表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
129/344

-Episode18-

「お兄ちゃん、どうかな?」

 今のところ唯一僕の味方とも言える優奈が、味見をしてほしいとキッチンまで僕を呼んできた。キッチンに向かう途中怜と舞の方をちらりと見たが、二人とも別々の行動をしていて、少なくとも仲良しとは言い難かった。何と言えばいいのか、相性が悪そうだ。それなのに僕のシスコン疑惑についてはおおむね同意している彼女たちって一体……。それはさておき、僕は優奈の作った料理を眺める。彼女の中ではまだ中華ブームがあるのか、今日はラーメンを作っていた。見た目は普通の醤油ラーメンだが、僕はもう騙されない。きっとスープの中にだしとしてネギが入り込んでいるのだろう。僕はスープをおたまですくって飲んでみる。一口、二口すれば、きっとネギのあの味が……あれ? 普通の醤油のスープだ。となると麺にネギの味が内包されているのか? 僕は麺を一本取って食べてみる。噛みしめるごとにネギの味が口の中に広がって……こない。ひょっとするとこれは、普通のラーメンなのだろうか? やっと、やっと優奈が普通の料理を覚えてくれたのか? 料理の腕はネギに固執さえしなければ一般の家庭をはるかに凌駕する彼女の料理が、ついに味わえるのか!? 僕は感動と嬉しさで、つい感極まってしまった。

「お、お兄ちゃん、どうしたの!?」

 優奈は心配そうに僕を見ている。

「いや、おいしくて、涙が出た」

 僕は優奈の頭を撫でる。僕は信じていた。優奈がしっかりとした料理を作ることを。

「そ、そんなにおいしかった? なんだか照れるなぁ……」

 優奈はデージーのような笑顔を僕に向けていた。僕も優奈に笑顔を向ける。今日初めて、この家でまともな料理にありつけたような気さえしていた。

「――まぁ、そういうこともあるよね」

 怜が、テーブルのイスに座って、そんなことを呟いていた。

「さっきからどうして泣いてるのか疑問に思ってたけど、そういうことだったの」

 舞が、一人納得した様子でイスに座っていた。

「お、お兄ちゃん? さっきすごくおいしそうに食べてたよね?」

 優奈が、僕のことを心から心配して声をかけてきていた。

「うん、うん……」

 対する僕は放心状態で、目の前に並べられたラーメンを見ていた。ラーメンにはトッピングというものがあることをすっかり忘れていた。ラーメンの盛られたどんぶりの上に、それの約二倍の量盛られたネギ。その脇には申し訳程度に盛られたメンマとチャーシュー、卵、なると巻き。

「ラーメン、好きだよ、うん。おいしい、うん、おいしいよ」

 僕は弥奈のようにぶつぎりで喋りながら、無作為にネギを口の中に放り込む。適当にとっても山が崩れないという奇跡のバランス優奈は生み出していた。

「ほ、本当に?」

 優奈は半信半疑だった。そりゃあ感情のこもってない声でそう言われてもそうなるに決まってる。ただ、僕には今の無感情な返答が精一杯だった。

「朔君、がんばれー!」

 怜は面白半分で僕の食べる様子を見ている。

「正直、今日の夕飯は抜いてもいい気がしてきたわ……」

 舞はまだ出来ていない自分の分のラーメンを考えて、すでに半分食欲をなくしているようだった。

「はい、怜さんの分だよ!」

「!?」

 優奈がテーブルの上にもう一つのどんぶりを置いたとき、怜がそんな驚きの声を上げた。

「ゆ、優奈ちゃん! 私のトッピングって、ネギだけなの!? 朔君みたいにメンマとかチャーシューさえ無し!?」

 ……それは、きつい。僕は怜に同情しながら、優奈の方を見る。

「ご、ごめんなさい……実はネギ以外のトッピングがお兄ちゃんの分で全部切れたみたいで……ネギしかないの」

 優奈は微妙に残酷な現実を叩き付けた。

「ぐ、ぐふぅっ……」

 怜はネタとしてやっているのか、素でやっているのか分からないが、後ろ向きに椅子ごと倒れた。まぁ僕だったら素で倒れる。

「私、夕飯いらないかもしれない……」

 舞は完全に食欲を無くしていた。その後、怜と舞はどんな手段を使ったのか分からないが、ラーメンのネギをすべて優奈に食べてもらっていた。僕もそうしたかったのだが、怜がそんなことはさせないと言わんばかりに僕の口へネギを押し込んできたので、結局僕はネギごとラーメンを完食するハメになった。

 舞が風呂に入っている間、僕はリビングで膨らんだ腹を撫でていた。腹痛がひどい。食べ過ぎで腹痛になるのはいつ以来だろうか。

「朔君ー、今お風呂開いたよー」

 怜が僕の隣に座って言う。

「え? 早いなぁ……じゃあ怜先に入ってて」

 僕がそう言うと、怜はちょっと残念そうにして、

「うーん……それはいいや。あ、朔君に渡すものがあるんだよ」

 と言って、風呂敷を持ってきた。僕の家の風呂敷に、何を詰め込んだのだろう。彼女がそれを開くと、中には透明な液体の入ったガラスの瓶が、ごろごろと転がっていた。

「じゃじゃーん! 魔法瓶~!」

 某未来のロボットよろしく、ちょっとだけ声のトーンを上げて、怜は言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ