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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
122/344

-Episode11

「そういうのムカつくんだよなぁ……一人じゃ何もできない癖に、守るものの為に命をかけるとかそういうのがさっ!」

 少年は咆哮し、彼の周囲の空気が渦巻く。竜巻、だろうか? それらは間違いなく僕の方を向いている。彼のいる方向だけならともかく、この様子だと全方向から飛んできそうだ。

「危ない、朔君!」

 怜が僕に近づいて、魔法で氷の壁を展開し、風を防御する。あくまで彼が操れるのは風、ということか。氷でもなんでもいいから、風を生み出す原因である空気を遮断してしまえば、彼の魔法は封じられる。……問題はどうやってそこから反撃に出られるか、ということか。

「おいおい、お前は何もしないのか? カッ、逆だったってか? お前は守ってもらう側なのかよ、笑けてくるぜ」

 少年は僕を嘲笑う。不愉快ではあるが、ここで僕が出て行っても、どうせ返り討ちに遭うだけだ。彼の風は、自分自身にも応用できている。風のスピードでは僕がどう頑張っても彼に攻撃を与えることなんてできない。

「怜、ちょっといいかな?」

 僕は氷の壁の中で怜に尋ねる。

「ん? 何、朔君?」

 少年に襲われているからか、怜の明るい口調の中に緊張が見え隠れしていた。

「僕が数秒だけ囮になるから、その間にあの人の動きを止められないかな?」

 僕の提案に、怜は一瞬驚き、首を振った。

「だ、駄目だよ朔君! もしそれで朔君が危ない目にあったらどうするの!?」

 昨日今日と僕を色んな意味でボコボコにしている怜が言うセリフとは思えない言葉だった。ただ、それだけ僕を心配してくれいるのが分かって、ちょっとだけホッとする。

「大丈夫、一回だけなら、防げるかもしれない」

 と、僕は真っ赤な大嘘を吐く。対策なんてまだ思いついていない。だが、このままじっとしていては、先に少年の方から行動を起こされてしまう。彼が氷の壁を打ち破るような魔法が打てないとは限らないのだ。

「な、ならいいんだけど……無理は絶対しないで!」

 怜はそういうと、魔法を解除した。氷の壁がまるで蒸気のようになって消えていく。

「おぉ、出てきたか……安い挑発に乗ったわけじゃなさそうだがな」

 少年は先ほどよりも高い位置に浮いて、こちらを眺めていた。彼の後ろには大きな風の渦が見えている。どうやらあれを打つ気だったらしい。危なかった。きっとあれだけの風を受けたらあの氷の壁は壊れていただろう。

「じゃ、いくよ!」

 僕は掛け声をだし、全力で前に駆け出した。彼が狙っているのは僕だ、僕に攻撃が集中した瞬間、怜が彼を捕獲してくれる――。

「馬鹿が! お前らの意図なんか簡単に読めるんだよ!」

 少年は高笑いと共に、そんなことを言った。僕が驚いて上を見上げると、渦は僕ではなく、怜の方を向いていた。

「男の方は魔法が使えないと見た! なら先に潰すはそっちの女!」

 その声と同時に、少年は巨大な風の渦を怜に向けて投げる。風に巻き込まれたコンクリートの壁が、渦の中でえぐられるのが見えた。あれに巻き込まれたら、彼女は――。

「怜っ!」

 気が付けば、僕は叫んでいた。どうしてだろう。彼女とは会って数日しか経っていないのに、彼女が失われることを想像すると、言い知れない恐怖が襲ってくる。

「――大丈夫だよ、朔君」

 怜は、僕の方を見て、言った。刹那、急に渦を巻いていた風が消滅する。

「……なんだとっ!?」

 少年は驚く。僕も驚いている。風が消滅したことだけでなく、その風が消滅した地点に、大きな氷塊が浮いていることに。

「……風って、つまるところ空気の塊なんだよね」

 怜は独り言のようにつぶやく。

「空気の中には、ごく少量だけど、水分が混ざっているんだよ」

 彼女が呟く間にも、少年は怜に風を飛ばし続ける。しかし、彼の攻撃は怜に届く前に消え、代わりに怜の近くにある氷塊が大きくなっていく。

「あとは、簡単。水を操れば、空気の勢いをある程度コントロールできるんだよ」

 そんなことが出来るのか、と言いたかったが、事実、怜は少年の攻撃を防いでいる。

「クソッ! 当たらねぇ……こうなったら!」

 少年はこちらに向きを変える。どうやらターゲットを僕に変更したらしい。

「その前に、これ、お返しするよ」

 怜はそう言いながら、人間よりも大きな氷塊を少年に飛ばす。彼は一瞬ひるんだようだが、風のおかげかそれを回避し、そのまま高度を上げていく。

「チッ……次は仕留める!」

 彼は少しだけ捨て台詞のようなものを吐き、そのまま飛び去って行った。とりあえずの脅威が去って、僕は一安心する。怜は少し怒った様子で、僕に近づく。僕がなんの策もなく出て行ったことがばれたのだろうか。

「むー! 朔君、なんの策もなしに出て言っちゃ駄目でしょ!」 

 やはりそうだった。僕が反省の言葉を口にしようとしたとき、

「――まぁ、そんな朔君が好きなんだけどね」

 彼女はさりげなく、パンジーのような笑みを浮かべて言った。その姿に、僕は不覚にも心拍数を上げてしまっていた。

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