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いざダンジョンへ

木々が生い茂る森の中。


新ダンジョンに向かう途中、丸縁サングラスをかけたスキンヘッドで褐色肌の男が自己紹介をしてきた。


彼の名は『バーストン・ダヴィネス』。大盾と剣を扱うS級ハンターだそうだ。


細い目をした飄々とした雰囲気の優男は『ランティス・アイヴァン』と名乗った。


彼もS級ハンターで、弓と剣に加えて魔法も扱える魔剣士とのこと。


攻撃魔法を使えるS級ハンターというだけでも珍しいのに、さらに驚いたのはランティスとプリシラが恋人同士ということだった。


ランティスは気さくな口調だが、本当の性格はあまり良くない気がしてならない。


「さぁ、目的の場所が見えたぞ」


先頭を歩いていたアルベルトがそう言って足を止めた。


「へぇ、あまり見ないタイプのダンジョンね」


「うむ。定着型と聞いていたが、ぱっと見は突発型のようにも感じるな」


「定着型ダンジョンって、普通は地下に続く洞穴が入り口よね。これは確かに珍しいわ」


プリシラ、バーストン、ランティスが驚いた様子で語る。


皆の最後尾を歩いていた私はやっと追いつき、ダンジョンの姿を確認する。


「……でっかい扉ですね」


そこは木々が生い茂る森の中に、なぜか不自然に開けた大草原が広がっており、その中央に荘厳さとおどろおどろしさが入り交じった、不気味な両開きの巨大な扉がそびえ立っていた。


「油断せずに調査を進めよう。バーストン、悪いが先頭を頼む」


「了解」


「ミシェル、君は補助魔法を頼む」


「はい、わかりました」


アルベルトの指示を受け、バーストンが大盾と剣を構えて前に出る。


私はすぐさま、身体能力強化と防御力上昇の補助魔法を発動した。


魔力を大きく削られる感覚に、思わず「ふぅ」と息が漏れる。


「あら、この程度の補助魔法で息切れ? E級没落令嬢は大変ねぇ」


「……そうですね。では、プリシラさんには補助魔法を掛けなくてもいいですか? 魔力量が少ないので、掛ける人が少ないと助かります」


「あっはは、いいわよ。あなたみたいなE級の力なんて、頼るつもりはないから」


プリシラがにやにやと笑っていると、「二人ともやめないか」とアルベルトの真剣な声が響いた。


「遊びじゃない。あのダンジョン、外見からするとS級ダンジョンの可能性がある」


その言葉に、私以外の全員の目の色が変わる。


ダンジョンは規模、採掘量、出現する魔物の強さで危険度が定められており、ハンターの階級と同じくSからEまで六段階に分類される。


S級ダンジョンともなれば国の管理下に置かれ、状況次第では資源を巡って国家間の争いすら起きることもある。


なぜ皆が目の色を変えたのか、その理由は明白だった。


「私たち、ついてるわ。今ならこのダンジョン、漁り放題よ」


プリシラが不敵に笑いながら舌なめずりをした。


そう、S級ダンジョンが正式に国の管理下に置かれるのは、危険度が確認された後の話。


今この時点であれば、彼らが先に入って発見したものを密かに持ち出しても、それが罪に問われる可能性は低い。


少なくとも、S級ハンターである彼らなら黙認されるだろう。


私が同じことをすれば、即刻断罪されるけれど。


「そういうことだ。さっさと近づいて調査を始めよう」


アルベルトの言葉に従い、バーストンを先頭にして警戒しつつ扉へと近づく。


しかし、周囲には目立った罠も魔物もいない。


「……どうやら、周囲には罠はなさそうだな。じゃあ、早速ダンジョンの中に入ってみようか」


アルベルトが扉に触れた瞬間、どこからともなく喉で鳴るような不気味な笑い声が響いた。


何事かと周囲を見回していると、ランティスが叫ぶ。


「扉に目と口ができたぞ」


はっとして見上げると、扉に不気味な目と口が浮かび上がっている。


扉はにやりと口角を上げて、低く響く声で語り始めた。


「よく来たな……。ここから先は、呪いと祝福の鍛錬場。死が救いに思えるほどの壮絶な呪いが挑戦者を襲うだろう。命が惜しい弱者よ、今すぐ立ち去れ。死を恐れぬ強者よ、試練を乗り越えれば祝福を授かり、強大な力を手に入れられる。覚悟があるならば、さあ、入るがよい」


声が途切れると、誰も触れていないのに扉が重々しく開き始めた。


その奥に見えたのは道ではなく、真っ黒な渦。


高ランクダンジョンでしか見られないとされる『ゲート』だった。


私がこれを直に見るのは、これが初めてだ。


「……あっはは、あっはははは!」


突然響いた笑い声に驚いて振り返ると、アルベルトが歓喜の表情で笑っていた。


「やったぞ。ついに僕たちが未開拓S級ダンジョンに挑戦する機会を得たんだ」


「この日をどれほど待ちわびたことかしら」


「ああ、待ったかいがあった」


「ふふ、まったく同感だね」


プリシラ、バーストン、ランティスも皆、目を輝かせていた。


だけど、私は。


「冗談じゃないわ……」


どれほどS級ハンターが強かろうと、こんな危険なダンジョンに入るなんて御免だ。


「待ってください。これは明らかに高ランクダンジョンです。私たちの目的は調査のはず……。なら、ここから先は国やハンターズギルドに……」


「うるさいわよ、E級没落令嬢」


言い終わるより早く、プリシラの拳が私の鳩尾をえぐった。


苦痛に膝をついた直後、破裂音と共に頬に衝撃が走る。


平手打ちだった。


「貴女はただ黙って、私たちについてくればいいの。大丈夫、おこぼれはちゃんとあげるから」


「で、でも、あまりにも危険すぎます」


必死に訴えるも、プリシラ、バーストン、ランティスにその声は届かない。


アルベルトに目を向けると、彼はため息を吐き、肩をすくめた。


「ミシェル、ここは平和的に多数決で決めよう。僕はS級ハンターとして、ダンジョンに入り、奥まで探索すべきだと思う。君たちは?」


「賛成」


「……反対です」


私以外の全員が手を挙げた。


「賛成4、反対1。調査は決定だ。ミシェル、君にも最後まで協力してもらう」


私は死の宣告を受けたように、がっくりとうなだれる。


「大丈夫。万が一に備えて、調査メンバー分の帰還石を用意してある。これさえあれば、いつでもダンジョンの外に脱出できる。僕だって命は惜しいからね」


そう言って、アルベルトは私に緑色の帰還石を手渡してくれた。


どんなダンジョンの奥地からでも転移して脱出できるという帰還石。


しかし、相当に高価な品だ。


それを差し出すということは、本当に万が一を想定してくれているのだろう。


「……わかりました。私も全力でお手伝いします」


「うん、わかってくれて嬉しいよ。じゃあ、出発だ!」


アルベルトが先頭に立って黒い渦の中へ足を踏み入れる。


それに続いて、バーストン、ランティスも消えていった。


「ほら、没落令嬢。あんたもさっさと行きなさいよ」


「は、はい……」


最悪、今このタイミングで逃げられるかも。


そう思ったが、プリシラに腕を掴まれ、そのまま私は否応なく黒い渦の中へと足を踏み入れた。






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