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燃え〈ルナ〉よ剣‼️~コミュ障少女。ぼっち生活を死守するために、お弁当と燃える剣で冒険者たちを守ります~  作者: みちのあかり
街歩きと教会

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第35話 孤児院での調理

 神父様はギルド長とお話があるため、私は孤児の女の子から案内を受けた。

 女の子はあんまり話さない。

 わたしは全然話さない。


 でも特に困ることはない。だってこれがいつもの私だし。


(それでいいんかい!)


 いいんです。お料理作ってとっとと逃げ去るんだから。


(あれだけかっこよく言えたのに……)


 忘れて! あの時は変だったのよ。


(おぼえてまっせ。「私、ダンジョンの前でお弁当を売っている、ルツィナです。その……、孤児院の食事、夕食だけでも作らせていただけませんか!」「いいんです! ボランティア活動として、食事を作らせてください!」「お金……寄付できるくらい、あります。おいしい……食事、食べて、もらい……たい、の、です」)


 うわ~! 再現しないで~! 恥ずかしい!


(これを俗に、黒歴史と言うのだよ。うははははは)


「ここです」


 はっ、って、ここって軒先?


「外、だよね」

「ええ。煙が出るから、外で煮ています」


 調理室、ないんだ。


(コンロないみたいね)


 そうだね。コンロはそれなりに高いし、持っていない家庭も多いよ。


(ふうん。ルツィナはよく持っているね)


 お父さんが頑張ったからだよ。私じゃ無理。

 一応、仕事だからね。冬場のストーブとかは薪だし。


 さて、調理場がないなら、普段どんな感じで調理しているんだろう? 聞いてみましょう。


「あ、あの……」

「はい」


「普段、は……どんな料理を、作って、いる、の?」


「料理、ですか? 大鍋でとにかく煮れば柔らかくなるから、それを鍋の中で潰して、取り分けています」


 えっ、それ料理?


「煮てしまえば食べられますから」


 それ、料理じゃない! まって、包丁は?


「包丁は、ある?」


「包丁? ないですよ。あ、ハサミなら使えます。たまにお肉がくると、小さく切り刻んで入れるんです」


 食べられる。確かに食べることはできるけど、それは料理とは認めない!

 料理人として、許すことはできない。


「何人! 何食分作ればいいの!」

「え? ええと、10人分。あっ、神父様もいれて11人分です」


 神父様もそんな料理を食べているの? そうか、そうなのか。作り甲斐がありそうね。


 この鍋なら20人分は行ける。フライパンもある。パンはたくさん買ってきたから、また買いに行けばいい。できる。


(うわっ、いつものルツィナっぽくない!)


 ルリなに? 料理に集中するから少し黙っててね。


「机、なにか作業台になるようなもの持ってきて」


 女の子が他の孤児たちに机を持ってこさせた。


「薪を用意して。鍋に水も。そうね、半分くらいでいいわ」


 収納からまな板と包丁、それに布巾を出した。

 何も言っていないのに、女の子が桶に水を入れて持ってきてくれた。


 何を作ろうか。いきなり贅沢なのはやめた方がいいよね。


 朝取ったカボチャを一個。これを包丁で切りましょう。


 あれ? 固いはずのかぼちゃが、するりと切れた。


(レベル上がってるからね。カボチャ切るくらいの腕力はついたんじゃない?)


 なるほど。力が強くなるって便利。


 孤児たちが集まって私の事を見ています。


「何してるの?」

「あ、硬いやつだ」

「食べられないやつ」


 ふふふ。おいしくなるから。驚くよ。


 種は取り除いて、サイコロ(ダイス)状に切ります。

 そのまま鍋に入れて煮込んでもらいましょう。


 と、その前に浄化の魔法を。水は何が入っているかわからないから注意するに越したことはありません。


「うわっ、きれい」


 少し光るからね。不思議だよね。


 早めに火を入れていたから、水は温かくなっています。

 今度は鶏肉を出して、切っていきます。


「「「お肉だ!」」」


 子供たちのテンションが上がっています。これもお鍋に入れましょう。


 火が通ったらアクを掬って。


「何しているんでしょうか?」


 女の子が私に聞きます。


「アクを掬っているの。こうするとおいしくなるのよ」


 女の子は、「そうなんですか」と興味深く私の手元を覗き込んできた。


 いい具合に煮えてきました。さて。

 ミルクを取り出し、鍋に入れましょう。


「ミルクだ!」

「飲めるの?」

「たくさんある」


 私がミルクをお鍋に入れると、「「「うわ~!」」」「「「なにするんだ!」」」と叫び声が上がりました。


「あの、ミルクは飲むものです。なんでそのようなことを」


 女の子が悲しそうに言いました。


「そうだ! もったいない」

「飲みたかった!」


 もしかして、料理に使うって知らないの?

 鍋をかき混ぜながら、私は言いました。


「こうするとおいしくなるの。信じて」


 ミルクの香りが立ち始め、甘い匂いが広がります。

 子供たちは鼻をぴくぴくさせながら、鍋を覗き込みます。


「おいしそう」

「僕たち、食べられるのかな」


 出来上がったらあげるから。


 バターを少々。塩少々。砂糖少々。小麦粉を水で溶いて入れると冷めにくくなるから、それも混ぜ合わせて、と。


 焦げ付かないように火を弱め、混ぜるように指示をした。みんなやりたがっているから、変わりばんこにやってもらうことに。

 その間にもう一品作りましょう。


 玉ねぎを6個みじん切りに。たいへんなはずが、あっという間に。涙も出ない?


(細胞を壊さずに切ると、目に刺激を起こす硫化アリルが出なくなるから。器用さのレベルが上がったからじゃない?)


 硫化アリル? なんでしょうか? とにかく結果オーライです。


 玉ねぎを炒め、飴色に色づく手前で一度火から下ろします。

 豚肉をひき肉にし、一緒に炒めましょう。


 ああ。お醤油かお味噌があれば、肉そぼろができるのに。


(仕方ないじゃん。醤油も味噌も加工品なんだから。収納に入らないでしょう。バターや砂糖や小麦粉は買ってきたからカバンに入っているけど、それだって収納は避けてカバンに入れているんでしょう)


 そうなのです。カボチャや玉ねぎ、生肉は収納できても、バターや小麦粉は収納に入れると味がおかしくなるのです。半日くらいなら大した変化がないので、手に余るものは収納に入れて、帰ってからすぐに出すのですが。


 まあ、ないものは仕方がありません。塩と胡椒で味を調えるだけでも、肉の旨味と玉ねぎの甘さが十分に引き立てられるはずです。


 さあできました。包丁とまな板を洗ってさっさと帰りましょう。


 持ち出した道具を収納したら、料理人としてのテンションが落ちてしまいました。


「あ……、これで、全部、できた。パン、ここに置いておく、ね」


 子供たちが歓声を上げています。神父様を呼びに行く子。お椀を持ってくる子。ひたすらクルクル回る子。歌を歌い出す子。


 立ち去っていいでしょうか。


(あれだけ喋れていたのに。自信満々に料理出来ていたのに)


 料理している時は、他の事考えないでいいから……。


(ほら、神父さん来たよ)


 ああっ、好き勝手して怒られないかな。って、ギルド長までいます!


「これは! ちゃんとした料理。私がふがいないせいで、作ることができなかった正しい料理」


 お前のせいか~!


「ありがとうございます。この子たちにとって忘れられない日になることでしょう」


 いえ、あの、涙流して、手を取って感謝されましても。……逃げたい。


「ねえ神父様、食べていい?」

「早く食べたい!」

「食べさせて!」


 子供たちが大騒ぎしていますよ。ああ、まだ泣いている。


「そうですね。食事の時間には早いですが、温かいうちに食べましょうか。天気もいいですので、ここで食べましょう。さあ、ルツィナ様も一緒に」


 いえ、あの……帰りたい。


(そのまま言いなよ)


 そうだね。


「そうですね。食事の時間には早いですが、温かいうちに食べましょうか。天気もいいですので、ここで食べましょう。さあ、ルツィナ様も一緒に」


「か、帰ります……。あ……明日も、来ます、から」


 帰ります、っていった後の沈黙が怖くて、余計なことを言ってしまいました。


「「「うわ~~~」」」


 大歓声が上がります。神父さん、また泣いています。

 帰って、いいよね……。


「か、帰ります、ね?」


 子供たちが「「「ありがとう~」」」と手を振ってくれています。

 明日も来るのか。うん、来ないといけないよね。


 とにかく逃げましょう。


 振り返って一度だけ手を振って、足早に歩き出しました。


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