第25話 引退宣言
「そういや、もう会うこともないとか言っておきながら、ここに実体化してきているの何でだよ」
そういえばサニーさん、そんなことを言っていましたよね。
もう魔物を退治することはないから会うこともない、なんてことを言っていませんでしたか?
「だって、どんなお料理作るか気になったんだから。あわよくば食べられるかもって思ったし。何とか出勤時間普通に戻せたしね」
「サービス残業だけじゃなく、本気で駄目なブラック……」
サニーさんのお仕事、ルリの開いた口がふさがらないほど大変みたいです。
「それに、ダンジョンの件なんだけど……」
サニーさんが言いかけた時、玄関のドアが「ドンドンドン」と大きな音でノックされました。
窓を開けて外を見ると、お父さんがいた時から、たまにお弁当を買ってくれている常連の冒険者さんたちがいました。
「お……おはよう、ござい、ます」
挨拶をしてドアを開けます。
「やあルツィナちゃん。最近休みが続いているけど何かあったのかい?」
「い……いいえ。誕生日……だったので、たまには……休もう、か、と」
ゆっくり話しても、ちゃんと聞いてくれる、ありがたい人たちです。
「そうか。それより聞いたか? ダンジョンの事」
「え? いいえ?」
昨日のあれが何かなったのでしょうか。
「ダンジョンに災害級の魔物が出たらしい。おかげでしばらくの間調査が入るから、俺たちみたいな通常ランクの冒険者は出入りができなくなったんだ。だからここから先、弁当作っても売れなくなる。それを伝えに来たんだ」
「そう……ですか」
ダンジョンが封鎖されるのですか? お弁当がいらなくなる? 昨日100個、頑張って作ったのに!
「俺たちももういい歳だし、そろそろ引き際かなと思っていたんだ。これを機に冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうかと思っている。まあ、武器や防具を売ればそれなりの金になるしな」
そうか。もう引退するのか。
まあ、五体満足でやめるのは幸せなことだしね。
「よかった、ですね」
「ああ。君のお父さんの弁当のおかげだ。あれで深くまで潜れた。おかげでいい武器を手に入れられたよ」
冒険者にとって武器は命を守る大切なパートナー。武器の性能で生き死にが決まるんだって、冒険者さんたちがいつも自分の武器を自慢しているのを聞いているから。
「じゃあな。元気で」
そうか。またお客さんが減ったね。
いや、お弁当、鋼鉄の剣のパーティへの専属販売になったんだ。
っていうか、このお弁当キャンセルされるの? 大丈夫なの?
「弁当、キャンセルなのか?」
どうだろう。一生懸命作ったんだけど。
「無駄にしたくねえよな」
うん。
「そういやさっきなに言おうとしてたんだ、サニーさんよぅ」
「そうそう。ダンジョンのイレギュラー、もう一頭いるみたい。冒険者が倒せば出なくていいんだけど、もしかしたらまた出てもらうかもしれないから。一応気にしておいて」
はぁ? もう一頭? ですかぁ!
「あ、成功報酬ちゃんと出すから。何がいいか考えておいて」
わかりません! それよりまた戦うんですか!
「調味料の選択はあたしに任せな! こんなに早くチャンスが来るとは。最高じゃん! がんばれよルツィナ」
「じゃあ、出勤時間だから。明日の朝食も期待してるわよ」
ええ! サニーさん……行ってしまいました。
お弁当100個キャンセルに、新しい魔物って……
一体どうなっているんですかぁぁぁ!




