りんご
三題噺もどき―はっぴゃくななじゅうろく。
昨日から変わらず雨が降っている。
昨日までの勢いはない……傘がいるかどうか迷うくらいの雨だ。
雨が降っていれば傘が必要なのは当たり前なんだけど、こう、小雨程度だといらないかなと思うことがあると思う。のだけど。
「……」
この程度だったら私は傘をささないし、合羽も着ない。
合羽なんて着なければ着ない方がいいんだから。
あんなの暑くて蒸れて、結局スカートが濡れるだけなんだから。
「……」
しかしその雨が降る外では、黄色傘が並んでいる。
隣の小学生が下校時間を迎えたらしい。
傘の隙間から見えるランドセルも、皆、黄色に見える。1年生だからだろう。
他の学校はどうなのかは知らないが、この辺りの小学校の1年生はランドセルにつけるカバーが配られるので、よくわかる。
「……」
まだ小さな身長で、大きな傘をさして歩いているのは、少し大変そうだ。雨が降るようになって何度か見かけた景色だが、その度に歩きずらそうだなと思ってしまう。
時々、その傘の横を走る子供もいるが。
元気で良いと思うが、転げないか少しヒヤリとしてしまう。
自分の事でもないのに、ちょっと不安になるのはなんでだろうな。
「……」
我が校の校門の前では、何やら立ち止まっている子供たちがいる。
何か虫でもいたんだろうかと思ったが、彼らの視線は足音に向かっているようだ。
その足元には、色とりどりのレインブーツが並んでいる。自慢でもしているのか、見せ合いでもしているのか……。
小学1年生と言えど、普段と違う靴を履くのは楽しんだろうか。
「……」
歳を重ねるにつれて、そういう感情はなくなってしまったからな。
なんというか、そもそもファッションにも興味がないから、大抵スニーカーしか履かないし、夏場はサンダル1個で事足りるから。
まぁ、たまにはヒールを履いてみたりもするが、歩き疲れて嫌になるからあまり履かない。
「……」
その点、あの子は、ファッションには詳しい。
詳しいと言うか、なんだろう、私が知らないだけなのか、色々と知っている。
私も最低限の知識はあるが、服の種類とか模様の名前とか、知らないものも知っている。
興味があるのかどうかは分からない所だけど。
「……」
たまに見せてくれるのだけど、可愛いものから中性的なものまで色んなジャンルのものを見せてくれる。どれも、あの子が着てみたいと思う物らしいが、普段の格好を見たことがないので分からない所ではある。
「……」
この間は、アクセサリーのサイトを見せてくれたのだけど。
向日葵のだろうかと思ったら、今度はりんごがモチーフのアクセサリーを売っているサイトだったらしい。カラフルなりんごが並び、ピアスやネックレスなど様々な種類があった。
揺れるりんごも透明感のあるものから、マットなものまであって、かなり種類が豊富だと言うことは分かった。
「……」
そのサイトを見ながら、これが可愛い、これも可愛いと。
次々に見せながら、楽しそうに。
これは似合いそう、これも似合いそう、これは推しに似合いそう。とか。
楽しそうで、嬉しそうで、可愛かった。
「……」
そういえば、昨日上げた飴もりんご味だった。
そういう気分だったのかな。
「――ちゃん」
「ぁ、うん」
ぼうっとしていて忘れていたが。
ただいまは授業中で、外を眺めながら、昨日のことを思い出している時間ではない。
前から紙が流れてきていたらしく、受け取らずにいたのを不審に思われたようだ。申し訳ない。
「……」
そそくさと紙を受け取り、机の上に置く。
私は今、一番後ろの席に座っているので、この先に回す人はいない。
見れば、これから進めていく課題のなにがしかが書かれているようだった。
英語の授業って嫌いなんだよな……。
「……」
まぁ、とりあえずは授業に意識を向けるとしよう。
興味がなくても、授業は受けなくてはいけないから。
お題:りんご・ブーツ・雨




