表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/38

第28話 味噌漬け

 やっと帰った。……くたびれました。


「おつかれ。じゃあ今日はなにする?」


 なにする? そうね。お弁当10個の注文を受けたから、それは作らないといけないよね。


「同じ弁当で昼食用だよね」


 そう。だから大変ではなさそう。問題は、材料がないってことだね。


「じゃあ買い物か?」


 その前に畑の管理と、罠仕掛けたところを確認しないと。畑は放っておくとすぐに雑草だらけになるから。


「そうか。スローライフは大変だね」


 毎日やっていればそうでもないけどね。まずは、家のお掃除をしましょう。


 冒険者さんたちが食器とか買ってきたから、棚が賑やかになったし。

 ああ、また押しかけてくるのでしょうか。


「そう言いながら、なんか嬉しそうじゃなかった?」


 う~ん、どうだろう。悪い人たちじゃないんだけど。勢いがありすぎて。


「戸惑っているのと、困っているのは違うよね。嫌なのともね」


 そう、だね。嫌ってほどじゃ、ない、かな?


「ま、ダンジョンに潜ったなら明日の朝までは来ないだろう」


 そう、だよね。まあ、朝くらいは賑やかでも、いい、のかな?

 ルリに問われてみて、私の中の気持ちがよく分からなくなった。


「ルツィナは本当にきちんとしてるね。あたしなんか毎日掃除しなかったし」


 本当に私の一部なの? ルリ。


「人間、いろんな面を持っているってことさ」


 そう、なのかな?


「あたしといるのつらくない? ほら、あんたのガサツなところ抜き出したような感じじゃん」


 そうだね。でも、嫌って感じはないよ。どちらかというと楽しい。


「それはよかった。じゃあこれからもよろしく」


 ルリが笑顔で手を出してきた。私と全く違う顔で、屈託なく笑うルリは、とても魅力的に見えた。


「ルツィナも笑えばかわいいだろうに。ほら、笑顔の練習する?」


 ずっと一人だったから。表情、変わること、なかったかも。


「そっか。じゃあ、これから一緒に楽しもうよ、《《わたし》》」


 そう、だね。ルリは私だし、あれ? 一人? 二人?


「半人前が二人でいいんじゃね? 足りないところ補い合っていけば」


 そっか。足りない所だらけなのかもしれないね。


「そうそう。あたしズボラだしさ」


 はははって笑う笑顔、本当に魅力的だ。


「ルツィナも笑って暮らせるようになろうよ。ほら」


 笑顔で差し出された手を、表情が固まったままの私が取った。


「オッケー。楽しい生活の始まりだ!」


 ルリの言葉に、私の口角が少しだけ上がったような気がした。



 じゃあ、畑に行きましょう。


 そう心の中で言うと、ルリが待ったをかけた。


「お味噌。レシピ貰ったでしょ。豚肉の味噌漬け、せっかくだから仕込んでおこうよ」


 そういえばお味噌とともにレシピを貰っていたんだっけ。でも豚肉はお弁当で使い切って、今はないです。


「ダンジョン産の魔物の肉で、とりあえず作ってみよう。今から仕込めば夕飯に出せるからさ」


 そうなの? まあそう言うなら……。


「味噌漬けは何でしてもいいんだ。魚でやってもおいしくできるよ」


 そうなんですか。新しいレシピ、期待が上がります。

 じゃあ、ニジマスが一匹あるから、これも漬けます?


「いいね。じゃあ三枚におろそうか」


 虹鱒の切り身と、厚切りのお肉を用意しました。

 何かあるといけないから、浄化の魔法をかけて。これでよし。


「タッパーはないよね。まあフライパンに蓋をしたらいいか。使えそうなものは……油紙だね。ラップの代わりに使いましょう」


 レシピにそんなこと書いていないけど?


「そのレシピ通りの道具はないし、暗黙の了解があってね。こっちの世界じゃ理解できない道具もあるんだ」


 なるほど。まあ、言うとおりに動きましょう。指示してください。


「まずはレシピ通りに材料を混ぜようか」


 お味噌が大さじ三杯。

 砂糖が大さじ一杯。

 ミリン? 大さじ一杯だけど……。


「ないのは後回しね。あるものから入れて」


 え~と、日本酒?


「それも後回し」


 次は、ごま油小さじ一杯。

 これで全部です。


「日本酒の代わりにワインでもいいけど、まあ水分が入ればいいよね。ワインが合うかわからないし。ミリンは甘味だけどこれも水分と考えれば……。うん。水を大さじ二杯。それに少しだけハチミツ入れてみようか」


 言われた通り入れましょう。それを混ぜて肉と魚に塗りました。


「じゃあそれを油紙に包んで、フライパンの中で保存しておくよ。フタをして置いておけばいいから」


 これでいいんですか、では浄化の魔法を。


「待った! 浄化しなくていい! 味噌は発酵食品だから、だいじな酵母菌がいなくなるかもしれない」


 え?


「完成したらかけてもいいけど、細菌は全てが悪いものじゃないんだ。どんなものにもいいところもあるんだから、全てを滅ぼしてはいけない」


 そうなのですか! あっ、だから私、ヨーグルト作ることができなかったのかも。


「ああ。やりそうな失敗だね。想像できたよ」


 笑われてしまいました。ですけれど、私にとっては大事な情報になりました。


 味噌漬けを仕込み終わりました。次は畑に向かいましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ