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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

華々しさ極まれり

作者: shun
掲載日:2025/10/24

他の人たちとは違う感性を持った「祝」と「優喜」の奇怪な物語。どこまでも違う感性を持っている「祝」はその物語の末に何を思うのか。

人によって美しいと、華やかしいと思うものは違うだろう。これは感性の違いというやつである。

それゆえ幼い頃は、「これはかっこいいのになぜそう思うのか」とか、「ここはこうだろう」とか意見が別れることに対して疑問や、少々のストレスを感じることもある。

しかし、それは至ってごく普通なことであって人生でそれを感じないという人はいないに等しい。

大人になるにつれて、他人に感性とかを理解し、尊重し、尊敬する者も現れる。

ただ、その感性が理解されないまま成長しきる、または成長中の者もいる。


(はじめ)ぇ。」

祝の友達が階段の上からそう呼ぶ。友達と言える関係かどうかは分からないが、祝の人間関係の中で最も親しい関係にある者である。家族は母親だけ。

祝の人生で特に目立っているのは母親と祝の友達のみである。

「おま、いっつもそこで食うよな。分かりやすくて助かるわ。」

「お前」、と言い切るより「おま」で止めるのが癪に障る。

決まって彼は廊下の奥、階段12段目で弁当を食べる。

ここの中学校では珍しく、そこら辺の高校と同じく弁当制らしい。

そして特に理由がある訳では無いが、ここはよく階段を飛ばし、転んでしまう人が多数いるという。

「縁起悪いぜ、ここ。転んで飯落としたらたまったもんじゃねえ。」

ここまでで気がかりなのは彼以外ここでは誰も喋っておらず、彼はずっと『独り言』を言っているのである。

「優喜。ここはよく転ぶらしい、だから転ぶまで通ってる。」

優喜の『独り言』を救ってあげる。

優喜の容姿の特徴としては、少しの筋肉質。ガリマッチョと標準体型の間だ。

人間関係の築きが上手く、人と関わるのが好きらしい。俺のようなやつは特に。俺の嫌いな言葉カテゴリに入る『陽キャ』というやつだ。

次の狙いは俺と言わんばかりに。主人にしつこく懐いた犬のように積極的に関わるようになったのは今から10か月前ほど。中三の4月だ。

クラス替えが行われ、多くの仮面で仮の『親しい関係』を築き上げてきた友達とは幸か不幸か離れ離れ。

俺としては厄介者が減ったから喜ぶべきだろうが、その関係を築くのも一苦労。またここで生き残るために関係を築き上げるのはストレスが溜まるというもの。

中一や中二の頃は俺から皆に合わせて話題を変えたり、その人の好きな話題、知っているネタ、全て把握し笑いを獲得し、関係を築く。

正直言ってかなり面倒、非常に。だから中三になったら、『すごく頑張ってる受験生』を装い、1人になる時間を増やした。

優喜は優喜から話しかけてきたため、仮面なぞいらない。

「通うってお前…。なんかの義務みたいな言い方だな?」

今まで自分一人で喋っていたことを今更恥ずかしがるように、はにかみながら優喜は言った。

優喜は13段目に座った。

この階段は13段、次が折り返しになっており、突き当たりの壁上部の窓から差し掛かる光が、優喜を覆い、見にくくなる。

「よっこいしょ……。な。お前いつも他のクラスの奴とは仲良くするけど、なんでこのクラスでは話さねんだ?」

白米を頬張りながら聞き取りずらい発音で話し始めた。

「面白くなくね?このクラスの奴ぁ偽モンしかいねえよ、分かるだろ?優喜もよ。」

共感を求めてはいないが、優喜は体ごと揺するように何回も頷いた。

「優喜が共感してどうすんだよ…。」

「別にいいだろ。お前の言ってること、大体わかるぜ。だってお前、他の人と感性ってやつ?違うもんなぁ。」

10か月ほどの関係で、人の感性を理解する優喜に驚きを隠せなかった。

やつにそんな事ができるとは。

「へぇぇー分かるんだ。正直驚いたよ。」

「そ?10か月も話してりゃあ当然さ。」

自慢げに話す優喜。調子に乗らせてしまったことを後々後悔すると理解し、響かない程度の大きい声で優喜の言葉を遮る。

「ま、俺くら――」

「所でさぁ!……。いつからそのことに気づいた?感性が違うなって。」

「……言うて最近だけど。」

上手く調子をリセットできたようでなにより。気持ち下がった気もする。一息置いて話す。

「なるほどね。俺と似ているところがあると期待して明かそう、俺は『美しさ』を求めるのが好きなんだ。このクラスの奴らならこの言葉を聞いただけで『狂った奴』かと思うだろうが、優喜は違うだろ?」

「へーェ、分かるんダ。正直驚いたヨ。」

「真似すんな。」

お互い小さい笑いが交じる。こういう本心で語り合える者、意外性が高い者と相性がいいんだと、その時気づいた。


祝はとうに食べ終え、優喜は8割食べ終えている。人通りが少ないこの階段は、ちょっとした沈黙でもかなりの静けさに少しの悲しみが混じる。

「でさ、この場所って階段だよな?そこで転ぶってことはさ、死んだやつもいるんじゃねーの?危ないし。」

少し前に聞いた話によると、ここの階段は『絶対』ともいえるほど、死者が出ないらしい。

はて、その『絶対』はどこへ行ったのやら。

「残念ながらいないらしいよ、大体はかすり傷とか重症とからしい。」

「残念ではねぇけどよ…。重症はあるんだな、まぁまぁ高いところなのに死者が出ねえのはちと不思議だが。」

気づけば、弁当の中身は空になっていたらしい。急いで食べたのか知らないが、まだ口には多く残っていると見受けられる。

窓からの優喜を覆う光が少しズレて、見やすくなった。彼の表情が明らかに。

少しニヤリとした顔で口の中のものを飲み込んでから彼は言った。

「本当かどうか、確かめに行こうぜ。死んだやつがいねえかよ。」

アテはある。この学校では『誰も』入ったことの無い扉が学校の『隅』にあるらしい。そういう噂は信じないタチなのが大輝だが、なぜか惹かれるものがあった。

「でも、あそこは所詮ただの『扉』だろ?その中に何があるのかとか分からないのに、なぜ確かめる方法になる。手がかりがあるのか?それとも、中にでも入ったのか?」

「……」

なぜ黙る?と単純に疑問に思った。しかし、次の瞬間なぜか質問していた。

「……おい、まさか中に?どうやって?いつ?」

その時思ったことをまんま質問していた。そりゃあそうだろう。もし手がかりがあるなら、最初の時点で話すか、質問した後に黙らない。優喜はタメを作って話すというキャラでもない。

「どうやるもなにも、力業だよ。俺、こう見えて力あるんだぜ。まぁ開けた時は、バン!!!って大きい音はなったけど。ちょうどここらの時間かな、運良く人が周りにいなかったから。」

「マジかよ…。」

人は見かけによらずというが、時に人は表面上の中身にもよらないと、人生の教訓にしておいた。

「にしてもさぁ、行くとしたらいつなんだよ。少し興味が湧いてきた。」

もしかしたら俺の興味があるものとか、それこそ『美しい』ものがあるかと少し期待してしまった。

()()()()()()()()()のかもしれない。

見上げて優喜の顔を見ると背筋がゾッとした。

「………もしかしてだが。今?」

優喜はまた。体ごと揺らすように何度も頷き、言った。

「ちょうどこの時間と言ったよな。いないんだよ。この時間帯はよ――」



「――時間はあるけどさぁ……。」

先程食べていた階段付近に、『扉』はあった。

『扉』の正面に立つと、右に続く廊下。左にそびえ立つ壁、後ろにも同じ物。

何かに対する逃げ場が限られている感じがするのは、気のせいなのか。

「1回開けたから、緩くなってるかもな。さ、見てみよーぜ。」

右手で自然と十字を切っていた。

大きい音に備え、中腰になっているつもりだったが。気づいたらしゃがみこんでいたようだった。

「おい、開いたぞ……。意外と静かに……。」

少し声が震えている優喜の声を聞いて、尚更怖くなった。興味とかそういうのを差し置いて、本能が逃げたがっているのを感じた。

こんなでかい校舎にこれほど小さい『穴』があるのが不思議に思えるくらいの、非常に嫌な違和感だった。

その大きさ。人で例えて180cm、65kgの人がピッタリ入るくらいのほどだった。

「俺がちょうど入るか入らないかってとこ……。」

迷わず入っていった優喜にまたも驚かされる。

その『穴』は先が見えず、光さえも入りたくないような感じがした。きっとだが、中はそうそう広くないと見受けられる。

「そういえば、開けただけで入ってはいないのか?」

「当たり前だろ。俺が先に入っちゃお前と楽しめないだろ。スリルを。」

「初めっから俺と一緒に入るつもりだったのかよ。」

聞いたのを少々後悔しながら、優喜の後を追う。

「うーん…。やっぱりそうそう広くはねえな。教室を半分にしたような広さだ。大して何もなさそうだし――」

優喜がほんの少しの光を頼りに、左の壁を伝っていた時だった。

「ん?これお前?冷たくね?」

「………いや。俺は優喜の『後』を追ってたけど……。」

1秒の沈黙の後、脊椎から命令が下された。『走れ』と。

「……ぁぁぁぁああっッ!!!」

命令が下された後に、叫んでいた。

何が起きたのかは分からない。優喜にしか。

しかし、優喜が言った冷たい『何か』が『穴』に住み着いていたのだろう。



あっという間のことだった。体感10秒ほどだ。その間に優喜が感じ取ったことは、祝はどう感じるのだろうか。

走っている途中、決して振り返りはしなかった。光が強い方へと、そういうプログラムがされたようだった。

なぜかクラスの『偽モン』達は、『優喜』のことを知らないようだった。まるで元から居なかったかのように。机も、椅子すらもなかった。

「あそこには『絶対』があった。階段で転んで死ぬはずだった『絶対』が。そりゃあそうだよな。いっつもこっちだけがプラスなんてことは『絶対』ないんだから……。」

その溜まっていた『絶対』が『優喜』に降りかかったと思うと、その対象は俺でも良かったんじゃないかと、つくづく思う。



一日の途中に全てを詰め込まれたような感じがして、少しやるせなさを感じた後、物足りなさ、絶望さえも感じた。

ふと、祝は帰り道に紅に染まったグロテスクな空と、華のような模様の雲を見上げた。


「華々しさ極まれり」

私が思う1番怖い人を想像して書いてみました。

読み方によっては意味が変わったりします。

なにか間違いがあれば教えていただけると嬉しいです。

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