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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeα-
105/344

-Chapter48-

 あの一件があって以来、杣との連絡が全く取れなくなった。舞が何か知っていないかと電話で尋ねてみるも、自分と行動を共にしていること以外は口止めされているらしく、答えてくれない。

「一体どうしたんだよ……」

 俺は商店街にある少し寂れた喫茶店で愚痴をこぼす。基本的に俺以外の人はこの店には訪れない。喫茶店の店長さえもカウンターに立つことがなく、喫茶店の中には俺一人だけが自分で淹れたコーヒーを飲んでいた。カウンターの奥にはたくさんの種類のコーヒー豆が並んでいる。俺はカウンターのレジらしきものにお金を入れると、近くにあった豆を取って、コーヒーメーカーにかける。こうしてコーヒーを飲むこと約三時間である。昨日は半日以上ここで飲んでいたからまだましなほうではあるが。

 夜が更けるまでコーヒーを飲んだ後、水分だけでお腹いっぱいになった体で、俺は商店街を歩く。その速さは無意識の内に早くなり、知らない間に俺の家の前を通り過ぎていた。母さんは仕事があるため、家に電気がついていなかったから気付かなかったのかもしれない。杣や楓のことで考えすぎて、むしゃくしゃしていた思いを一旦切り離すために、俺はランニングでもして気分転換をすることにした。

 多少汗を掻いて、なんとなく気分が高揚してきた頃、俺は朔が何かを眺めながらぼうっと立っていることに気付く。俺が近づくと、朔は俺に気が付いたらしく、簡単な挨拶を交わしてくる。俺も挨拶をしようと、

「ん、朔か。あの時は世話にな……!?」

 そこまで声を出したところで、朔がさっきまで眺めていたものを見る。その携帯のデザイン、そこに付けられたピンクの猫のストラップ。それはまさしく、楓の為に俺が買った携帯電話だった。

「どうして……お前が楓の携帯電話を持っているんだ!?」

 俺は驚いて声を張り上げる。すると、

「この携帯が、楓のものだって……?」

 朔も驚いた様子で携帯電話を見る。どうやら、彼はその携帯電話が楓のものであると気付いていなかったらしい。

「あぁ、そのストラップ、間違いない……!」

 俺は頭の中で朔がなぜその携帯電話を持っていたかを予測しながら答える。

「この携帯電話は今日……えと、舞さんから貸してもらったものなんだけれど……」

 朔の声が聞こえる。頭の中で考え事をしていたせいで、朔が何を言っていたのかよく分からなかった。ただ、舞という言葉が聞こえたので、

「舞? そういえばそんな名前をどこかで聞いたな……たしか、あの黒い奴らと出会った時だったな……」

 俺は舞と会ったことがあるという事実を少しだけ隠して話す。彼の近くには見えないが怜がいるのかもしれない。そんな状況で舞と杣が怜に対して何かを企んでいることを話すのは、少しためらわれる。――ん?

「でも、あの時話していたのは……そうだ、お前、その舞って子と会ったときに、誰か他にもう一人いなかったか?」

 俺は電話の時に話していたのは杣であったことを思い出し、舞と杣が一緒に行動していることから、杣がどこにいるか分からないかと、朔に質問してみた。

「うん、いたよ。杣っていう名前の――」

 杣、という名前を聞いた瞬間、俺は安堵とかすかな苛立ちを覚えながら、

「やっぱり、あいつか……!」

 溜息を吐きながら言う。楓のことで聞きたいこと、聞かなければならないことがあって、杣には会っておかなければならない。そんなことを考えていると、

「杣のこと、知っているんですか……?」

 朔が杣について食いついてきた。……彼女のことを、朔に話していいのか? 病院で杣と話していた朔の姿が思い浮かぶ。

「知っては、いるんだが……話すのは、ちょっと」

 ためらいながら朔の質問を拒否し、視線を地面に落とす。ふと、朔が見覚えのある靴を履いていることに気が付く。俺は話題を変えるためにも、ちょっとトーンを上げて話す。

「そういえば、その靴、俺の昔履いていた靴に似てるな。朔もその店に行ったことがあるのか?」

 一瞬質問に対する回答を拒否されるかと思ったが、朔は少し記憶を探るように考えた後、

「まぁ、一度だけ。それより、今日は楓さんは来てないの? いつも迅と一緒にいるイメージがあるんだけど」

 話を元に戻してしまった。俺は苦笑いをして、

「まぁ、ちょっとな」

 話を濁した。これはまた話をずらしても元に戻されてしまうだろうな。仕方なく俺は話を進めることにする。

「なぁ朔、杣がどこにいるか分かるか? お前の話を聞く限り舞って子と一緒にいるみたいだが……」

 なるべく杣と楓の説明を避けようとして、結論を急いでいると、

「楓さんは探さなくていいの?」

 朔がそんなことを聞いてきた。楓――は、今杣の人格が表れているから大丈夫だろう。大丈夫――なんだよな?

「あ、あいつは大丈夫だよ、まぁ、今日は大丈夫だから」

 俺は不安な気持ちを抑えられずに、そんなことを言った。朔が怪訝そうな顔をするのも無理ははなかった。

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