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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeα-
13/344

-Episode12-

 やっとのことで偽図書委員の仕事を終え、僕と怜は図書室を後にした。楓たちは僕が図書委員だと思っているので、どこか不思議そうな顔をしていたが、後で本当の図書委員が来たときに誤解も晴れてくれるだろう。そういえば図書を借りる三十分の間、僕と同い年に見える少年――迅と少しだけ話をした。二人は付き合っているということと、これから商店街でデートをするということ。一瞬二人の関係に黒い何かが湧き上がってきたが、よくよく考えれば怜は自称僕の彼女らしいので、傍目から見たら同じように見えるのだろうか。僕は全然違うと主張したい。

「朔君? なんかどうでもいいこと考えてない?」

 どうでもいいことを考えている最中に怜に注意されてしまった。僕ってそういうのが顔に出やすいんだろうか。

「どうでもいいことは考えてないよ。楓さん達は怜さんが魔法をかけられた日には来てなかったってことを考えてたんだよ」

 僕は事実を交えて嘘をつく。嘘も方便だ。怜は僕の話した内容に不満があったのか、少し唸るような声を上げる。もしかして嘘がばれた?

「ねぇ、『怜さん』って少し他人行儀じゃない? 私としては呼び捨てにしてくれたほうがいいんだけど」

 うわぁ、怜のほうがどうでもいいこと考えてた。心の中では既に呼び捨てにしているのだが、彼女がそうして欲しいならそうしよう。僕は頷いて、

「じゃあ怜、舞さんがどこにいるか分かる?」

 真面目な顔でそう尋ねる。怜はちょっとの間だけにやけた表情を作ったが、前回みたいにふざけた回答をすることはなく、

「手がかりも何もないからね。強いて言うなら彼女、よく本を借りているみたいだから、数日後にまた本を借りに来るのかもしれないってことぐらいなのかな」

 と言った。うーん、それなら今日本を返した日に借りそうなものだけど。まぁ僕たちとしては本を借りに来てくれる方が助かる。しかし彼女の言うとおり、今日本を借りに来ることはないだろう。

「魔法とかで探せないの?」

 軽い気持ちで尋ねてみる。言ってからこれは妙案じゃないかと一人得意になった。魔法という便利な代物があるというならそれを有効活用するべきだろう。しかし、怜は首を振って、

「魔法でそんなことができるなら携帯電話にGPS機能は付かないと思う。そうだ、せっかくだから魔法についてちょっと勉強しようか。お腹も空いてきたし近くのコンビニで」

 僕の手を引きながらそんなことを言った。随分お腹が空いているんだろうな。僕はそう考えながら肯定の返事をした。

 コンビニには狭いけれど休憩スペースというものがあって、僕と怜はそこでついさっき買ったばかりの弁当と飲み物を広げ食べていた。お金は何故か僕がもつことになった。こういうときつくづく財布を持ってきていてよかったと思う。そして風通しのあまりよくないこの場所で、第二回魔法講座が開かれた。

「魔法が使えるからって何でも出来るわけじゃないんだよね。ほら、私が朔君の彼女だからって朔君のことを自由にできるわけじゃないし」

 怜はなるべく分かりやすく説明しているのだろう。ただ、例え話が例え話になってない。というか僕に呼び捨てにしてほしいといっておいて彼女は君付けしてるとかなんかおかしい。まぁ呼び捨てにされると変な感じがするからいいけど。

「基本的に魔法は一人一種類使える、って考えるといいよ。例えば、私は『水』の魔法を使えるんだけど、『炎』とか『風』とかの魔法は使えないって感じ」

 今度の例え話は例え話になっている。ただ、疑問に思ったことがあったので、手を挙げて質問する。

「『水』の魔法って、水を操ることだけしか出来ないってこと? 水をジュースに変えるとかはできない、みたいな」

 こう言っておいてなんだが、僕も例え話が下手だな、と実感する。

「まぁそんな感じかな。魔法っていうのは何かを操る能力って考えるのが割と普通だよ。何事にも例外はあるけど、基本はそう」

 うーん、そう考えると魔法って大したことないな。そう思っているのが顔に現れたのか、怜は苦笑いをしていた。

「魔法なんてそんなものだよ。だから科学が発展しているんじゃない。魔法の利点を挙げるとするなら、無から有を作り出せる点だけだよ」

 彼女のその一言に、僕は固まった。彼女の言っていることがとんでもないことだと、彼女自身は理解しているのだろうか。無から有を作り出すことができる、そんなのこの世の物理法則に反している。『食べ物』の魔法なんてあったら永遠に食糧不足にはならないし、『核』の魔法なんてあったらその人は最強の軍事力を持つことになる。僕は魔法の存在を初めて恐ろしいと思った。それと同時に、コンビニの入店音が鳴る。男女の二人組らしい。その二人をちらと眺めた時、目に入ったのは燃えるような赤だった。

「……偶然にしては出来すぎだけど、チャンスだね」

 怜と僕は頷き合って、舞ともう一人の男性に近づいた。

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