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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
130/344

-Episode19-

「え……何?」

 僕は怪訝そうな目で自信に満ち溢れた怜を見る。魔法瓶って、お湯を温かいまま保存しておけるあれだろうか。

「朔君絶対違うこと考えてるよね。……まぁ、朔君は魔法について何もしらないみたいだったし、分からなくても仕方ないか」

 怜は僕の思考をさらりと否定してから、怜の持ってきた魔法瓶とやらの説明を始めた。

 怜の解説は思っていたよりも大分かりやすく、僕の頭も割とすんなり説明が入ってきた。どうやら魔法瓶というのは、特殊な瓶の中に魔法を封じ込め、それを割るか瓶の蓋を開けることで、割った人または蓋を開けた人がその魔法を使えるようになるというものだった。

「それにしても、どういう仕組みなんだろうね? 魔法瓶で使える魔法が無から有をつくるものだけに限定されるっていうのはまぁいいとして、人の魔法を他人が使えるようになるなんて、不思議な話しだよね」

 僕は説明をして満足顔の怜に質問してみる。

「んー、そうだね、考えてみれば不思議な話だよね。その瓶に何か仕組みがあるのは分かるけど……。役立つ情報なのかは分からないけど、この瓶は魔法と科学の技術を合わせて作られたものみたいだよ?」

 どうやら怜も詳しい原理は知らないらしい。まぁ、そんなものだろう。原理を知らなくても使えるものは世間に溢れている。消しゴム、冷蔵庫、自動車。どんな原理で字が消えるとか、ものが冷えるとか、鉄の塊が動くかなんて、知っていても知らなくても使うことはできる。

「で、これを僕に渡す理由は?」

 ようやく僕は本題に入る。怜は何も分かっていない僕にちょっとだけ呆れた様子を示していた。

「朔君、朔君って自分の魔法使えてないでしょ? それであの変な人に敵うと思ってるの?」

 彼女は溜め息を吐いて言う。確かに、僕一人じゃあの少年には勝てないと思うけれど。

「僕一人で戦うことにならないように、こうして舞さんと一緒に行動してるんだと思うけど……違うの?」

 僕は質問を質問で返されたので、それをさらに質問で返してみる。

「あのね朔君、私たちは確かに個別で狙われないように一緒に行動してるけど、必ず孤立する事態っていうのは起こりうるんだよ。少なくともそういう事態に備えることは必要だと思う」

 いつもの怜とは違って、とても冷静で真面目な判断をしていると、僕は今になって気付いた。確かに、言われてみるとその可能性は否定できないし、その事態に備える必要性も頷ける。僕は少しきまりが悪そうになりながらも頷いて、怜の持ってきた魔法瓶を受け取った。

「えっと、一つ、二つ……え、全部で二十個もあるの!?」

 数えてみて、その量に驚愕する。ポケットに入るのはせいぜい四個程度。両手に持てるのもがんばって四個程度。それでもまだ半分も消費できてない。

「朔君の今後も考えて、多めに用意してみました」

 怜はまた自信に満ち溢れた声で言う。

「ま、まぁ受け取っておくよ……」

 さっきの論理で言えば、あの少年の脅威が去った後でも、再び何らかの事件が起こらないとは限らない。だから、もしもの時の為に、これらをとっておくのはある意味得策でもあった。ふと、怜がこちらをまっすぐ見据えていることに気付く。

「朔君、絶対に無茶はしないでね」

 その表情に、一瞬だけ、頭の奥底で何かが光ったような幻覚を見る。何か大事なことを忘れているような感覚。ただ、それを思い出すにはその光はあまりにも弱すぎていた。

「大丈夫、無茶はしない」

 代わりに、僕は目の前の怜に約束をする。そのとき怜が浮かべたフクシアのような笑みを、僕はどこかで見たような気がした。

「あ、そうそう、一つ言い忘れてたんだ」

 くるりと怜は向きを変え、一歩前に進み出る。僕と一歩分離れた距離で、再び僕の方を見ると、今度はボリジのような笑顔を見せて、

「三万九千八百円。貸しね」

 と、とんでもない金額を口に出した。約四万円って、中学生に払える金額じゃないぞ。

「だってそのくらいの値段はしたんだもん。それに、その魔法瓶は、蓋を開けて使うなら何度でも使えるんだよ? 安い安い」

 まるで商売人のように魔法瓶のいい点を次々と述べていく怜。決してこの魔法瓶がただの冗談で買ったものではないということは分かっているが、彼女の様子をみていると、それがなんだか疑わしくも思えてくるのだった。

 結局僕は怜に約四万の借金を抱えた状態で、自分の部屋に戻ることになる。お風呂にも入ろうとしたが、舞が上がった後はお風呂の湯が全て蒸発していて、その後入った怜のお風呂の湯はすべて僕に水としてぶちまけられた。夏じゃなかったら絶対風邪をこじらせているだろう。僕はベッドの上でくしゃみを一つして、溜息を吐く。ふと、カーテンが揺れていることに気付いた。窓が開いている? 僕はそんな疑問を抱いて、カーテンを開ける。

「――よぉ、迎えに来たぜ」

 若草色の少年が、そこに浮遊していた。

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