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運命の遍歴 ルミナス学園 数え切れぬ周回の果てに  作者: 南蛇井


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どちらの未来を歩むのか

白の空間を満たしていた亀裂とノイズが、次第にひとつの形を結び始めた。

――それは、二筋の裂け目。

ひとつは冷たい光を帯び、まるで氷の刃のように鋭く輝く。そこから覗くのは、見慣れた光景だった。豪奢な玉座の間。王太子とその取り巻き。観客席に並ぶ人々。繰り返し繰り返し繰り返し――断罪劇の舞台へと戻る道。

もうひとつは、形を定めぬ光の揺らぎ。眩しすぎて奥の様子は見えない。だが確かに伝わってくる。そこには何も決まっていない、脚本も役割も存在しない。誰も先を知らぬ、未知そのものが待つ扉。

セシリアとリリアナは無意識のうちに呼吸を止め、裂け目の輝きに見入っていた。

二つの未来が、彼女たちの眼前に並び立っていた。

白の空間を震わせるように、再びあの低い声が響いた。

ノイズを混じえ、ところどころ軋む音を伴いながらも、その言葉は確かに二人の心へ届く。

「――物語は収束を求める」

冷たい響きが、閉じた裂け目を指し示すかのように揺れる。

「お前たちが望むなら、再び循環へ戻そう。断罪の舞台は繰り返され、物語は何度でも収束点を描くだろう」

続いて、揺らぐもう一方の裂け目から、眩い光が弾けた。

「だが……お前たちが外へ歩むなら……予定調和を捨て、未だ誰も踏み入れぬ“物語の外”へ至る」

声は断定ではなく、選択を促すだけ。

ただ一つだけ確かに告げていた――

どちらを選ぼうと、「律」としての存在は続く。だが、もし“外”を選ぶなら、二人は筋書きの保証を失い、未知そのものを背負うことになるのだ、と。

セシリアは唇を噛み、目の前に広がる二つの裂け目を見据えた。

胸の奥に、鋭い痛みが走る。

(……循環へ戻れば、また私は断罪される。破滅の役を演じ続ける……。けれど、それが“正しい物語”なのだとしたら……?)

逃れられない破滅の影と、役割に縛られてきた日々。

恐怖と諦念が、心の中でせめぎ合う。

一方でリリアナは震える指先を見下ろしながら、強い鼓動を感じていた。

閉じた循環を覗けば、また“選ばれるヒロイン”としての立場に戻る。だが、もう一つの裂け目は――未知の輝き。

(未知の外……そこでは、私は“ヒロイン”じゃなくてもいいの……?)

選ばれることに縛られ、愛も幸福も与えられるだけの存在だった過去。

けれど“誰のものでもない未来”が、今、手を伸ばせば届く位置にある。

恐ろしい。

だが、その恐怖は同時に――心を強く惹きつける輝きにもなっていた。

二つの裂け目は、まるで心臓の鼓動のように脈打ちながら光を放っていた。

一方は冷たく硬質な輝きで、何度も見慣れた舞台――断罪の玉座の間を映し出す。

もう一方は眩しく形を持たず、ただ“未知”そのものを象徴している。

セシリアが一歩踏み出そうとすれば、循環の裂け目が微かに脈打ち、空間が冷たく軋む。

リリアナが視線を外の輝きに向ければ、光は揺らめき、白の空間が柔らかく震える。

どちらを選ぶかによって、この場そのものが揺らぎ、運命の行方を決めようとしていた。

二人は同時に互いへと顔を向ける。

言葉は交わさない――だが視線の奥で、恐れも、迷いも、希望も、すべてが重なり合う。

その瞬間、言葉を超えた理解が生まれた。

「どちらの未来を歩むのか」――二人は、共に選ぶのだと。

「収束か、未知か。

選択肢は二つに見える。

だが――実際にはただ一つしかなかった。

彼女たちが望んだのは、“役割”でも“筋書き”でもない。

誰の手にも縛られず、ただ自らの意志で歩む未来。

その答えだけが、確かにここに存在していた。」


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