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49. 最強の魔法使いと最後の魔法使い

「!!!」


小さな太陽を中心に全てが四散したのは一瞬だった。


次の瞬間には時を戻すかのようにあらゆる物が光に向かって収縮した。風に舞う塵同然に呆気なく体を持って行かれる。



引き摺り込まれる!!



自分自身を包む保護魔法だけはなんとか維持出来ていたが、魔法の膜の外側では根元から折れた木々と土が奔流となって激しい音を立てていた。土に覆われて何も見えない。



破れた!!広間を包んでいた保護魔法が!!



そこだけ冷気に触れたかのように心臓がひやりと冷たくなる。「死」を意識した。


ぎりぎりで気を失わなかったが、自分を保護魔法で包んでいなかったら前後の二度に渡る衝撃で内臓と骨がやられていただろう。


どこか冷静でいられたのは、本当なら死んでいた筈の経験だけなら何度もしていたからだ。世界の外側で過去の再現を見ているような感覚さえあって、自分のその感覚に自分で焦燥を覚える。



わたしはもう不死ではない―――――――――――――そしてここでわたしが死んだら、レベルゼの魔法を止められる人間がもういない。



土の濁流の間からふいに強烈な光が覗いた。手を伸ばせば届きそうな程すぐ目の前だった。



「……!!」



バンッ!!!



引力に逆らうと衝撃音がして、凄まじい負荷が体を襲った。息が出来ない。体を引き摺り込もうとする力に抗うが、胴体が千切れそうだった。それでも全てを吸い込もうとする力を振り切って、上へと逃れる。



パン、パン、パン、パンッ……!!



木と土の中から抜け出しながら何度も何重にも光球を覆う保護魔法を張るが、張るそばから破裂音と共に魔法は次々と破られる。


「……!」


鳥や小さな動物が吸い寄せられるのが見えた。光球の外に何度目かの保護魔法を展開したが救えなかった。木も動物も一瞬で圧縮されて光の一部になる。


絶望感が心を圧する。



破壊に失敗した。ただ失敗したというよりもっと悪かった。



魔法を吸収された――――――――――――――



あの光球は他者の魔法さえ吸収して更に強力になるのだと絶望の中で理解していた。最大の攻撃魔法は最悪の結果を招いていたのだ。


自分の魔法のせいで数倍強力になった光に引き摺り込まれぬよう、保護魔法を張ることを繰り返す。

保護魔法で光球を覆えば一瞬だけ力を遮断出来るが、だが張るそばから破られて吸収されて、一瞬(のち)にはその前より状況が悪くなる。だからこのやり方はあと数秒しか持たない。


しかしほかにどうすればいい?!


方法が見つからない。


この魔法が止められなければ大勢の人が死ぬ!


リスタもオーディーもみんな――――――――――――――――――!


なぜこんなことを……!

自分は命の覚悟をしてここに来たが、迷宮の外の世界が巻き込まれようなどと考えたこともない。



――――自分が全力を注ぎ込んだ魔法を試してみたかった――――



――――――――――――レベルゼの声が聞こえた気がした。



まさか。



突然ある想像が頭に浮かんだ。到底受け入れられない想像。



まさかこの魔法を止められるかもしれない存在として、わたしは残されたのか。


手加減のない勝負のために。


わたしの五百七十年は―――――――――――――



「なぜ………!」



憎悪が沸き上がる。



この勝負のためにわたしに五百七十年の呪いを掛けて、この勝負のために世界を滅ぼすかもしれない魔法を発動させたのか?


レベルゼを許せない。人を人とも思わない魔法使いを。



バンッ!!!



これまでにない大きな音と共に何度目かの保護魔法が破られる。


「!!」


限界だ。もう一瞬すら引力を遮断出来ない。


呑み込まれる!


ごうっ、という音がして体が下へと落ちて行く。その力に逆らって上昇しようとすると体が砕けそうだった。鞄の肩紐が肩に食い込む。鞄にも強化魔法を施してあるため肩紐は千切れずにいてくれているが、あのひとのところにこれを持ち帰れないのなら意味がない。



リスタ――――――――――――――――――!



帰ると約束したのに!!



世界を呑み込む光が目の前に迫る。せめて対戦者わたしの死で止まる魔法であってほしいと、レベルゼに理性があることを願った。








アルト








その時だった。


リスタの声がはっきりと聞こえた。


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