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第13話 いざギルドへ

「さて店主殿。これからギルドへ向かうわけだが、そのための弁当はできていますか?」


 え? は? 今までずっと食べてたよね。私ずっとお肉焼いていたよね。仕込んでいた野菜、結構なくなったのよ。今までの動きの中に、お弁当作る隙があった? ないよね。私お昼ご飯も食べてないのに。あれ? おかしいな。


「出来て……いま、せん」


「なぜだ? あれほど料理を行っていたというのに」

「そ……それは」

「お前たちが食い尽くした。ボクは少しだけしか食べていない」


 ありがとう魔法使いさん! 私じゃ指摘できなかったよ。


「あ、あら。おいしかったから、つい、ね」

「各種味を分析せねばならない」

「いや、ホント美味かったから、つい、な」


 まあいいや。茹でた野菜と鶏肉を入れただけのお弁当ならすぐに作れる。野菜はお塩をかければ食べやすくなるよね。お肉は……薄く切ってフライパンで焼き目をつけてお醤油で味を付けよう。


「ふむ。手際が良いな」

「おいしそう。それに彩りがきれい」


 ま、まあね。手抜きでもこれくらいはするよ。

 色と栄養は偏りなく。食事の基本だからね。


「準備できたか? じゃあ行こう」


 ま、待って。保存の魔法をかけないと。


「やはり、通常の魔法とは違うようだ」

「うん。独特だね」


 わかりません! 私使えるのそんなにないから!


 料理していても、魔法をかけてもじっと見られている。

 こんなの初めてだよ。ああ、気が休まらない。


「ほら行くぞ」

「あ……、洗い物、させ、て」


「それもそうか。よし手伝おう、なあみんな」


 あ~! 手伝わなくていいから! 雑に洗われたらやり直しだから! やめて~!


 首をぶんぶんと振ったら、魔法使いさんが察してくれた。いい人だ。魔法使いさんだけならお友達になれそう。ああ、心の友よ。


 最低限の片づけを終えた私は、引きずられるように冒険者ギルドに連れていかれた。



「まあ、鋼鉄の剣のみなさん。どうしたんですか、こんな時間に」


 愛想のいい受付のお姉さんが私を見て表情を変えた。

 目立たないように、フードを被っていたのに。


「あら、鋼鉄の皆さんに何かしたのかしら、ルツィナさん」


 冒険者登録しているからたまにやっている薬草取りなんかの仕事の依頼は受け付けてくれるけど……。やはり獣人の血が混ざってるからかな? あたりが強い。


「ルツィナ含めてギルド長に話したいことがある。アポ取れるかな」

「はい。Bランクパーティですもの。すぐにわたくし、リリーが責任をもって対応いたしますわ。受付のリリーが」


 何度も名前をアピールしながら、受付のお姉さんは奥の階段を上がっていった。


「さすが、モテモテね」

「やめろヴィラ。俺の趣味じゃねえよ」

「わたくしも、趣味ではないですね」


 あ~。普段からモテているから選び放題なんだろうね。

 そういう人には近づきたくないのに。面倒くさそうだから。


「何であなたまで付いていくの、ルツィナさん」


 そう言われましても。


「ルツィナは俺たちの客、いや、俺たちがルツィナの客でギルド長に会わせるんだ」

「まあ、ルツィナさん! 何をしでかしたというの」


 あ~。もういいです。とりあえず謝っておこう。


「すみません」

「謝る必要などない!」


 面倒くさいから口挟まないで~!


「早く……行きましょう」


 魔法使いさんがわかってくれたみたいで、リーダーさんを止めてくれた。

 雰囲気が悪くなったまま、ギルド長の部屋に入った。



「おお、久しぶりだな鋼鉄の。こっちへ来たのか」


 綺麗なこの女性がギルド長? もしかしてエルフの血が混ざっているのかな? 本当に綺麗。


「なんだ、誰かと思ったらハルモナじゃねえか。何でこんな所に」

「まあ、いわゆる左遷ってやつだな」

「はぁ。相変わらずね」


 お知り合い、みたいですね。

 私を放っておいて、なんか和気あいあいと盛り上がっているよ。


「そんなことで飛ばされたの?」

「そうなんだよヴィラ。四ヶ月前からここのギルドに赴任した。まったく本部のやつらときたら権力争いしかしていないからな」


「ひどいですね」

「……本部バカ」


 魔法使いさん相変わらず口悪い。でも心の友だよ。


「それで? 何の用だ?」

「ああ。この弁当を食ってみてくれ」

「差し入れか? 賄賂は効かんぞ」


 ははは、と笑いながら言っているから、たぶん冗談なんだろう。

 私のお弁当じゃ賄賂になんてならないもの。


「ん? ああ? なんだ? この弁当は!」


 えっ、怒られる!


「初めて嗅ぐこの香ばしい香り。初めて味わう深いコクと塩味のバランスの良さ。何だこの調味料は!」

「うまいだろう!」

「うまいなんてものじゃない! 野菜と肉のバランスも完璧」


 ええと、適当に詰め込んだだけですけど。


「ほう。薬草を匂い消しの代わりに使っているね。休憩中に体力回復が行えるようにかな?」

「は、はい。……おとう、さんが、そうするように、って」


 冒険者さんのために、栄養バランスと薬草を仕込むことはどれだけ大切かって、教え込まれたんだよね。


「もしかしてMP回復もか?」

「魔法草も、入れて、います」


 熱通すと、効果上がるらしいけど。


「……いくらが……正解? ハルモナ」


「なんだシルル。珍しいね? そうだな。この量で私が知らない香辛料。肉と野菜の鮮度の良さ。味のバランス。これ一つだけを貴族に売るなら値が付けられないほどのものになるな。大商人が目を付けたら、香辛料の出所を根掘り葉掘り聞かれるだろうな」


「そんなに!」と弓使いのお姉さんが声を上げた。


「参考までに。香辛料を使わなかったらいくらくらいになると思う?」

「そうだねバゥイ。塩と胡椒くらいで作れば……、ん? 保存の魔法がかかっているのか?」


 え~と、私が答えないといけないんだよね。


「はい……三日だけ、ですけど」

「君は?」

「お弁当を……作った、者です」


「名前は?」

「ルツィナ、です」


 ギルド長は私をジイっと見つめて、それから私に語りかけた。


「そうか。獣人の血か」


 私の心臓がキュッと縮んだように痛んだ。



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