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35. 迷宮に差す光

失ったものの記憶が一気に甦り、波となって胸に押し寄せる。


その場所がもし分かったら、平静でいられないかもしれないと想像しなかった訳ではないのに。想像していたよりずっときつかった。


あの時この場所さえ通らなければ。どんなに思っても取り戻しようがないことを思う。


伏せてしまわないよう床に右手を着いたが、立てない。


「最初の一人」だけに掛かる呪いだったのだと、自分一人が呪われたからくりを今更知った所でどうすることも出来ないのに。


誰が悪い訳でもないと理解していたが、「どうして自分が先頭だったのか」と頭をよぎってしまうことが余計に苦しい。


「ふ――――――っ」


呼吸が浅くなりだして、無理矢理深く息を吸うことを繰り返した。何度も。



この場所を破壊してしまいたい。


でも駄目だ。


まだ目的を果たしていない。



「しっかりしろ……」


精神の安定を取り戻さなければ、魔法に支障をきたす。自分を叱り付けたが効果がなかった。微かな体の震えはまだ収まらない。


まずい。


もうすぐ次が来るのに。


視線を落とす。膝の上で握り締めていた左手が見えた。


その瞬間。




アルト!!




「!」




リスタ?!




リスタの声―――――――――――――――――――


そんな筈はないのに。


一瞬、祈るように自分の右手を左手で包むリスタの姿が見えたような気がした。


幻聴なのか。


幻聴なのだとしても、その声は闇に見えた光だった。


震えが止まる。代わりのように涙がこぼれた。体に力が満ちてゆく。



「――――――――――――――――――――――」



左手を胸に当て、立ち上がった。


誰が見ていると言うのでもないので、涙を止めようとはしなかった。


実力を誤魔化すことが出来ないこの迷宮ばしょで、どうせ自分以上のものにはなれはしない。


建物の中央の魔道具を見つめる。




帰ろう。


決着を付けて。




ごうっ、と、低く唸るような音が遠くで聞こえた。


§


ごうっ………


あと少しで東屋に辿り着けるという時、低く唸るような音が聞こえた。


「!」


はっと顔を上げて周囲を見回す。不穏な響きを無視など出来ない。だが音の出所を確認したところで、それが助けになるかは疑問だった。今他に注意を向けることを強いられたら対処しきれない。


「うっ……」


誰かが悲鳴を上げ掛け、そのまま声を失った。


すみません、体調不良のため、今回かなり短いです……

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