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運命の遍歴 ルミナス学園 数え切れぬ周回の果てに  作者: 南蛇井


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物語そのものの色を塗り替えていく

白の空間が、不気味な脈動と共に揺れていた。

崩壊のひびが空間を走り、ノイズのようなざらつきが視界をかき乱す。

その中心に――二つの裂け目が浮かび上がる。

一方は冷たい光を放ち、淡々とした規則性を孕んでいた。覗き込めば、そこには玉座の間。王太子が立ち、群衆の視線が冷たく突き刺さる断罪の舞台。見慣れすぎたはずの光景が、再び口を開いて待ち構えている。

もう一方は、形を定めぬ眩い裂け目。そこからは何も見えない。光が強すぎて、奥の景色さえ映し出されない。ただ確かに伝わる――そこには「決まっていない」可能性が渦巻いているという感触。

二つの裂け目は鼓動のように光を脈打ち、白の空間全体を震わせる。

まるで、この世界そのものが選択を迫っているかのように。

セシリアとリリアナは、立ち尽くした。

片方には「閉じた循環」。もう片方には「未知の外」。

運命か、自由か――。

空間を満たす緊張は、呼吸すら奪うほどに張り詰めていた。

二人の胸中に、言葉にならない葛藤が渦巻いていた。

セシリアは冷たい光を放つ裂け目を見つめる。

そこに覗く玉座の間、断罪の舞台。群衆の嘲笑と冷たい視線。

(……また、あの場所へ戻れば。私は必ず孤立して、破滅を迎える。これまで何度もそうだった。……それが“正しい物語”だと言うのなら……)

唇を噛み、胸の奥が締めつけられる。

(だとしても……もう一人きりで背負う世界には戻りたくない。あの孤独だけは、二度と――)

一方で、リリアナは眩すぎて覗けない“未知の外”に目を向ける。

光の渦は、彼女を歓迎しているのか、それとも拒んでいるのかもわからない。

(……あそこに行けば、私はもう“ヒロイン”じゃなくなるかもしれない。誰からも選ばれず、誰の中心にもなれない……そんな未来なんて、怖い)

しかし同時に、心の奥で小さな声が囁く。

(……でも、それこそが――私が本当に望んでいたことなんじゃないの? 誰かの役割じゃなく、ただの“私”として生きること……!)

恐れと希望が交錯し、二人の瞳に複雑な光が宿る。

そして、その視線は自然と、互いの方へと向かっていった。

白の空間に脈打つ光が、二人の輪郭を際立たせていた。

冷たい光と眩い光、その狭間で揺れる中――セシリアとリリアナは、ふと視線を交わす。

言葉はなかった。ただ、長い一瞬の沈黙だけが二人を繋いでいた。

けれどその沈黙は、どんな言葉よりも雄弁だった。

セシリアの瞳に映ったのは、リリアナの中で芽生えた“恐れよりも希望を選ぶ”という決意。

そしてリリアナの瞳には、セシリアが抱える“孤独ではなく共に進もうとする強さ”が確かに宿っていた。

二人の視線は絡み合い、揺らぎながらもひとつの結論へと収束していく。

それは――どちらか一人ではなく、二人で選ぶ未来。

先に進むのはどちらか――そんな迷いは一切なかった。

むしろ、互いの鼓動が重なり合うように、自然と同時にその瞬間を迎える。

セシリアとリリアナは、まるで事前に合図を交わしていたかのように、息を合わせて一歩を踏み出した。

選んだのは、“未知の外”。

その瞬間、白の空間が軋む音を立て、硬質な壁のように広がっていた無垢の世界に、蜘蛛の巣のようなひび割れが奔る。

音のないはずの空間に、崩壊の震動だけが確かな現実として響きわたり、二人を包み込んだ。

背後で“閉じた循環”の裂け目が悲鳴を上げるように軋み、王太子の声も、観衆のざわめきも、玉座の影も――全てが幻の硝子片となって砕け散った。

散りゆく残滓は音もなく宙を漂い、やがて虚無へと吸い込まれていく。

その対極に、“未知の外”の裂け目は脈打つごとに光を増し、裂け目という枠すら飲み込みながら奔流となって広がった。

押し寄せるまばゆさは、熱でも冷たさでもなく、ただ「何も決まっていない」可能性の奔流。

セシリアとリリアナの輪郭はその光に溶け、影も形も解き放たれる。

――次に目を開けるとき、彼女たちはもう“物語”の中にはいない。

「選んだのは――未知。

予定調和を拒み、誰の台本にも縛られぬ未来。

二人の決断はただの一歩に過ぎなかった。だがその一歩は、繰り返しを律してきた舞台を揺るがし、物語そのものの色を塗り替えていく。

破滅の令嬢も、選ばれるヒロインも存在しない。そこにあるのは――彼女たち自身が選ぶ“新しい物語”だった。」


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