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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeα-
101/344

-Chapter44-

 突然聞こえた声に、俺は後ろを振り向く。そこには、黒髪のツインテールが一人立っていた。

「――杣」

 声をかけてみるものの、その先の言葉が出てこない。弥奈に言われたことが引っかかっているのか、どうしても言葉が紡げない。

「少しは顔を出しておかないと心配するかもしれない、なんて勝手に思っただけだけど、もしかしていらない心配だったかな?」

 杣は少し自嘲気味に笑う。その笑顔はいつもよりずっと儚げに見えた。

「そんなことない、ぞ。杣や楓に何かあったら、俺はこれからどうしたらいいかわからなくなる」

 その言葉は本気だった。ただ、楓の病気の話と、弥奈の虹魔法の話のせいで、俺のその意思は少し揺らいできていた。どちらかを犠牲にすれば、どちらかが助かるような今の状況では、両方を大事にすることができるのか、不安だった。

「そう。なら良かった。ところで、先日の襲撃の件……君の方の状況も聞かせてもらっていいかな?」

 そう聞かれ、俺はあの時の状況をなるべく細かく説明する。途中から、彼女の表情が険しくなった理由はよく分からなかった。

「そう、そういうことがあったんだね」

 先ほどより少しトーンが落ちたような声で、杣は呟く。

「なぁ、舞のところで何をしているんだ? 今日ゴル先輩が来たんだが、どうやら彼は自分の住んでいるところを追い出されたらしい。なにか危ないことでもしているのか?」

 これ以上俺の状況を説明すると杣がさらに落ち込んでしまいそうで、話題を変えてみることにする。少し話題の選択を間違った気もするが、見当違いなことを聞くのもおかしいし、たった今聞いたことは俺も少し知りたいことであるから、訂正する気はない。

「そうだね……よく分からない、というのが正しいかな。舞さんが私と一緒に行動したがっているから、私は仕方なく一緒にいるだけだし」

 どうやら、杣は明確な意図があって舞のところにいる訳ではないらしい。むしろそういった意思を持っているのは舞の方だ。

「その舞の考えていることは何か分からないか?」

 短い期間だったが舞と杣は一緒に行動をしていたのだから、何か手がかりを得ていそうなものだ。しかし杣は首を振り、

「ごめんなさい、分からないの。ただ、普段は質問ばかりされるね」

 と、言った。質問……そういえば、前舞から電話がかかってきたときも、怜という少女について聞かれたことがあったな。

「その質問っていうのは、怜についてのことか?」

 俺がそう言うと、杣は頷いた。

「彼女がしつこく聞いてくるから、つい口を滑らせてしまった情報もあるけど。それを聞いて何になるんだろうね」

 杣は少し後悔したような口調で言う、そんな彼女に、俺は、

「なぁ、なんで怜のことを知ってるんだ? 俺の知る限り、怜という少女は見ることが出来ないし、俺も彼女のことは朔から聞くまでは知らなかったんだぞ」

 疑問を口に出す。決してひっかけようとした訳ではなかったのだが、結果として杣を出し抜く形になってしまった。

「――そういえば、話してなかったね」

 杣は溜め息を吐くと、どうやら彼女が舞に話したらしい事実を口にした。

「――なるほど、怜の姿が見えず、その存在が認知できないのは、杣がそうさせたってことなのか」

 俺は彼女の話をゆっくりまとめる。驚くべき話なのだろうが、意外に平静を保っていられた。最近色々と妙な出来事に関わっていたせいで、耐性ができてしまったのかもしれない。

「で、その怜の存在を認知させなくした理由が――怜以外を救うため?」

 杣は頷く。この部分がいまいち理解できない。

「怜のことは俺もよく分からないから何とも言えないが、その存在が認知できてしまっている朔に悪影響はあまりないようが気がするんだがなぁ」

 俺がそんな言葉を漏らすと、杣は視線を窓の外に移して、

「そうだね……そういうところは、彼女らしいんだろうな」

 なんだかよく分からないことを呟く。どうやら怜と杣は知り合いらしい。

「この話を舞さんにしたら、近いうちにそれを解除するように言われたの。私ももういいかなって思ってたから、そうすることにした」

 舞に、怜にかかったもの――「呪い」とかいうらしい――を解除するように言われた、か。舞の意図が気になるが、それは彼女のみぞ知る、だろうな。

「――そうだ、舞のことを監視したらどうだ? 朔のことを監視した時みたいに、何か情報を得られるかもしれない」

 俺は咄嗟に思いついたアイデアを述べてみる。しかし杣は首を振って、

「やってみたけど、駄目だった。すぐにばれるて、彼女の炎で影を分断され、追跡できなくなってしまうから」

 と言った。その後、彼女はリビングの外に出て、

「そろそろ戻るね。また数日後、やってくると思うから」

 そう言い残して去って行った。空から上る太陽が、なんだかいつもより暗く見えた気がした。

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