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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeα-
102/344

-Chapter45-

 杣が去って暫くすると、母さんが起きてくる。ほんの数時間しか寝ていないにもかかわらず普段と大差ない元気を振りまけるのは、すごいことだと思った。

「迅、どうしたの? すこし体調がすぐれないみたいだけど」

 どうやら俺の様子は少し体調が悪いように見えるらしい。決して身体的には健康そのものであったが、精神の状態が少し不安定になりつつあるのかもしれない。

「――母さん、これはもしも、っていうか架空の話なんだけど、聞いてくれる?」

 一人で悩みすぎると考えが歪んでいくような気がした俺は、母さんに杣と楓のことについて、架空の話を作って、相談をもちかけることにした。

「うーん、つまり、その二人の子のどちらかを選べって話なのかしら?」

 母さんは俺の話をまとめた後で質問する。俺は頷くと、

「ただ、どっちも選ぶってことは出来ないんだ。どっちも選べるなら誰だってどっちも選ぼうとするだろうし」

 少し訂正を加えた。母さんはできるならきっと両方をとれるような選択をするだろうから。母さんは少し考えた後、口を開く。

「ねぇ迅、その、病気を治してしまうと、裏の人格の子って、本当にいなくなってしまうのかしら?」

 と聞かれ、俺は頷こうとして、止まる。もしかしたら、病気が治って意識が飛ぶことがなくなっても、杣という人格はなくならないかもしれない。そういう考えはしたことがなかった。楓が意識を失うと杣が現れるということが、まるで前提のようになっていたから、気付けなかったのも無理はないかもしれないが。

「それは……よく分からない。ただ、本当にいなくなってしまうと仮定したらの話にしてほしい」

 ただ、それは運が良かったときの話だ。杣がいなくなる証拠もないが、杣がいなくならない確証もない。

「そうねぇ……どんなに頑張っても、どうやっても、二人の内一人しか選べないのだとしたら、私は表の人格の方を選ぶかしらね」

 もう少し悩むかと思っていたが、思ったより早く回答をしたので、俺は少し驚きながら、どうしてかと尋ねる。すると母さんは笑みを作って、

「どちらも同じくらい大切なのだとしたら、私はやっぱり、一緒にいた時間が長い方を選びたいわ。思い出を共有している分、私はその人のことよく知っているし、その分その人を大切にできると思うから」

 と言った。やっぱり母さんはすごいな、と感心する。正しい答えのないこの質問にも、自分なりに結論を出して答えを出している。そんな母さんの強さに、俺は素直に感銘を受けていた。

「ありがとう、母さん……」

 俺はお礼を言うと、自分の部屋に戻って支度をする。ゴル先輩が俺のベッドの上で寝ていたが、今は特に気にもならない。俺は充電しきった携帯電話を充電器から引き抜くと、一階で履き慣れた靴を履いて、外に出た。

 状況は少しばかり停滞していた。舞に電話を掛け、今どこにいるかを聞き出そうと思ったまでは良かったのだが、肝心の舞が電話に出てくれない。電話をかけている間に楓の家に寄ってみたが、帰ってきた様子も見られないし、このままでは手がかりが見つからず、暗中模索の状態になってしまう。これで四度目になる舞への電話のコールも、機械的なアナウンスの声が聞こえるだけで舞は出てこない。

「これじゃどうしようもないよなぁ……」

 俺は溜め息を吐き、独り言を呟きながら、とぼとぼと家に帰った。家に帰ると、ゴル先輩が困ったような顔で玄関の前に立っていた。

「どうしたんですか?」

 俺はそう聞いた後、すぐに聞いたことを後悔する。

「おお! 聞いてくれ迅よ! 某は空腹の身であったが故、迅の家の冷蔵庫に何らかの食料がないか探していたのだ! そしたら迅の母君に見つかり、泥棒扱いを受けてしまったのだ! 幸い某の必死の説得により通報は免れたが、家を追い出されてしまったのだ! 某にはもう当てがない! どうすればいいのだ!?」

 ゴル先輩はまるで待っていたかのように話し出す。なんだか自分が被害者であるような口ぶりではあるが、よくよく聞いてみるとゴル先輩が俺の家の冷蔵庫を漁ろうとして追い出されたという、ゴル先輩に責任があるとしか思えないような出来事であった。

「ゴル先輩……それはゴル先輩が悪いと思いますよ」

 俺が率直な感想を述べた瞬間、ゴル先輩は泣きながら俺に抱き着いてきた。

「お願いだ見捨てないでくれ! 某に責任があったかもしれない! しかしそれはひと夏の過ちというやつだ! 頼む、某を助けてくれ~!」

 大男が人に抱き着きながら助けを乞う状況なんて、そうそうないものだが。というか彼が抱き着いてくるせいで、俺の首が締められている。こ、このままでは窒息死してしまう危険性があるな。俺は必至で彼の腕を叩くと、

「分かった、助ける! だから一旦この腕を離してくれ!」

 ……俺の必死の言葉もむしろ逆効果になってしまったようで、ゴル先輩は俺が意識を失うまで俺を抱きしめ続けていた。

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