第26話 私の分は?
不安だらけのまま洗い物をしています。
お弁当、収納するとおいしくなくなるのは何ででしょうか! 保存できればゆっくり売ることができるのに!
そう思っていたら、ルリに突っ込まれました。
「加工すると細胞膜が壊れるからかな」
細胞膜ってなんでしょうか? わかりません。
「う~ん。説明難しいな。切ったお肉焼くと脂と肉汁が出てくるじゃん。お肉も縮むでしょ。いろいろな所からそういうものが出やすくなっていて、収納場所では普通よりその量が多くなるんじゃない?」
なんとなくわかりそうな、わからないような。ルリが頭がいいのはわかりましたけど。
「向こうの世界じゃ、子供でも知っていることだけど……。教えようと思うと難しいね」
そうなのですか! すごい世界です。
それより、問題はこのお弁当どうするかですね。
「店主どの、いらっしゃいますか?」
「お~い、弁当買いに来たぞ」
あっ、鋼鉄の剣の人たちの声だ。買いに来た?
私はあわててドアを開けました。
「なにこの匂い! 昨日と違う」
「……おいしそう」
「ルツィナ、待ちわびていたぞ」
「店主殿。この魅惑的な香りはお弁当に生かされているのでしょうか」
一斉に話をしないで~! え? ルツィナ、って呼びましたか~?
「お、お弁当……そこに……」
勝手に持っていってください! お金もおいて行ってください!
「でもこの匂いを嗅いだら、ここで店主さんのお料理食べたくなるわね」
「今日も作ってくれるよな、ルツィナ」
「……店主、困っている。……黙れ」
ああ、魔法使いさんだけわかってくれている。心の友よ!
(ルツィナ大丈夫? あたしが変わろうか?)
ルリ、今変わったら見た目も変わるでしょ。そっちの方が大変になりそう。
(そっか。じゃあ頑張れ)
う~。変わってほしいのやまやまだけど。
あっ、ギルド長さんが来た。
「お前ら一旦静まれ。ルツィナ、ダンジョンと今後について説明をさせてもらいたい。いいかな」
「は……い……」
ギルド長からの説明は、時々リーダーさんが話に加わり脱線しかけたけれどだいたいこんな話だった。
ダンジョンの10階にとんでもなく強いサルの魔物が出た。
Bランクの『鋼鉄の剣』でも、冒険者を見捨てて逃げようとするくらいの魔物。
そこへ、ルナという冒険者が出てきて、ソロ討伐を行った。
冒険者たちはルナを残して、地上に送り返された。
10階がどうなっているのかを調査し、危険性がないと確認できるまでダンジョンは封鎖。
調査は、『鋼鉄の剣』と、他に同じくBランクパーティ『氷剣の舞』がギルドの命により行う。他に、騎士団から四人の精鋭が混ざる。
ということだった。
「まあ、一階ずつ丁寧に調べるから最低でも十日はかかる。毎日帰還する予定なので保存魔法はいらない。これから十日間、弁当9個、私の分を入れて10個毎日用意してほしい」
え? 休暇は? 一気に作って休んでいいって言っていませんでしたっけ?
「お願いする。報酬はお弁当一つで2千ギル。10個で2万ギルだ。保存魔法無しでもきっちり払おう」
いえ……あの……、お金なら宝石を売れば一生困らないほどの……って、どうやって売ればいいのでしょう?
「頼む!」
「は……はい」
だから~! 受けちゃダメでしょ! 私!
「明日……からで、よければ」
「ああ。それでいい」
ギルド長、満足そうな顔してるよ。ありがとうって……いらない!
あっ、冒険者さんたち、お弁当を小さくしている?!
「ああ。バゥイの魔法、『ミニマム』だ。物質の重さは変わらないんだけど、大きさを五分の一まで小さくすることができる。そこにシルルの魔法『フェザー』をかければ、重さも感じられないほどになるから、持ち運びは楽にできるんだ」
へ〜、すごいですね魔法。本当に、あれだけあったお弁当が小さくなっている!
「では店主殿。まずは一時金を払おう。探索中に儲けが出たら、その都度一割持ってこよう」
金貨2枚、20万ギルがテーブルに置かれた。
金貨ですよ、金貨!
「あ……ありがとう……ござい、ます」
私がお礼を言うと、ギルド長が言った。
「で、私の分の弁当はどこだ?」
えっ? あっ! ごめんなさい! すっかり忘れていました!
ギルド長の分、今から作れるかな?




