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第29話 干物

「うわ~。すごいな。これがルツィナの畑?」


 褒められたけど、大したことないのですよ。


「いや、綺麗だし、整っているし」


 そうは言ってるけど、見る人が見たら手抜きもいいところなのです。葉物は管理が大変だから、基本的には根菜類とハーブだけ。ハーブは虫除けにもなるし。


「カボチャがある。でかいね」


 カボチャも楽なのです。ほったらかしでも育つから。そうですね。そろそろ収穫してもいい頃です。草を取ったら取り入れましょうか。


「カボチャいいよね。レシピいっぱいあるし」


 そうなのですか? 焼くかスープにするくらいでは?


「裏ごしして砂糖や生クリームを入れると、お菓子が作れるぜ」


 なんですって! お菓子ですか!


「今度試そうか」


 はい! ぜひ!


 筋肉痛で収穫大変ですが、頑張りましょう!



 罠にはリスが一匹かかっているだけでした。リスは食べられるところ少ないので逃がすことに。

 川に仕掛けた魚籠にも、何も入っていません。


 まあ、そんなものです。


「じゃあ、買い物に行かないとね。町ってどうなっているのか楽しみだよ」


 その前に早めのお昼ご飯にしましょう。もう外食してもおいしいって思えなくなってしまいました。

 家に帰って、簡単なランチを作りましょう。


 パンとサラダと醤油バター焼き。うん。ささっとできて最高です。


「片付け終わったらお米を研いでおこう。吸水させておけば夜はご飯が食べられるよ。味噌漬けには絶対ご飯が合うから」


 そうですね。味噌漬け楽しみです。



 外出用に赤いローブを着ようとしたら、ルリに言われました。


「それ、ダンジョンで着ているの鋼鉄の剣のメンバーに見られたよね。人前で着ない方がよくない?」


 言われてみればそうです。でもフードで顔を隠せるし、お父さんの匂いがするようで気に入っているんです。


「今日は仕方がないけど、新しいローブを買おう。お金はあるんだしさ」


 この間服買ったばかりだけど。


「いいじゃん。なんなら宝石売ればいいんだし」


 売るためには交渉しないと。


「それはあたしがやってやるよ。あたしが入れば見た目も変わるしね」


 そう? まかせていいのかな?


「たまに入った方が、馴染むのも早いでしょ。いいからいいから」


 そういうものかな? まあ、任せていいなら。


 取り合えず、今回だけは赤いローブを着ていきましょう。



「ここが町か。うん、活気があるね」


 もうお昼に差し掛かっています。バザールでは店じまいが始まっています。


「おまけ付けるよ。どうだい」

「安くしとくよ。早い者勝ちだ!」


 値引きしても売り切りたい農家の方々。お金の心配がないので、声をかけられたまま次々買っていきます。


(値引き交渉しないの? まあ、できないか)


 ええ! だから勝手に値引いてくれる時を狙ってきているんです! 朝一の方が新鮮で品質がいいのはわかっているけど。


(収納と浄化と保存のギフト。そう考えるとすげーな)


 本当にそう思う。特にここ数日で他人に言われまくると、自覚できるようになったよ。


(レベルが上がって、保存期間も30日になったしね。収納も無限だし)


 そうでした! 実感がないから忘れていました。


 まあ、お肉と野菜、かなりストックができました。じゃあ、露店ではなく食料品扱っているお店へ向かいましょう。ここ数日、バターの使用量がおかしいほど多くなりましたし。


(買い物ってテンション上がるよね)


 そうですね。人と会うのは疲れますが、買い物自体は楽しいです。


(この店、入らないの?)


 乾物屋ですか? 収納ができるので、保存食は使っていませんね。


(なんだって! 乾物は生と全く違う素晴らしさがあるのに! 入るよ)


 え~。初めてのお店、苦手なのに。


(いいから! ほら入って)


 仕方ありません。そこまで言うなら入りますよ。やだな~。


 扉を開けると、なんでしょう、不思議な匂いで充満していました。

 天井からミイラのようになった魚が何匹もぶら下がっています。


 ひいいいい~! 何ですかここは!


(乾物屋だね)


 知っていますよ! そうじゃなくて。


「何か探しているのか?」


 お店の人でしょうか。奥から不機嫌そうなおじさんが声をかけてきました。


「あ、あの。少し……見させて、貰い、ます」


「ああ。触るなよ」


 見られている? どうすれば?


(端から見ていって。あっ、それ、椎茸を干したヤツ。値段聞いて)


「これは、おいくら、で、しょうか」

「100グラム2000ギルだ」


 は? 100グラム2000ギル⁈ 高い!


(10個。10個買って)


 え~、こんなカサカサの買うの?


(いいから、10個何グラムか量ってもらって)


「10個、何グラム、ですか?」


「買うのか?待ちな」


 10個で50グラム。1000ギルです。


(20個! 20個買うよ)


 えっ、そんなに!


(いいから!)


「20個、ください」


「あいよ! 嬢ちゃん、わかってるじゃねえか」


 わかりません!


(わかんなくてもいいの! 他も買うから。次。あっ、するめじゃん。10枚買って!)


「これ、10枚。いくらですか?」


「何!スルメ10枚だと!」


 ひいい~! 怒られた~!


「嬉しいじゃねえか。ここら辺の野郎どもは干し肉しか買いやがらねえ。嬢ちゃんなら価値がわかるだろう。待ってな」


 おじさんが奥から何か取ってきました。


「ほら、最上級の昆布だ。欲しいだろう」


 何ですか、怪しい色の厚紙!


(昆布? 昆布だ! 金に糸目はつけるな。買いだ!)


 なんで? 何が起こっているの?


(おいくら、ですか?)


「これ一枚で3万ギルだ。どうする?」


 ひえ~! 紙一枚三万ギル? ありえません!


(買え! 多分それしかないんだろう)


「それしか……ないの、ですか?」


「ああ。誰も買わないが、嬢ちゃんみたいな人が絶対来ると思って仕込んでおいたんだ」


 ……そうですか。


(買いな! 買え! 金に糸目をつけるな!)


「……買います」


「そうか! やっとこいつらの価値がわかる奴が現れたか。贔屓にしてくれ。サービスしてやる」


 わかりません!


(いいんだ。すぐにわかるようになるから)


 なんだかんだと店主さんとルリに買わされて、結局金貨一枚分の買いものをこの店でしてしまいました。


 今まで生きていて、初めての散財です。




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