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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
121/344

-Episode10-

「心配してくれたのは嬉しいけど、内緒でそういうことされるのはちょっと……」

 僕はなるべく怜を傷つけないようにお願いをしてみる。怜は頷き、口約束ではあるが内緒で僕を追跡しないことを約束してくれた。

「じゃ、次からはしっかり許可を取って尾行するね!」

 ……だめだこの人、成長してない。まぁ、僕が許可を出さなければいいだけの話だから、スルーしておこう。

「そういえば今日のご飯は?」

 僕は優奈の方を向いて尋ねる。優奈は台所に行って、料理を取ってきた。

「今日は中華に挑戦してみたんだ!」

 優奈が張り切って持ってきたのは、餃子だった。今までの料理と違い、ネギが異常に盛られておらず、僕は意外そうにその餃子を見つめる。

「へぇ……どれどれ」

 僕は優奈が渡してくれた箸を手に取って、餃子を一つ掴む。餃子のいい匂いが鼻に届き、僕は口の中によだれが出てくるのを感じた。そのまま口を開け、一思いに餃子を口の中へ放り込む。中から染み出てくるのは……ネギ?

「ごぶっ!?」

 てっきり肉汁があふれるものだと思っていた僕は、予想外の味に餃子を噴き出してしまった。優奈が心配そうに僕を見る。怜は少し離れた所で後ろを向いて小さく震えていた。……知ってたな、怜。

「ご、ごめん、予想外だったから……大丈夫、次は食べられる」

 僕は優奈に謝ってから、近くにあった布で噴き出した餃子を片づけ、次の餃子に手を出す。しかし、さっきの味が強く残り、僕はなかなか餃子を口の中に入れられない。

「お兄ちゃん……? 大丈夫?」

 優奈はさっきよりも僕のことを心配しているようだ。僕のせいで優奈が料理に自信を持てなくなったら悲しい。僕は無理に餃子を押し込む。ネギのような味のする汁、略してネギ汁を十分に味わって飲み込む。不味くはない。むしろおいしい。ただ、ネギの味しかしない。

「おいしい、うん、おいしいよ」

 僕は少し涙目になりながら餃子という名のネギを頬張る。これならむしろネギを異常に盛られた方がよかったかもしれない。ネギが餃子の中に濃縮されたようなものだ。分離できない分、ネギ分がストレートにやってくる。

「そ、そう……?」

 優奈は涙目の僕に戸惑いつつも、少し明るい声で言った。

 その後、僕はネギ餃子をなんとか平らげ、皿を洗って自分の部屋に戻った。部屋に入ろうとしたら怜が後ろからついてきたり、なんとか部屋の中に入ることを防衛したと思ったら窓から入ってきたり、散々な目に遭ったが、なんとか自分の時間を得ることが出来た。ベッドに横になりながら携帯ゲーム機でゲームをし、ゆったりとした時間を過ごす。こういう時間は夏休みに入ってから始めてだ。これこそ真の夏休み、そう思いながらゲーム機をいじっていると、窓が風のせいかガタガタと揺れる。さっきまで風なんて吹いてなかったけどなぁ。そう思いながら窓のカーテンを開けると、

「……見つけたぜ」

 窓越しに、そんな声が聞こえた。聞き覚えがある。ファミレスで聞いた声だ。僕はそれを理解した瞬間に体が硬直し、恐怖を覚えた。

「カッ、手間かけさせやがって……俺はナァ、お前みたいなコソコソしてる奴が大嫌いなんだよ!」

 その声と同時に、窓に一人の人物が浮かび上がる。

「……え?」

 僕はそこに浮かび上がった人物に、困惑してしまった。雰囲気はまるで違う。ただし、そこに現れた彼は、僕が母の見舞いに行ったとき、何度も僕に謝ってきた小柄な男性だったからだ。

「ど、どうして……」

 二重人格という言葉が浮かび、僕はファミレスでの出来事と、病院での出来事を思い出す。謝り続けているせいでストレスが溜まり、その結果二重人格となってしまったと考えれば辻褄は合うのだろう。……って、今そんなことを考えている場合じゃない。僕は携帯ゲーム機を持ったまま、急いで部屋を出ようとする。僕がドアを開けた瞬間に、窓ガラスが盛大に割れる音と共に豪風が部屋に舞い込んできた。

「朔君、さっきから音がうるさ……どうしたの朔君!?」

 部屋の外で待機していた怜が、急に吹いてきた風に動揺する。僕は怜の手を引っ張って、一階まで誘導する。

「ファミレスの件は見てたんだよね!? あの時の襲撃してきた人が僕を狙って襲いに来たんだ!」

 僕の言葉で、怜はすぐに落ち着きを取り戻した。随分と飲み込みが早い。いや、それはいいことだ。僕は一階まで下りると、テレビを見ている優奈に声をかけようとして、思いとどまる。彼が狙っているのは僕だ。偶発的に出会ってしまった怜はともかく、まだ被害に遭っていない優奈まで危険に巻き込むことはない。僕は追い風に任せて玄関のドアまで走り、ドアを開け、外に飛び出した。

「……へぇ、今度は隠れないってか。カッ、隣にいる女のおかげか?」

 少年が、空中に浮いて、僕を見下していた。……十中八九、彼の持っている魔法というのは「風」だろう。僕はその魔法に対する対策を考え始めた。

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