第9話 オールドタイプ
「き、キリュウさん!」
セイカの前に現れたのはキリュウだった。
長い金髪を揺らすこの男こそ、現世界チャンピオンでカスタムソルジャー界の頂点に立つ男である。
「ヤマトから話は聞いている。今日から俺がお前を指導することになる。俺のことは、覚えているか?」
「うん、もちろん」
キリュウはヤマトがコスモギャラクシーを託してくれた時一緒にいて、それが無くても世界チャンピオンのことを忘れるはずがない。
「俺がお前を指導する理由は他でもない。ヤマトや天海レインの様な連中をお前が倒すには俺が教えるのが一番効果的だからだ」
「それは、一体どういうことだ……ですか」
セイカの疑問にヤマトがいち早く答えた。
「僕や天海レインちゃんに何か、特殊な力があるのは分かるよね?」
「まぁ、何となく」
「その正体がGサイト。大まかに言うと未来を予知する力だね。この力を使うことで戦闘を優位に進める事が出来るんだ」
セイカは突拍子もない話に何とか付いていく。信じられる話ではないが、ヤマトとキリュウが嘘を吐くとは思えない。
キリュウが話を続ける。
「そんな連中を倒すには、Gサイト無しで連中を倒せるやつ……俺のような奴が教える方がお前には合っているんだ」
能力を持たないセイカの特訓には、同じく能力のないキリュウの方がいいと言う話だろう。
ヤマトが補足を加える。
「キリュウさんもただの一般人って訳じゃないよ。キリュウさんみたいに多くの経験と正確な操作を極めるとGサイトに対抗出来るし……Gサイトの予知そのものを無効化出来ることもある」
「もしかしたらGサイトに対する抵抗力みたいなものがあるのかもな。それは今考えても仕方ないから、世界大会の常連みたいに、Gサイトに対抗出来る実力を身につけるしかない」
そう言ってキリュウは、PCDを構える。セイカもPCDを構えて身構える。
一瞬の沈黙の後、バトルが始まった。
「コスモギャラクシー!」
「ジ・アースパラディン!」
二人の機体が神殿ジオラマに降り立った。
神殿ジオラマは緑の荒れた大地と古びた神殿が特徴のフィールドだ。
キリュウの機体、ジ・アースパラディンの放つ威圧感にセイカは警戒する。
ジ・アースパラディンは一瞬でコスモギャラクシーの目の前に移動し、右手に持っている剣を振るう。
コスモギャラクシーはなんとかかわすと、反撃にビームブーメランを振るう。左手に持っている盾で簡単に防がれるが、すぐに距離を取って分割したビームブーメランを回転させながらビームを発射する。
螺旋を描くようにして12本のビームがジ・アースパラディンに向かう。これなら盾を使っても数発は命中する軌道だ。
しかし、ジ・アースパラディンは目にも止まらぬ速さで剣を振るい、全てのビームを叩き斬った。
「っ、速い」
「コレぐらいは当然だ。お前に必要なのは、他を圧倒するスピードと正確な操作だからな」
再び接近したジ・アースパラディンの猛攻を、コスモギャラクシーはなんとかしのいでいく。
しかし、一旦退いた後にコスモギャラクシーの背後に回り込んだジ・アースパラディンの一撃にコスモギャラクシーはガードごと吹っ飛ばされる。
「甘い。スピードからパワー重視に切り替えたことを見極めろ!」
「はい!」
コスモギャラクシーはビームブーメランを連結させると、ジ・アースパラディンに正面から挑んだ。
双方の武器が激しくぶつかり合い、火花が飛び交う攻防が続く。
その最中、ジ・アースパラディンが隙を見て一歩交代する。
今度は先に仕掛けようとしたコスモギャラクシーの手首を、ジ・アースパラディンの一瞬の攻撃が襲う。
ビームブーメランを落としてしまい、動きが止まったコスモギャラクシーを、ジ・アースパラディンは斬り上げてふっ飛ばした。
「今度は俺の動きを警戒し過ぎて自分の操作が疎かになっている。どんな時でも自分の思い通りに動かせるようにしろ」
「っは、はい」
ジ・アースパラディンはコスモギャラクシーに背を向ける。
「武器を拾え。続けるぞ」
コスモギャラクシーが武器を拾うまで待つつもりだろう。すぐに武器を拾おうと地面に手を伸ばす。
その瞬間、コスモギャラクシーはビームを発射しながら地面をぶん殴り、エネルギーの余波でビームブーメランをジ・アースパラディン目掛けて吹っ飛ばす。
咄嗟に剣で弾くものの、ジ・アースパラディンの剣もビームブーメランと一緒に飛んでいってしまう。
コスモギャラクシーはすぐにジ・アースパラディンに接近し、ビームを手に纏わせながら殴りかかる。
ジ・アースパラディンは盾を回転させてコスモギャラクシーを後方へ吹っ飛ばす。
そして迫り来るジ・アースパラディンに対し、コスモギャラクシーは側にあるジ・アースパラディンの剣を拾って振るった。
しかし、その剣がジ・アースパラディンに届く一寸前に、コスモギャラクシーの右肩をジ・アースパラディンの盾が突き刺していた。
「……一旦メンテナンスにするか」
「……はい」
セイカは悔しそうに頷いた。あれだけの奇襲を仕掛けて通用しなかったのが悔しいのだろう。
そんなセイカにキリュウが声を掛ける。
「さっきのはよかったぞ。お前の一番の武器はその柔軟な発想かもしれないな」
「でも、通用しなかった」
「いや、自分の長所を自覚することができたなら上等だ。今度はそれをどう生かすか考えて動け」
そしてコスモギャラクシーのメンテナンスが終わり、再びバトルが始まった。
コスモギャラクシーはビームブーメランを手に取り、ジ・アースパラディンに攻撃する。
剣とブーメランがぶつかり合い、その度に火花が飛び交う。
セイカはさっき言われた事を考えていた。
自分の長所。それを生かす戦いとはどうすれば出来るのか。
そんなことを考えていると、隙を突かれて脚を斬りつけられる。
「ヤバい!」
セイカは必死に考える。どうすればこの状況を脱出できるか。
ジ・アースパラディンの刃がコスモギャラクシーを襲う。
その瞬間、両手からビームを発射したコスモギャラクシーが、反動で思いっきり後退した。
勢いが付きすぎて柱に激突してしまうものの、セイカは今確かに何かを掴んだと実感した。
ビームブーメランを分割すると両腕に装着して、ブースターとして加速する。そして、途中で手のひらからビームを発射して軌道を横に変え、それを何度も繰り返して予測出来ない動きをする。
ギリギリ見切ったジ・アースパラディンは剣で受け止めるも、一瞬で背後に回り込んだコスモギャラクシーが、右手に装着したビームブーメランでジ・アースパラディンを斬りつけた。
「やった」
セイカは思わず呟いた。今まで一撃も当てられなかったのに、上手くいった。
それどころか、キリュウと互角に戦えている感じすらあった。
「……どうやら、掴んだようだな」
「ありがとうございます!」
キリュウははしゃぐセイカを見て思わず微笑んだ。そして内心で、密かに驚いていた。
(奇抜な発想だけじゃない。すぐにあのトリッキーな移動方法をコントロールした技術……間違いなく確かな実力だ)
「さあ、続けるぞ!」
「はい!」
小さなファイターの未来に期待しながら、キリュウは特訓を続けた。




