそう言って説得しようとするが、怜の言葉の散弾銃に負け、結局少年は僕の家に置いておくことになってしまった。

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