第27話 試食しないで~!
「今から……作ります。10分、待てます、か?」
「ああ。こいつらが早く行くってうるさかったから、こんな時間にいるだけだ。お前に迷惑かけないように、見張りがてら付いてきた。時間なら1時間くらいなら平気だよ」
そんなに待たなくていいです!
でも、その気遣いありがたいです。
「おう! 時間もあるし、俺たちの朝メシも作ってくれ!」
「それいい!」
リーダーさんとおねえさん! 何言い出すのですか!
「ざ、材料……ない……です」
あるけど! ダンジョンで取ったお肉、本当はたくさんあるけど!
「弁当100個で使い切りましたか。仕方ありませんね」
そうです! 賢者さん、そういうことにしておきましょう!
「は、い」
ああ、お弁当作っていた時のことを思い出すと……本当に大変だったよ。
「作るから……黙って、いて、ください」
今から仕込むの無理だから、さっき食べた魔物肉のパン挟みでいいよね。2個作れば十分だよね。ルリ、さっきのタレの配合教えて!
(え〜、どのくらいだろう。醤油大さじ2に対して、ごま油と白ワイン入れてみよっか、どっちも大さじ1? はちみつめんどくさいから、砂糖でいいや。小さじ1くらい? あっ、ゴマも入れて。うん、適当でいいから。そんな感じで。あとは勘!)
そんな適当な!
(いいんだって。醤油の懐の大きさを感じなさい。玉ねぎすっている暇ないだろ、ニンニクも適当に、みじん切りにすればいいよ)
そんなものなの? それでいいなら、まあ、時間ないから仕方ないか。
魔物肉切って、フライパン温めて。
って、静かにしてって言ったけど、なんでみんな私の作業を凝視しているのでしょうか。
う~、やりづらい……。
「あぶない……ですから、離れ、て」
一歩下がっただけですか! まあ、仕方ないです。
熱々のフライパンに、胡椒と塩を振ったお肉を入れます。
「この香り、お肉だけなの?」
「油の匂いが! 甘い!」
「……おいしそう」
「何の肉でしょうか。これほど芳醇な肉の香りは初めてです」
そうね! 絶品だったよ!
「ふむ。これが私の昼ご飯になるのか」
もしかして、出しちゃいけなかったお肉だった? ……仕方ない。このまま続行!
即席のタレ入れるよ。
「この香り! この香りよ! さっき入って来た時に嗅いだ匂いの正体、これか!」
「これ、食えないのか。なんてことだ!」
「……欲しい」
「これは……店主殿! これは一体何なのでしょうか!」
「これが私のお弁当に……ゴクリ」
あ~、そうなりますよね。このタレ、最初に作って火にかけた時、私も本当に感激したから。
ニンニクとお醤油の香りが……やっぱりいい!
(いいよね、この香り。今度作る時はトウガラシも入れよう)
トウガラシ? 辛みが入って……うわ~、食欲が増進しそう!
(甘口タレも辛口タレも、お好みで作れるから、いろいろ試そうね)
お醤油、タレ、何てすごいのでしょうか。
(味噌ダレも作れるよ)
味噌! そういえばまだ使っていないよね。味噌。
(後でゆっくり研究だね。今は作るのに集中しな)
そうだね。この状況じゃ出せないし。うん、いい感じに焼けた。
パンにはさんで油紙で包んで……。完成!
「これ、どうぞ」
焼きたて熱々の感じが、油紙を通して伝わる。包むのって、本当は冷ましてからの方がいいんだけど、仕方ないよね。
「二つもいいのか。今一つ食べてみよう」
え? まあ、いいですけど?
ギルド長が、ガザガザと油紙を半分外して、じっくりとパンを見ているよ。
「なるほど。油紙を持てば、汚れた手でパンを触ることがないのか。これは粗野な冒険者に対してありがたい工夫だね」
え? いえ、たまたまです。
「香り立つ匂いがすごいな。作り立てだからだね。冷めたらまた違う感じになるのだろう。それも楽しみだな」
食べる前に、どれだけ分析しているのですか!
「では頂こう。ん? ……」
黙りこくっています。冒険者の皆さんも黙っています。私も何もしゃべってないです。
なにこの沈黙は……。
「何だこれは!」
ひいい~! だめですか!
「甘さとしょっぱさが肉に絡んで! 肉の旨味が! 肉汁がはじける! レタス最高! パンが汁を吸いこんで! あ~、うまく言えない!」
おいしい、ですよね。さっきの私みたいです。
「え? もうないの? ああ、もっと良く味わえばよかった」
食べるの早すぎです!
「今、もう一つ……いや、昼に冷めた時どうなるか確かめたい」
ギルド長を見ていた冒険者さんたちが騒ぎ始めました。
「これ、今食べられないなんて」
「なんて拷問だ!」
「……お肉さえ、あれば。クッ」
「買いに行きましょうか」
「「「それだっ!」」」
なんでそうなるの? 行くな~! やめて~!
「さすがに迷惑だろう。お前たちには弁当があるではないか」
ギルド長、そうです、その通り!
「ハルモナは食べたからそう言っていられるのよ~。ずるいわよ」
「いや、大丈夫だろう、作ってくれるよな、なあルツィナ」
だから、名前で呼ばないで! 作りませんから!
「迷惑じゃ、ないわよね?」
迷惑ですっ!
「……食べたい」
心の友でもやめて~!
「店主殿。もちろん報酬は支払いますよ」
そういう問題じゃない!
(代ろうか?)
ルリ、そうしてほしいけど見た目が!
(そうだったね。じゃ、頑張って)
あっさり認められた~。うう~。なんて言えばいいんだろう。
「ごめん……なさい。用事が、あって……無理、です」
何にもないけど! ぼっちだから! でも、断らないと。
「ほらほら、ルツィナが困っているだろう」
そうです。ギルド長ありがとうございます。
「ちゃんと予約しないと迷惑になるだろう」
は? 予約?
「そうね。予約すればいいのね」
違います!
「朝晩、予約していいか。毎日だ!」
だめです!
「……作りたて……お弁当とは、また別物」
魔法使いさん、いくら心の友でもダメです!
「料金は一流レストランを参考にしましょう」
するな~! レストランじゃない!
「では、私もいいかな。朝晩寄らせてもらおう」
ギルド長まで! やめて下さい!
「あの……」
「「「「「何?」」」」」
「レストラン、では、ないので」
「「「「「はい?」」」」」
「ここで、食べるの、禁止……します」
「「「「「えええええ~」」」」」
その後、散々説得されましたが、なんとか阻止しました。
黙っていただけですけど。
平和なぼっち生活、守り切りました。たぶん……大丈夫だよね。うん。




