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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
131/344

-Episode20-

「なっ……!?」

 僕が声を上げたとき、少年によって窓が開けられた。しまった、窓の鍵をかけ忘れていた。助けを呼ぼうと何か言葉を叫ぼうとしたとき、

「おっと、そうはさせねぇ」

 少年は僕の口を押え、叫ぶことを妨害した。その後、彼は僕の口を押えていない方の手を、まるで拳銃のような形に変え、僕の頭に当てる。

「お前が死んでも、大して戦力差は変わらない気もするが……お前が一番隙だらけだったんでな、最初に狙わせてもらったぜ」

 少年はそんなことを言う。油断しているのか、彼は急いで僕を殺そうとはせず、ゆっくりを恐怖を味あわせてから殺そうとしているらしい。僕は自由になっている右手をポケットの中に忍ばせ、さっき入れていた魔法瓶を握る。下手に動きすぎると感づかれて殺されてしまうかもしれない。蓋を開けるには両手を使う必要もあるし、瓶を取り出した時点で怪しまれるのは間違いない。そう考えれば、あと取れる行動は一つしかなかった。

「くらえっ!」

 僕は瓶を少年に向かって投げつける。無論、彼はそれを回避した。

「カッ! そんなもん食らう訳が――」

 彼の言葉が途中で止まる。瓶が割れ、大きな音がしたのだ。中にある透明な水が宙に散らばる。

「チッ、そっちが目的か……! まぁいい、さっさと殺して退散させてもら――」

 彼の言葉が再び止まる。なぜなら、透明な水がまだ宙に浮いたままだからだ。

「――今だ!」

 僕は頭の中でイメージを形にしながら、叫ぶ。魔法の説明は怜から聞いている。想像がそのまま形になると考えれば扱いやすいことも聞いた。僕がイメージしたものは、氷の檻。風の通る隙間のない、箱のような檻。透明な水は、怜の言った通りに、僕のイメージをそのまま形にして現れた。それは少年の周りを囲うように集まり、そこから体積が膨張、そして氷へと凝固していく。

「てめぇ、まさか――」

 少年が何かに気付いたときには、もう遅かった。彼は氷の檻に閉じ込められたのだ。僕は一安心して、その場にぺたんと座り込む。

「朔君、今の音何? ……って、これ何!?」

 瓶の割れる音を聞きつけて、怜がやってきた。魔法瓶の魔法も効果が恒久的ではないはずだ。今のうちに怜の方で氷の檻を作ってもらわないと――。

「カッ! こんな檻!」

 ふと、檻の内側から声がした。その声で中にいるのが誰か判断した怜は、僕の行動を知ったのか、今ある檻の周りにもう一つの檻を作り始めた。普段はおちゃらけているように見えるけど、本当に大事な局面ではかなり優秀になるな、と割と勝手に怜を評価する。完全に二重の檻で囲われた少年。これで今度こそ安心できる、そう思った矢先だった。座り込んでいた僕の髪が、風圧で揺れる。窓から吹いてきた風はない。窓は檻が塞いでいるのだ。そこから風が入ることなんてない。そう思い檻を見ると、二つ、亀裂のようなものが走っているのが見えた。刹那、何か真空の刃のようなものが飛んできて、僕は慌ててしゃがみこみ、それを回避する。服の下の方が切れたような音がする。痛みはないから、人体は傷ついていないが……部屋の壁を見ると、壁の上下左右に一つずつ、鋭い切れ目が現れていた。

「カッ! こんなもんで俺を封じた気になってんじゃねぇぞ!」

少年は檻の中で叫び、何度も真空の刃を放ってくる。この近距離だと、怜は魔法でその風を打ち消せないらしい。僕と同じようにしゃがみこんで、ゆっくりと僕に近づいてくる。幸いなのは、檻のおかげで僕たちの姿が見えてないことだろう。

「朔君、一旦下に逃げよう!」

 僕も怜の意見に賛成だ。優奈を危険に巻き込んでしまうことに抵抗はあるが、ここでじっとしていてはいつ殺されるか分からない。それに、下には舞がいるはずだから、合流できればこの真空の刃にも対抗策があるはずだ。そのとき、僕の丁度目の前に、何かが通り過ぎる感覚を感じた。前髪が少しだけ切れる。おそるおそる下を見ると、何によって切られた跡が、床についていた。

「まずい、声でばれたか……!」

 僕は声を殺して言う。どうやら彼は耳もいいらしい。ここから走って逃げるのもありだが、あの真空の刃は縦にも横にも放てるみたいだ。僕の体の向きと垂直に放たれて、胴体が真っ二つ、なんて事態もあり得ない話ではない。

「……おい、見えてるぜ」

 ふと、そんな声が聞こえて、僕は声の聞こえた方を向く。そこには、何度も穴を開けられたせいで、ほとんど檻の意味をなしていない氷の檻があった。その中にいる少年と、目が合う。

「二人まとめて消してやるよ!」

 少年は僕たちに手を向け、真空の刃を放ったようだ。回避できるか? 僕は必至でその場から動こうとする。が、風の速さには勝てない。僕は目を瞑ってしまう。直後、焼けるような熱が僕に襲いかかった。

「熱っ!?」

 僕は叫ぶ。……胴体は切れていない。

「さっきから何を騒いでいるのかと思えば、こんな状況だとはね」

 舞が、僕の部屋のドアを開けながら言った。

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