第34話 神父様との話し合い
「でも、顔も雰囲気も違うので別人でしょうね。あんなにおどおどするような方ではありませんでしたし」
バレないですよね。大丈夫ですよね。神様、ご加護をくださいませ。
(大丈夫だろ。顔が違うって言ってるし)
そ、そうですよね。ははは。
(それだけおどおどしてりゃ、逆に違うって思ってもらえているって)
そうですよね。髪の色も違いますし。
(それより、早く寄付してしまおうぜ。まだまだ見てみたいところが多いんだから)
「いかがなさいましたか?」
「あっ……いいえ。あの……寄付を」
私は金貨を一枚、立ったまま机に置いた。
「えっ、こんな大金! 大丈夫なのですか? とりあえず椅子に腰をかけて下さい。お話がしたい」
えっ、もう帰りたい。
(とりあえず座りなよ。追いかけられたら面倒だ)
そ、そうだよね。とりあえず座るだけ……。
「は、い……」と返事をして、腰を掛けました。
「お茶をお持ちしましょう。おい、お客様にお茶を頼む」
「あ、お気……づかい、な、く」
「いえいえ。まあ、お茶と言ってもトウモロコシのひげ茶ですが。なにしろこのように質素倹約な教会ですから」
(ほんとだね。ぼろっちい)
そんな風に言わないの。これでもみんな大切にしているんだから。
(住人は大切にしていても、本部はそうじゃないみたいだけどね)
言われてみればそうですね。あれだけ立派な教会もあるんだし。
(神は平等でも、人は平等じゃない、ってか。あっ、お茶おいしい)
トウモロコシのひげ茶は、素朴な優しさがあった。
「まずは、感謝を申し上げます。このような大金を孤児院にご寄付なさろうとして下さり、誠にありがとうございます」
あれ? なさろうとして下さり?
「実は、先ほども寄付のお申し出を受けまして。……これがまた、私の想像の範囲を超える金額でございました。
うん、知ってます。500万ギルですよね。
「急激な収入、ご寄付がございますと、何と言いますか……」
(本部が取り上げるんだろうな。ラノベのよくある展開だ)
またラノベ? よく分かんないけど、ルリの知恵の素なのね。
(そんな感じだと思っていいよ)
「よろしければ、銀貨一枚を毎月、十回に分けてご寄付いただければ助かります」
ええ! 毎日金貨一枚ずつ寄付しようと思ったのに!
(それはやりすぎ!)
だって、減らしたいんだもん!
(あんたねえ)
「よろしいでしょうか」
「は……はい」
あ~! 結局はいって言ってしまう! 金貨減らしたいのに。
でも、神父様のほっとした笑顔を見ると、それ以上言えない。
(笑顔見なくても言えないでしょう、ルツィナは)
うう、そうですけど……。
「ありがとうございます。先ほどの方にも、現金ではなく、食料や衣料、そして孤児院の修繕という形で奉仕していくことになりました。これで孤児たちのために神の恵みが届くことになるでしょう」
(どうやら、孤児院の運営、大変みたいだな)
そう、なのかな?
(現金だと本部が持ってく、そんな感じに聞こえるよ)
なるほど。だから少額とか物納にこだわるのか。
(ここの孤児、栄養足りているのかな。聞いてみて)
う、うん。
「あの……」
「はい。なんでしょうか?」
「子供たち、その、満足な……食事は……」
神父さんは少し黙ってから話し始めた。
「満足に、とはとても言えないのが現状です。ですが、しばらくの間は、寄付として食材が届くことになりました。煮てスープにでもすれば、今よりずっと改善されるはずです」
煮てスープに? 多分味付けとかないよね。
さっき応対してくれた女の子の腕。ガリガリに痩せていて、今にも折れてしまいそうだった。
私の中でもやもやした気持ちが溢れた。
――ルリ、あのね……
(ああ。好きにやりな)
うん。私は勇気を振り絞って神父さんに言った。
「私、ダンジョンの前でお弁当を売っている、ルツィナです。その……、孤児院の食事、夕食だけでも作らせていただけませんか!」
言えた。神父様が驚いている。
「あの、見ての通り貧乏な教会ですので、給金など支払えないのが……」
「いいんです! ボランティア活動として、食事を作らせてください!」
自分でもびっくりするほど、一気に喋った。
「お金……寄付できるくらい、あります。おいしい……食事、食べて、もらい……たい、の、です」
戻った……ああ、やっぱりだめだめだ……。
(いや、頑張った。あんたにしては頑張ったよルツィナ)
そ、そうだよね。
「……本当にありがたい。神よ、孤児のためにこのような素晴らしい方々をお使い下さり、感謝を申し上げます」
神父様、泣き出してしまいました。まあ、今日から作ってもいいよね。調理室見せていただいてもいいんですよね。借りますよ。おーい。神父様!
食材はいろいろ買ってあるし、今日はちゃちゃっと作って退散しましょう。




