第14話 ギルド長
「ああ。見ての通り私にはエルフの血が混ざっている。クオーター(1/4)だがな」
やっぱり。そんな気がしていたけど……
「だから君に獣人の血が混ざっていようが、私にとってはどうでもいいことだ。それより君の能力と、その香辛料に興味がある。単純な話。そういうことだ」
どうしよう。
「いつから弁当売りをしているんだい? この香辛料は何ていう名前なのかな?」
「お弁当は……お父さんと一緒に売っていたから。今は……ひとり、だけど」
今は独り。だから働かないと。
「そうか。頑張ったな」
頑張った? え、褒められたの? 私が?
「王都みたいな都会なら、獣人の血が入ったくらいでは、それほど差別されることもないんだが。君くらいの血の薄さなら誰も気にしないだろうね。まあ、獣人を毛嫌いしている人間もいるし、差別が全くないとは言えないけど。田舎よりはまあ、かなりましだ。エルフの混血であっても、田舎は暮らしは面倒くさいからね」
ああ。この人もいろいろあったんだ。言葉の端々から思いが感じ取れる。
優しい言葉が私を包む。
「こいつらはあちらこちらと、いろいろな場所に旅をしているからな。異種族にも慣れているんだ。信用してやれ」
優しい眼差しで私に語りかけるギルド長さん。
「そうなんだよ! ここいらの冒険者は何も分かっていない!」
え? リーダーさん、何怒っているの?
「この弁当、いくらで売る気だったんだ?」
え? あの……
「900ギル……くらい、かな?」
かなり手抜きだからね。
「ほら、信じられるか。この味で、しかも三日間の保存魔法がかかっている弁当だ」
「三日間の保存魔法……だと」
ごめんなさい! 手抜きでちゃちゃっと作ったお弁当です。
「いつもそんな値段で売っているのですか?」
「お醤油は、初めて……使ったので、ちょっとだけ……高めに……」
「オショウユという香辛料ですか。いや、三日の保存魔法がかかった弁当がそんな安くていいわけないでしょう!」
怒られた? なんで?
「お父さんは……七日間、保存、できる魔法を……使えたから」
「一週間の保存魔法……ありえないわ。いえ、三日でもすごいのだけど」
え? うさぎの獣人なら誰でもできるんじゃ?
「保存魔法が三日ということは、普通の状態で翌日まで食べることができるとして最大四日の保存期間があるということね。それに、雑菌を排除している。他にも何かしているでしょう?」
「はい……、浄化をかけて、います」
「浄化魔法! つまり雑菌を排除しているということなのか?」
え~と。ギフトだから魔法とは違うんだけど……まあいいか。
「腐敗は雑菌で起こる。内部に雑菌がないならば、通常の保存期間は格段に上がるわね。最低でも三日大丈夫なら、六日間は安心して食べられるということね。もしかしたら一週間? 検証してみないといけないけれど、これは凄いことになるわ」
凄くなくていいです! 生活できれば問題ない。
「わたくしとしたことが! その分析ができていなかったとは!」
いいです! 分析しないで!
「凄い……店主、おかしい」
ああ! 心の友が引いている!
「一週間潜っても、おいしいもの食べられるの? 最高じゃない!」
知らないです!
「ほら、連れてきて正解だっただろう」
私にとっては不正解ですよぉ。
「で、この弁当いくらの価値があると思う? ハルモナ」
リーダーさん! 知りたくないです!
「値段……つけたくないわね。というか、どうしたい、ルツィナ。
私? 私は……。
「日々……平穏に、暮らし……たい、です」
目立ちたくない! 騒がれたくない! 平凡でつつましい生活ができればそれでいいの。たまに本が買えて、季節ごとに状態のいい古着を新調出来たらいいの。
「お弁当、毎日100個納品できる?」
100個? 無理無理! できるけど面倒くさい!
「今の環境では……無理。保存を、かけるのも、30個が限界」
そういうことにしておこう。
「なるほど。保存魔法は30回までか。浄化は?」
魔法じゃないんだけど。え? 浄化? いくらでもかけれるけど。
「わかり、ません。でも、お弁当、作るの……一人で、だから」
「ん? 50個頼んだはずですが」
「三日目の、お弁当は……12個。一日目は、保存、かけて、いないです」
賢者さんが何か考えている。怖いよ。
「そうか。日にちごとにかける魔法を変えているのか。最高で30個が限界でも、一日だけなら90個に増やせる。そういうことですね」
わからない。わからないけどそういうことにしておこう。
「多分……そんな、感じ、で、す」
「そうですか! そうだとすれば、浄化魔法で三日。三日目の魔法の弁当は帰還を考えたら昼まで。8個ですむから、六日間分は確保できるということですね」
そんなに作りたくありません!
「……バゥイ、値段。いくらになる? 赤字、だせない」
そうです! なんか値段付けられないとか言ってましたよね!




