-Chapter51-
それから数日間、俺たちはこの場所から動くことが出来ず、半分監禁に近い状態で過ごしていた。食事は決まった時間、午前六時と正午と午後六時に舞がコンビニ弁当を買って持ってくる。全部同じメニューという訳ではないが、比較的賞味期限が近く、値下げされているものを買っていることが分かる。そんなどうでもいいことを考える余裕があるほど、俺は暇を持て余していた。もちろんここから何とか抜け出せないかと考えて、魔法を使って壁を越えてみたりもしたが、近くで見張っているらしく、俺が壁を登ると同時に炎の壁も大きくなる。どうやら無から作り出す方の炎を使っているようだ。せめて俺の魔法が全身を包めるようなものだったらな、と魔法で覆った右手を炎にかざしながら考える。熱さは感じない。炎から離れて魔法を解除しても、右手に火傷のような跡はない。
「杣、そっちは何か分かったか?」
俺は近くにいる杣に話しかける。
「特に重要な手掛かりは分からなかったよ。分かるところは、この炎は赤い色をしているけど、バーナーの青い炎と同じくらいの色をしてることかな」
杣は小さく首を振って現状で分かったことを話す。彼女の足元には溶けた金属のようなものがあり、壁のようなものを作って脱出しようとしていることが分かる。水があれば消すことも出来るのだろうが、少量では正に焼け石に水だろう。
「どうしたもんかな……」
閉じ込められてからずっとこんな感じで出れるかどうか様々な実験をしてみるのだが、どれも結果は芳しくない。舞は俺たちの魔法についてある程度調べをつけた上で俺たちを閉じ込めたのだろうか。かなり用意周到な人だな。
「いつまで閉じ込められているのかな……」
杣はまた新しく何かを試そうとしながら、ぼそっとそんなことを呟く。ちょうどそのとき、俺の携帯が鳴った。
「な、なんだ……!?」
俺は驚愕と戸惑いで、ポケットの中を探る。携帯電話は圏外であり、他のところからの電波など届くはずもないのに。俺はおそるおそる携帯電話を開く。すると、携帯電話の電波が一本だけ立っていた。どうやら奇跡的に電波が入っていたみたいだ。知らない電話番号からの通話に出ると、
「――もし、迅さ――? 私――す」
途切れ途切れで声が聞こえないが、どうやら弥奈のようだ。
「弥奈か? 悪い、電波があまり良くないんだ。声が良く聞こえない」
俺はなるべくゆっくり、はっきりと話す。それでも向こうに声が聞こえているかは分からないが。
「電――? ちょ――ください」
弥奈はそう言うと、少しの間沈黙が降りた。俺は黙って彼女が何をするかを待つと、急に電話口から明瞭が音声が聞こえてきた。
「もしもし? 電波を、少し、操作して、音声を、良くしてみました」
途切れ途切れなのは相変わらずだが、先ほどのような電波の悪影響はなくなっていた。虹魔法使いって、本当にすごいなぁと感心しながら、俺は通話を続ける。
「何か用か?」
弥奈はこちらの切迫している状況など知らずに、少し焦った様子で言う。
「実は、満先輩――ゴル先輩が、人手が足りない、って、朔さんを雇った、みたい、なんですが、その朔さんが、来ないの、です」
どうやら朔がゴル先輩の屋台を手伝う予定だったのが、来ていないという。
「だから、迅さんに、手伝ってもらいたい、のです、が……」
弥奈のお願いは聞いてあげてもいいのだが、状況が状況だからなぁ。
「悪いが、今はちょっと――いや、待ってくれ」
断ろうとした瞬間、俺は弥奈に助けてもらうことを思いついた。
「なぁ、お願いがあるんだが……」
俺は弥奈に今の状況を伝える。弥奈は最初驚いたようだが、彼女は理解が早いのか、すぐに状況を飲み込んでくれた。
「なるほど。つまり、私の魔法で、迅さんと、杣、さん? をこちらまで移動させれば、いいの、ですね」
俺のやってもらいたいことを彼女は確認する。俺が肯定すると、すぐさま俺と杣の周りに白い円が現れた。
「これが、虹魔法……?」
俺はその魔法の様子に少し驚きながらも、白い円から放たれる光に包まれていった。
「――ん」
光がある程度治まってきたところで、俺はゆっくりと目を開けた。
「迅さん」
弥奈の声が聞こえてきて、俺はその声が聞こえてきた方を振り向く。どうやら無事に脱出できたみたいだ。周囲には屋台が並んでおり、ゴル先輩の屋台もある。俺は深いため息を吐き、安堵の笑みを浮かべる。
「おお! 迅が現れたぞ! なんだ今のは!」
ゴル先輩も一緒だった。俺は笑顔が引きつるのを感じた。
「ゴル先輩、一つ話したいことがあるのですが――」
俺が舞先輩のことを伝えておこうとそこまで話した瞬間、
強烈な爆裂音が、周囲に響き渡った。
「な、なんだ……!?」
俺は爆発音のした方を向く。神社の奥、洞窟から、白い煙が出ているのが見えた。




