第29話 干物
「うわ~。すごいな。これがルツィナの畑?」
褒められたけど、大したことないのですよ。
「いや、綺麗だし、整っているし」
そうは言ってるけど、見る人が見たら手抜きもいいところなのです。葉物は管理が大変だから、基本的には根菜類とハーブだけ。ハーブは虫除けにもなるし。
「カボチャがある。でかいね」
カボチャも楽なのです。ほったらかしでも育つから。そうですね。そろそろ収穫してもいい頃です。草を取ったら取り入れましょうか。
「カボチャいいよね。レシピいっぱいあるし」
そうなのですか? 焼くかスープにするくらいでは?
「裏ごしして砂糖や生クリームを入れると、お菓子が作れるぜ」
なんですって! お菓子ですか!
「今度試そうか」
はい! ぜひ!
筋肉痛で収穫大変ですが、頑張りましょう!
◇
罠にはリスが一匹かかっているだけでした。リスは食べられるところ少ないので逃がすことに。
川に仕掛けた魚籠にも、何も入っていません。
まあ、そんなものです。
「じゃあ、買い物に行かないとね。町ってどうなっているのか楽しみだよ」
その前に早めのお昼ご飯にしましょう。もう外食してもおいしいって思えなくなってしまいました。
家に帰って、簡単なランチを作りましょう。
パンとサラダと醤油バター焼き。うん。ささっとできて最高です。
「片付け終わったらお米を研いでおこう。吸水させておけば夜はご飯が食べられるよ。味噌漬けには絶対ご飯が合うから」
そうですね。味噌漬け楽しみです。
◇
外出用に赤いローブを着ようとしたら、ルリに言われました。
「それ、ダンジョンで着ているの鋼鉄の剣のメンバーに見られたよね。人前で着ない方がよくない?」
言われてみればそうです。でもフードで顔を隠せるし、お父さんの匂いがするようで気に入っているんです。
「今日は仕方がないけど、新しいローブを買おう。お金はあるんだしさ」
この間服買ったばかりだけど。
「いいじゃん。なんなら宝石売ればいいんだし」
売るためには交渉しないと。
「それはあたしがやってやるよ。あたしが入れば見た目も変わるしね」
そう? まかせていいのかな?
「たまに入った方が、馴染むのも早いでしょ。いいからいいから」
そういうものかな? まあ、任せていいなら。
取り合えず、今回だけは赤いローブを着ていきましょう。
◇
「ここが町か。うん、活気があるね」
もうお昼に差し掛かっています。バザールでは店じまいが始まっています。
「おまけ付けるよ。どうだい」
「安くしとくよ。早い者勝ちだ!」
値引きしても売り切りたい農家の方々。お金の心配がないので、声をかけられたまま次々買っていきます。
(値引き交渉しないの? まあ、できないか)
ええ! だから勝手に値引いてくれる時を狙ってきているんです! 朝一の方が新鮮で品質がいいのはわかっているけど。
(収納と浄化と保存のギフト。そう考えるとすげーな)
本当にそう思う。特にここ数日で他人に言われまくると、自覚できるようになったよ。
(レベルが上がって、保存期間も30日になったしね。収納も無限だし)
そうでした! 実感がないから忘れていました。
まあ、お肉と野菜、かなりストックができました。じゃあ、露店ではなく食料品扱っているお店へ向かいましょう。ここ数日、バターの使用量がおかしいほど多くなりましたし。
(買い物ってテンション上がるよね)
そうですね。人と会うのは疲れますが、買い物自体は楽しいです。
(この店、入らないの?)
乾物屋ですか? 収納ができるので、保存食は使っていませんね。
(なんだって! 乾物は生と全く違う素晴らしさがあるのに! 入るよ)
え~。初めてのお店、苦手なのに。
(いいから! ほら入って)
仕方ありません。そこまで言うなら入りますよ。やだな~。
扉を開けると、なんでしょう、不思議な匂いで充満していました。
天井からミイラのようになった魚が何匹もぶら下がっています。
ひいいいい~! 何ですかここは!
(乾物屋だね)
知っていますよ! そうじゃなくて。
「何か探しているのか?」
お店の人でしょうか。奥から不機嫌そうなおじさんが声をかけてきました。
「あ、あの。少し……見させて、貰い、ます」
「ああ。触るなよ」
見られている? どうすれば?
(端から見ていって。あっ、それ、椎茸を干したヤツ。値段聞いて)
「これは、おいくら、で、しょうか」
「100グラム2000ギルだ」
は? 100グラム2000ギル⁈ 高い!
(10個。10個買って)
え~、こんなカサカサの買うの?
(いいから、10個何グラムか量ってもらって)
「10個、何グラム、ですか?」
「買うのか?待ちな」
10個で50グラム。1000ギルです。
(20個! 20個買うよ)
えっ、そんなに!
(いいから!)
「20個、ください」
「あいよ! 嬢ちゃん、わかってるじゃねえか」
わかりません!
(わかんなくてもいいの! 他も買うから。次。あっ、するめじゃん。10枚買って!)
「これ、10枚。いくらですか?」
「何!スルメ10枚だと!」
ひいい~! 怒られた~!
「嬉しいじゃねえか。ここら辺の野郎どもは干し肉しか買いやがらねえ。嬢ちゃんなら価値がわかるだろう。待ってな」
おじさんが奥から何か取ってきました。
「ほら、最上級の昆布だ。欲しいだろう」
何ですか、怪しい色の厚紙!
(昆布? 昆布だ! 金に糸目はつけるな。買いだ!)
なんで? 何が起こっているの?
(おいくら、ですか?)
「これ一枚で3万ギルだ。どうする?」
ひえ~! 紙一枚三万ギル? ありえません!
(買え! 多分それしかないんだろう)
「それしか……ないの、ですか?」
「ああ。誰も買わないが、嬢ちゃんみたいな人が絶対来ると思って仕込んでおいたんだ」
……そうですか。
(買いな! 買え! 金に糸目をつけるな!)
「……買います」
「そうか! やっとこいつらの価値がわかる奴が現れたか。贔屓にしてくれ。サービスしてやる」
わかりません!
(いいんだ。すぐにわかるようになるから)
なんだかんだと店主さんとルリに買わされて、結局金貨一枚分の買いものをこの店でしてしまいました。
今まで生きていて、初めての散財です。




