第11話 冒険者のいぬ間に
まあ、しばらく帰ってこないでしょう。今のうちにいろいろやらないと。
まずは本日お休みの板を掛けて。それから明日のお弁当の準備をしないといけないよね。まずは畑を見てきましょう。
うん。今のうちに雑草を処理しないと。伸びてしまってからだと大変さが増すしね。
ドンドンドンってお家のドアを叩いてる音がする。
「なんだよ、今日が休みなら昨日から言っとけよ」
いつもの値切るお客さんの声だ。いいや、聞こえなかったことにしよう。
いくつかの根菜と葉物野菜、それに果菜を収穫した。
◇
とにかく数が多い。そして種類も多くしなくては。味付けを変えて誤魔化せばいいから、まずは野菜の下茹でをしましょう。
ホワイトラディッシュと、キャロットと、ポテトを同じ大きさになるように切る。玉ねぎは後でいいや。まずは下茹でをしましょう。
あっ、ベーコンも入れてスープも取りましょう。塩味、ミルク、お醤油入れても大丈夫かな? まあ、一日分が三種類でローテーションでもいいよね。
お肉は種類別に、焼く、煮る、蒸すで分けられるから、それは後からやればいいや。
とにかく数が多いから、どうやってコンパクトにするかが今回の問題よね。朝はサンドイッチにして四人分まとめようかな? いや、おかず全部四人分にまとめてもいいか。
そうなると、入れ物を考えた方がいいのかな? こんな大量のオーダー初めてだから難しいや。
ベーコン、ハム、調理用の生肉は何種類あるかな。魚は二つが限界だね。
予算考えずに作っていいから考えるの逆に難しいね。まあ、お醤油自体が高価な調味料になるから、まあいいよね。私的には無料で手に入る便利調味料なんだけど。
まだ、使い方が本当じゃない気がする。
バターと相性がいいから、しばらくはこれで良さそうだけど、もっといい調理法があるような気がしてならない。
ガラス瓶に入ったお醤油を明るい空に透かして見る。
液の少ない周辺が、赤く透けて見えた。
(あ~! やっとつながりそう)
頭の中で声がした。
(えっ!)
(あ、久しぶり。声聞こえる? 私だよ、サニー )
(あ~! あのブラックなお仕事をさせられていた)
(そうそう。あなたにお醤油あげたサニーよ)
(なんで? どういう状況なの? この間は私の前に出てきたのに)
(あ~。あれは結構大変だったんだ。まあ、最初だから姿見せないと信じられないだろうからって無理やり頑張らさせられていたんだから)
(そうなんだ)
(なに? お醤油の使い方に悩んでいるの?)
(そうなんです! お醤油にはなにかこう、未知の可能性がありそうで)
(ふふっ)
(なんですか?)
(あなた心の中ではスムーズに話せるのね。悪くないわ)
(え? あ、その。話す相手がいないから、声に出すのが苦手なだけなんです)
(いいわ。ステキよ)
(は、い)
(お醤油の使い方ね~。あなたの人格が今100%じゃないから思い出せていないのよね。それを戻すために今日はコンタクトを取りたかったのよ)
(私の人格? ですか?)
(そう。ちょっと時間がかかるから。今いいかな)
(はい。あ、でもお客さんが戻ってくるかも)
(お客さん? 営業朝だけだよね)
(え~と。お客さんというか、押しかけられていると言うか)
(なにそれ?)
ドンドンドンと、扉を叩く音がした。
「店主さん! 肉買ってきたわよ!」
「早く焼いてくれ!」
(あっ、帰ってきた!)
(なんか大変そうね。じゃあ、夜にしましょう。また来るから)
え~! どういうこと? せっかくのチャンスが!
「開けていいか!」
待って待って! 鍵開けるから!
「ちょ、っと、待っていてく、ださい」
私はあわてて扉に駆け寄った。




