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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
120/344

-Episode09-

「ひっ!?」

 少女とはいえ、消し炭にできるという少しドスのきいた声に、僕は震えあがってしまう。そんな僕とは対照的に、杣はいたって平静だった。

「ごめんなさい、急な事態だったから、ここに逃げ込んでしまったの」

 杣は慌てた様子もなく冷静に話す。

「逃げ込んできた……? 何があったのか知らないけど、本当に急な事態で、あたしの家に逃げ込まなくてはいけないものなの?」

 赤髪の少女は杣の言葉に強く疑問を抱いているようだった。杣は一つ呼吸をしてから、動揺を全く見せずに言う。

「ファミレスに、人殺しが現れたの。私は自分の魔法を使って何とかここまで逃げられたけど、それ以外の人は死んでしまったかもしれない。ここに逃げ込んだのはただの偶然。大丈夫、長居する気はないの」

 杣は落ち着き払った様子で舞と対峙していた。女ってみんなこんなに気丈なんだろうか。それと比べて僕って一体……。

「人殺し、ねぇ……信じる訳じゃないけど、大筋は通っているわね。まぁただ逃げ込んだだけなら、特に何かする理由もないし」

 そう言って赤髪の少女は肩をすくめた。何をする気だったのだろう。考えるだけでなんだか怖くなってきた。

「――それと、さっきから後ろで震えてる君」

 ふと、僕が呼ばれ、僕は変な返事をしてしまう。言って恥ずかしくなり、顔を赤くしていると、

「……あー、うん。驚かせてごめんね」

 ちょっと同情の目を向けて彼女は謝った。別に彼女は悪人ではないらしい。僕が胸を撫で下ろしていると、

「お詫び、じゃないけど、簡単な自己紹介ぐらいしておこうかしら。私は舞」

 赤髪の少女――舞が、名前と簡単な紹介をしてくれた。どうやら僕と同じ学校に通う中学生のようだ。しかも僕と同い年。僕の学年にこんな少女がいたかなぁ? そんな疑問を抱きながらも、僕は自分も自己紹介を返しておいた方がいいと思い、自己紹介をする。

「僕は朔だよ。えっと……趣味はゲームかな」

 特に語ることもないので、簡単にまとまってしまい、十数秒で自己紹介が終わってしまった。なんとなく切ない気分になったが、僕以外誰も気にしてはいないようだった。

「私は杣。――まぁ、こんなところかな。じゃあ、ご迷惑をおかけしました」

 杣は僕以上に簡潔な自己紹介をし、玄関へ向かった。僕は舞にお辞儀をした後、杣についていって玄関の前に立つ。杣は鍵を内側から開けると、杣の家から出た。ん? 今の何かおかしかったような。

「鍵、かかってたの?」

 僕はささいな疑問を杣にぶつける。

「かかってたね」

 杣は正直に答えた。

「僕たち、どうやって家に入ったの?」

 僕はさらに疑問をぶつけてみる。

「魔法」

 杣はそっけなく答える。あぁ、そういえば魔法なんてものがあったっけなぁ。それに杣は虹魔法使いっぽいし、他人の家に入ることくらいなんでもなさそうだ。

「――いや、でも、無断で人の家に入るのは駄目だよなぁ」

 僕はぼそっと呟く。その一言で、杣の足が止まった。

「今、なんて?」

 さっきまで動揺の欠片も見せなかった彼女が、少しだけ震えた声で僕に話しかけてきた。

「いや、無断で人の家に入るのって、結果的に不法侵入になるから、もしかしたら僕たちって犯罪者なのかなって」

 いくら魔法とはいえ、法律を破るのはいけないと思う。そんな単純な考えから生まれた一言だったが、

「そ、そう……まぁ、今度から気を付ける」

 杣は僕が思っていたよりも精神的にダメージを負ったようだった。今のどこに彼女が落ち込むような要素があったのだろう。やっぱり犯罪者というフレーズだろうか。彼女、けっこう真面目そうだし。

「じゃあ、私はそろそろ戻らないといけないから」

 杣は分かれ道を左に曲がり、僕の方を向いて行った。

「あ、うん。気をつけて」

 僕はそう言いながら、反射的に右手を顔の横に置いてしまった。小さいころはよく手を振ってさようならをしていたものだが、その癖が今になっても残っているのは少し恥ずかしい。

「――ふふ」

 僕が戸惑っていると、急に杣が微笑んだ。ユキヤナギのようなきれいなほほえみだった。僕は彼女が後ろを向いて四歩歩き出すまで、全く身動きが取れなくなっていた。今のはなんだったんだろう。僕は何度もそのことについて考えながら、家に向かって歩いた。

「おかえり、お兄ちゃん」

 家に帰ると、出迎えてくれたのは、我が妹、優奈と、

「おかえり朔君! 杣ちゃんとのファミレスはどうだった!? 急に変な奴の襲撃にあって逃げ出したりした!?」

 なぜか昼のファミレスの出来事を知っている怜だった。当然、僕はどうして知っているかを聞くが、

「え? それは、えーと……。敵情視察?」

 怜にとって僕は敵扱いなのか? 彼氏だったり敵だったり立場が安定しない。

「で、でも、朔君が無事でよかった! 私は遠くから見てただけだから何も出来なくて、朔君が死んじゃったらどうしようって思ってたんだ」

 どうやら彼女は僕の心配をしてくれたらしい。僕はそのことに関してはお礼を言うことにした。

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