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第10話 朝食、食べるのでしょうか?

「話終わった? じゃあさ聞くけど、さっきから香っているこの匂いなに? すっごくおいしそうなんだけど」


 今度は綺麗なお姉さんがぐいぐいくるよ。


「朝ごはんの……残り香」


 お醤油って言っても分からないよね。説明面倒くさそうだし。


「だから! どんな料理なの! こんな香ばしい匂いかいだことがないわよ」


 どうしよう。説明できない!


 仕方がない。少しお肉を焼こう。


「ちょっと……待って……て」


 台所に立ってコンロに火をつける。フライパンが温まる前にヘビのお肉を出して一口大にぶつ切りにする。


 五つあればいいよね。さっと塩をふり、フライパンに牛脂を入れる。

 ジューっと音が立てながら白い脂が透明に変わる。フライパンに溶けた脂が溜まっていく。小さなトングで牛脂をつまみ、フライパン全体をなでつける。


 準備は上等。まな板を持ち上げ、サッと肉を滑らす。


 ジュワーという音と、蒸気が上がる、

 両面をサッと焼き、中央に集める。


 火を消してふたをする。この大きさなら二分程か。


 ふたを開け醤油をひと回しかけた。


 まだ熱いフライパンの底に落ちた醤油が、ものすごい音を立てながら沸騰していく。


「これ! この匂いよ! 何を入れたの!」


 いつの間にか背後にみんな来ているよ! うわ~、近い近い!


「ちょっと、離れ、て。あぶない、から」


 全然危なくないけど! 離れて欲しいの!


「テーブル、で、待って、て。持って……行く、か、ら」


 なんとか下がらせた。じゃあ、味見してみましょう。


「ん? ふあ。おいしい」


 熱々の淡泊なお肉は、牛の脂身のコクを吸い、醤油の塩辛さと香りで複雑なコクをまとっていた。


 イケる。冷めたらどうなるか今度試そう。


 さあ、これを食べたら帰ってもらおう。

 お皿に四つのお肉を移し、テーブルまで運んだ。


「ど、う、ぞ」


 女性たちは目ざとく見つけたフォークで肉を差した。

 男性たちはそのまま指でつまんでいるよ。


「うまっ!」

「なにこれ! おいしい!」

「もっと……ほしい」

「ふむ。未知の調味料。この香りの正体はなんだ? アルコールは感じられないゆえ……」


「「もっとないのか」」

「「もっとちょうだい」」


 え~! 私の食材だよ!


「いくらだ? これをステーキにしたらいくらで出してくれる? 金貨一枚か」

「あ、ずるい! わたしも金貨くらい出すわ!」

「どうだろう、店主さん。この料理を我々にふるまってくれないか?」

「出す。金貨くらい、いくらでも」


 え~! 家はレストランじゃないのに。


 圧が……圧が強すぎます。どうやって断ろう。


「あ、あの。材料……お肉、もう、ないの、です」


 いっぱいあるけど! 昨日買ったけど! ないことにしましょう!


「肉か。買ってくる」

「そうね。今の蛇? 特上の牛肉だったらどうなるのかしら」

「それだ。肉を買ってくるから調理をお願いしたい。よいか、店主」

「鶏肉もおいしそう。いろいろ買おう」


 え? は? なんで?


「では、ちょっとだけ待ってってくれ。おら、好きな肉買いに行くぞ」


 え? 作るって、言ってない。


「食器! 食器もないの」

「分かった! 一揃い買ってくる」


「は?」


「よろしければ、お礼ということでプレゼントさせて頂きます」


 いらない! 毎日来る未来が見える!


「そんな」

「遠慮、しなくていい。洗いやすい、シンプルなものに、する」

「そうね。あたしたちにまかせなさい。男子のセンスは信用しないから」


 そうじゃない! そうじゃないんです~!


 そう伝える前に、冒険者さんたちは颯爽と出て行ってしまった。はぁ……

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